持ち株が上場維持基準の「改善期間」に入ったら 115社の1年後、上場廃止は1割、流通株式時価総額が15%超足りない会社は市場より−20

📌 この記事は公開情報(日本取引所グループの公表資料、各社の適時開示、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月14日時点のものです。
🔄 2026年11月3日に更新しました。 トップカルチャー(7640)の改善期間が10月31日に終わりました。判定に使う8〜10月の終値の平均は188.6円です。前回の判定(9.98億円)から逆算した流通株式数がそのままなら、流通株式時価総額は約10.5億円で、10億円に届く計算です。10億円に要る平均は約180円で、この記事の「いまの株価で届く」という試算どおりでした。ただし、10月30日の終値は162円まで下げています。東証の正式な判定は、基準日の株主の数え直しのあとに出ます。この数字は公開情報からの試算で、東証の判定ではありません。
持っている株の会社が「上場維持基準に適合していません」「改善期間に入りました」とお知らせを出したら、その株はどうなるのでしょうか。
この記事の予想は、改善期間に入っても多くの会社は上場廃止にならないが、株価は、流通株式時価総額が上場に必要な額に大きく足りない会社ほど1年で市場より下げる、というものです。見るべきは「上場廃止になるか」より「流通株式時価総額が、上場に必要な額にあと何%足りないか」です。
上場維持基準を満たせないと、原則1年の改善期間に入る
東京証券取引所(東証)の3つの市場には、上場を続けるための基準があります(たとえばスタンダード市場なら、流通株式時価総額10億円以上)。満たせないと原則1年の「改善期間」に入り、それでも満たせなければ、原則半年の整理銘柄を経て上場廃止になります。
| 基準 | プライム | スタンダード | グロース |
|---|---|---|---|
| 株主数 | 800人以上 | 400人以上 | 150人以上 |
| 流通株式数 | 2万単位以上 | 2,000単位以上 | 1,000単位以上 |
| 流通株式時価総額 | 100億円以上 | 10億円以上 | 5億円以上 |
| 流通株式比率 | 35%以上 | 25%以上 | 25%以上 |
| 売買 | 1日平均の売買代金0.2億円以上 | 月平均の売買高10単位以上 | 月平均の売買高10単位以上 |
| 時価総額 | — | — | 上場10年後から40億円以上 |
| 純資産 | 正であること | 正であること | 正であること |
いちばん多くの会社が満たせないのは、流通株式時価総額です。会社の時価総額のうち、市場で売り買いされやすい株の分だけを数えたもので、上場を続けるには、プライムで100億円、スタンダードで10億円、グロースで5億円以上が必要です。流通株式は、10%以上を持つ大株主、役員、会社自身が持つ株(自己株式)、国内の銀行・保険会社・事業会社が持つ株(純投資と認められるものを除く)などを差し引いて数えます。その数に、事業年度の末日までの3か月の終値の平均をかけたものが、流通株式時価総額です。売買高の基準だけは、改善期間が6か月です。
2022年に東証が市場を3つに分け直したとき、基準を満たせない会社も、満たすための計画を出せば上場を続けられました(経過措置)。この経過措置は、2025年3月以後の基準日から原則として終わっています(それより長い計画を前もって出していた一部の会社は、その期限まで猶予)。
経過措置が終わったあとの上場廃止の最初の波は、この秋に来ました。9月21日の植松商会(9914)に続き、10月1日には9社が上場廃止になっています。
監理銘柄は、上場廃止になるおそれがあることを投資家に知らせるための指定です。整理銘柄は、上場廃止が決まった株に付く指定で、その間も東証で売り買いできます。上場廃止になっても、株主であることや会社の中身が、それだけで消えるわけではありません。変わるのは、取引所で売り買いできなくなることです。
基準を満たせない状態になった会社は、3か月以内に「上場維持基準の適合に向けた計画」をお知らせします。その表に、基準日の流通株式時価総額などの数字が載っています。
この記事では、その数字が上場に必要な額にどれだけ足りなかったかを出しました。たとえばスタンダードの会社で8.5億円なら、必要な10億円に1.5億円、15%足りません。
115社のうち上場廃止は1割、株価を分けたのは流通株式時価総額の不足
東証が2025年8月14日に公表した改善期間の一覧の115社を追うと、上場維持基準で上場廃止になったのは12社でした。ただ株価は、上場に必要な流通株式時価総額に15%を超えて足りなかった会社(スタンダードなら8.5億円未満)が、1年で市場より大きく下げていました。
半分の会社は、改善期間のうちに基準を満たしています。プライムとグロースの会社には、スタンダードへ移る道があり、実際に市場を移る会社も相次ぎました。
スタンダードの会社が移れる、基準の低い市場は事実上ありません(グロース市場は高い成長性が条件)。115社のうちスタンダードの会社で市場を移った会社は1社もなく、満たせなかった会社は、上場廃止になるか、ほかの会社に買われる(買収)かでした。上場廃止になった会社の大半も、スタンダードの会社です。
買収には、株を買い集める公開買付け(TOB)や、経営陣による買収(MBO)、別の会社の株と交換する株式交換などがあります。親会社や大株主、ほかの会社が丸ごと買い取り、上場をやめる形です。行き先の分け方は、株主にとっての損得の分け方とは別のものです。
「15%」は、制度で決まった線ではなく、この記事で会社を2つに分けるために置いた線です(スタンダードなら8.5億円)。足りないのが15%以内だった会社で、上場廃止になった会社はありませんでした。15%を超えて足りなかった会社では、基準を満たした会社は4割ほどで、残りは市場を移るか、買われるか、上場廃止になっています。
株価は、一覧が出た翌日(2025年8月15日)から250営業日(約1年)で比べました。ここでの「市場」は、TOPIXなどの指数ではなく、同じ市場(プライム・スタンダード・グロース)の全銘柄の値動きを順に並べた真ん中の値(中央値)です。たとえば、その株が15%下がり、市場が5%下がったなら、市場との差は−10ポイントです。
前から下げていた株が続けて下げただけ、とも考えられます。そこで、一覧の前の1年の値動きが近い株と比べました。近い株は、その後の1年で市場とほぼ同じでした。下げたのは、15%を超えて足りなかった改善期間の会社のほうです。ただし、業績や会社の大きさ、親会社の有無などはそろえていません。
株価が取れなかったのは、2026年10月までに上場をやめた17社です。買収は、ふつう直前の株価より高い値段で行われるので、入れれば15%を超えて足りない組の数字は良い方へ動く可能性があります。業績や報道など、ほかの材料を差し引いた数字でもありません。
関連企業と日本の接点
上場維持基準で上場廃止になった・決まった会社の半分は、名古屋・福岡・札幌の証券取引所で売買が続いています。ほかの取引所に上場していない会社の株は、売りたい人と買いたい人が直接やりとりする「相対取引」で譲るしかなくなります。
名古屋証券取引所(名証)、福岡証券取引所(福証)、札幌証券取引所(札証)は、東証とは別の取引所です。東証と両方に上場していれば、東証で上場廃止になっても、その取引所の上場が続く限り売買は続き、証券コードも変わりません。名証のメイン市場は、流通株式時価総額の基準を設けていません。
ただし、一部の証券会社では、名証などでの売買に所定の手続きが要る場合があると、光・彩(7878)がお知らせで注意を促しています。
ほかの取引所に上場していないクボテック(7709)と桜井製作所(7255)は、上場廃止後の売り買いは相対取引だけになり、相手は自分で探し、名義を書き換えるには実印と印鑑証明書が要るとお知らせしています。ビーマップ(4316)は、東証での最後の日の終値が42円でした。
テクノマセマティカル(3787)は、上場廃止が決まったあと、東証スタンダードに上場するアバールデータ(6918)が株式交換で完全子会社にすると発表しました。11月の臨時株主総会で承認されれば、株主はテクノマセマティカルの株の代わりに、決められた比率でアバールデータの株を受け取る予定です。
いまも、スタンダード市場で流通株式時価総額が10億円に届いていない会社があります。流通株式時価総額は、改善期間の最後の3か月の平均株価で決まります。そこで、各社が開示した数字から「平均株価がいくら以上なら10億円に届くか」を逆算し、いまの株価と比べました。いまの株価のままで届くか、届かないなら株価が何%上がる必要があるかを並べています。公開情報からの試算で、東証の判定とは別のものです。
流通株式数が増えれば、必要な株価は下がります。大株主が持ち株を売り出したり、取引時間の外で多くの人に分けて売る立会外分売を行ったりすると、流通株式が増えます。目安は、基準日から流通株式数が変わらないとして出したものです。
光・彩は、改善期間の末日を待たずに、自分から東証の上場廃止を申請し、名証だけに移ると発表しました。東証での上場廃止は12月1日の予定で、株主に特別配当を出すとしています。日本色材工業研究所(4920)も、名証のメイン市場に上場しています。
プライム市場で改善期間にいる会社には、スタンダードへ移る道があります。大幸薬品(4574)は、8月にスタンダード市場への移行を申請すると発表しています。上場のルールそのものを決めているのは、東証を持つ日本取引所グループ(8697)です。
次の山場は、10月末と12月末の改善期間の末日
改善期間の末日は、会社の決算期で決まります。12月決算の会社は12月31日が末日で、東証の一覧(10月7日公表)では17社がこの日に末日を迎えます。
持っている株が改善期間に入ったら、自分で確かめることは4つです。
- どの基準を満たしていないか。流通株式時価総額なら、計画のお知らせの表の金額が、上場に必要な額に何%足りないか(スタンダードなら8.5億円以上か未満か)
- 改善期間の末日はいつか。末日までの3か月の株価の平均が効く。その後の進み具合のお知らせも見る
- 名証・福証・札証にも上場しているか(上場していれば、東証で上場廃止になっても売買は続く)
- 親会社や大株主が多くの株を持っていないか(買収で上場をやめる道がある)
上場廃止へのもう1つの道すじ(内部管理に問題がある会社に付く特別注意銘柄)は、ニデックの記事で取り上げています。買収(TOB)の値段とその前の株価の動きは、小林製薬の記事にまとめています。
予想:流通株式時価総額が15%超足りない会社は、1年で市場より下げる
改善期間に入った会社のうち、流通株式時価総額が上場に必要な額に15%を超えて足りない会社(スタンダードなら8.5億円未満)は、1年で市場より下げる見込みが高いと見ています。足りないのが15%以内の会社は、多くが基準を満たし、株価も市場並みと見ています。
予想の理由は3つです。
- 前の1年の値動きが近い株は下げなかった:前から下げていた株が続けて下げた、というだけでは説明しにくい動きです。
- 15%を超えて足りない組は、プライムでもスタンダードでも下げた:スタンダードのほうが下げは大きめでした。
- 満たすには株価を大きく上げる必要がある:15%を超えて足りないなら、流通株式数が変わらない限り、末日までの3か月の平均株価を2割近く以上、上げなければなりません。
ただし、株価が取れた「足りないのが15%以内」の組は13社と少なく、もう一方の組との差がこれからも続くとは言い切れません。流通株式数を増やす売出しや、買収の発表があれば、株価は大きく動きます。
で、儲かるのか
改善期間に入っても、上場廃止は1割です。株価を分けるのは「流通株式時価総額があと何%足りないか」です
上場に必要な流通株式時価総額(スタンダードなら10億円)に15%を超えて足りない会社は、前例で1年に市場より約20ポイント下げました(中央値)。足りないのが15%以内の会社は、前例では市場並みでした。
流通株式時価総額が15%超不足(1年)
↓市場より下げる
多くは基準を満たす
→市場並み親会社や大株主が買い取る
↑買付けの値段へ
情報源
- 改善期間の一覧:日本取引所グループ「改善期間該当銘柄一覧」2025年8月14日公表分(Internet Archive に保存された版)と2026年10月7日公表分
- 行き先:日本取引所グループ「上場廃止銘柄一覧」「監理銘柄・整理銘柄一覧」「監理・整理銘柄指定履歴」(2026年10月14日に確認)、「東証上場銘柄一覧」(2026年9月30日)、各社の適時開示(kabupro の毎日の開示の一覧から、見出しに「上場維持基準」「改善期間」「流通株式」を含む約2,200件の本文を読んだ)。2026年より前に上場をやめた会社は、開示の本文で理由を確かめた
- 何%足りないか:各社の「上場維持基準の適合に向けた計画」などの表にある、基準日の流通株式時価総額を、上場に必要な額(プライム100億円・スタンダード10億円・グロース5億円)と比べた。2025年8月14日までの開示で数字が読めた会社だけ
- 株価:Yahoo Financeの日次終値。上場をやめた会社は、東証での最後の日までの値動き(250営業日より短い)。株価が取れない17社(買収11・上場廃止6)は除いた。足りないのが15%以内で株価が取れたのは14社中13社、15%を超えて足りない組は39社中34社。比べる相手が5銘柄に満たない会社などは、前の1年が近い株との比べから外した(15%を超えて足りない組は32社)。市場=同じ市場の全銘柄の同じ期間の値動きの中央値。前の1年が近い株=同じ市場で、一覧の前の250営業日の市場との差が±5ポイント以内の株(5銘柄以上)の中央値
- あと何%(図):基準日までの3か月の終値の平均と、開示の流通株式時価総額から流通株式数を逆算し、10億円に届く平均株価を出して、10月9〜13日の終値と比べた
- 制度:日本取引所グループ「上場維持基準」「上場維持基準に関する経過措置の終了」「経過措置適用会社の状況」(2026年4月7日)、名古屋証券取引所「上場維持基準(メイン市場)」
- 各社の開示:クボテック・桜井製作所「上場廃止後の当社株式の取扱い」、ビーマップ「当社株式の上場廃止及び株式の取扱い」、テクノマセマティカル「アバールデータとの株式交換契約の締結」、光・彩「東京証券取引所における当社株式の上場廃止申請」、日本色材工業研究所「名古屋証券取引所メイン市場への上場承認」、大幸薬品「東京証券取引所スタンダード市場への市場区分変更申請」
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