調査

ニデックは上場廃止になるのか 監査意見は10月末も出ず、東証の審査の結果は年末〜1月

2026.10.09 2026.11.03 更新
ニデックは上場廃止になるのか 監査意見は10月末も出ず、東証の審査の結果は年末〜1月

📌 この記事は公開情報(日本取引所グループの特別注意銘柄一覧と規則、ニデック・PwC Japanの開示、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月8日時点のものです。

🔄 2026年11月3日に更新しました。 10月末までに、監査法人の意見は出ませんでした。ニデックは10月28日までに監査意見つきの訂正報告書を出すことを目指していましたが、監査法人が10月19日に経営者確認書の署名候補者252名の追加の調べを求めました。会社は132名について新たに確かめる作業を11月中に終える予定としていますが、監査が終わる時期は決まっていないと書いています。10月30日には内部管理体制確認書を東証に出し、審査が始まりました。この記事の「外れる条件①」が起きたことになります。一方、外れる条件③のACCESSは、10月23日に指定継続でした。理由は「仕組みは整っていると認めるが、運用されているとは認められない」で、この記事の本命と同じ中身です。ACCESSは確認書を出してから約2か月で結果が出ており、ニデックの結果は12月下旬から1月の見込みです。ニデックの株価は10月8日の2,140円から11月2日の1,762円まで17.7%下げました(TOPIX連動ETFは3.8%下げ)。本命の「指定継続」は変えませんが、監査意見が出ないまま審査に入るため、見込みは下がったと見ています。

ニデックは上場廃止になるのでしょうか。

この記事の予想は、ニデックは上場を保ち、年末から1月に出る東証の審査の結果は「指定継続」が本命、というものです。株価を大きく動かすのは、その結果の日より前、10月末に監査法人が意見を出せるかどうかだと見ています。

ニデック株が大きく下げたのは、不正と監査の問題が出た日

この1年余りでニデック株が大きく下げた日を並べると、どれも不正・監査・経営の問題が表に出た日でした。

ニデックは、パソコンや車、家電に使うモーターの大手です。2025年の夏から海外の子会社で問題が次々に見つかり、9月には外部の弁護士などでつくる第三者委員会が調べ始めました。調査では、売上を早く計上したり、損失を先に送ったりする不適切な会計が、国内外の多くの拠点で見つかりました。

会社の決算には、外部の監査法人が「正しく作られているか」を確かめて、意見を付けます。ニデックの監査法人であるPwC Japan有限責任監査法人は、9月30日に出た2026年3月期の決算に、前の年に続いて意見を付けませんでした。これを「意見不表明」といいます。正しいとも正しくないとも言えない、という意味で、投資家が決算の数字を信じてよいかの土台が欠けた状態です。

指定のあと、株価はいったん持ち直し、2026年6月には指定の前の水準を上回っていました。下げ直したのは、9月末に2回目の意見不表明が近づいてからです。

監査法人が意見を付けなかった理由は、大きく2つです。1つは、不正な会計に関わった役員や社員の一部が、まだ決算をつくる仕事で責任ある立場にいること。もう1つは、工場や買収した会社の価値を切り下げた損失(減損)の一部について、確かめる材料が足りないことです。

10月1日の会見で、新しい社長の戒田理夫氏は、監査意見をもらうための残りの課題を10月中に片付けると述べました。同席したPwC Japanの幹部も、月末までに意見を出せるよう話し合いを続ける考えを示しています(時事通信)。

10月7日には、発行済みの株式の約8%を持つ投資ファンドのオアシス・マネジメントが、非公開化(株式を買い集めて上場をやめること)の検討を始めるよう、会社に求めました。オアシスは、非公開化が報じられた小林製薬でも大株主になっている、香港の投資ファンドです。

大企業は審査で上場廃止になっていない。ただしルールは厳しくなった

特別注意銘柄に指定された大企業は、これまで審査で上場廃止になったことがありません。ただ、それは古いルールのころの話です。2024年からの新しいルールで結果が出た会社は、多くが上場廃止になりました。

特別注意銘柄とは、東京証券取引所(東証)が「会社を管理する仕組みを直す必要が強い」と判断した会社に付ける印です。ニデックは2025年10月28日に指定されました。指定にあわせて、日経平均株価を計算する225社からも外されました(ロイター)。

指定から1年がたつと、会社は「内部管理体制確認書」(仕組みをどう直したかを書いた書類)を東証に出し、東証が審査します。結果は次の3つに分かれます。

前のルールでは、1回目の審査で問題が残っても指定が続き、確認書を出し直す機会がありました。2024年1月の見直しで、東証は「指定から1年後の審査までに仕組みを整えること」をはっきり求めるようになりました。ニデックは新しいルールで審査を受けます。

古いルールのころの大企業は、多くが指定を外され、審査で上場廃止になった会社はありません。新しいルールで結果が出たのは、どれもスタンダード市場・グロース市場の小さな会社で、多くが上場廃止になりました。プライム市場の会社が新しいルールで審査を受けるのは、ACCESSとニデックが最初です。

会社(指定の年)結果指定から結果まで
IHI(2008年)指定解除約15か月
真柄建設(2008年)民事再生の申し立てで上場廃止約4か月
フタバ産業(2009年)指定解除約15か月
アイロムグループ(2010年)指定解除約14か月
メルシャン(2010年)キリンホールディングスによるTOBで上場廃止約2か月
オリンパス(2012年)指定解除約17か月
リソー教育(2014年)指定解除(1回目は指定継続)約20か月
東芝(2015年)指定解除(1回目は指定継続)約25か月
ディー・エル・イー(2018年)指定解除約14か月
ナイス(2019年)指定解除約15か月
ユー・エム・シー・エレクトロニクス(2019年)指定解除約16か月

東芝とリソー教育は、1回目の審査で指定継続になり、もう一度審査を受けて指定を外されました。

審査の結果の日、指定解除なら上がり、指定継続ならほとんど動かない

審査の結果が出た日の株価を前例で数えると、指定解除の発表では多くの会社が市場より上げ、指定継続の発表ではほとんど動きませんでした。

下の図は、結果の発表をはさむ2日間に、株価が日本の株全体(TOPIX連動ETF)と比べてどれだけ動いたかを、1件ずつ棒にしたものです。

指定解除の発表では、市場より上げた会社が大半でした。大企業だけに絞っても上げた会社のほうが多く、真ん中の値は+3.3ポイントです。

指定継続の発表では、上げた会社と下げた会社がほぼ半々で、真ん中の値はほぼゼロでした。

上場廃止に向かう発表の日は、株価の記録が残っている前例が少なく、数えられません。記録が残っているAbalanceは、上場廃止の手前の監理銘柄に指定された日をはさむ2日間に、市場より約20ポイント下げました。

関連企業と日本の接点

いま特別注意銘柄に指定されているプライム市場の会社は、ニデックを入れて4社です。4社の株価は、そろって市場に負けています。

会社(市場:コード)指定日・理由株価(10月8日)
ニデック(東証プライム:6594)2025年10月28日。決算に監査法人が意見を付けなかった2,140円
ACCESS(東証プライム:4813)2025年8月27日。海外子会社の売上の過大計上で、過去の決算を訂正した362円
エア・ウォーター(東証プライム:4088)2026年5月1日。不適切な会計処理の調査で、業務を正しく進める体制の不備が分かった2,834円
アドバンスクリエイト(東証プライム:8798)2026年9月29日。広告の取引やソフトウェアの計上で、不適切な会計処理があった69円

ACCESSは8月27日に確認書を東証に出しており、審査の結果はニデックより先に出る見込みです。新しいルールでプライム市場の会社が受ける、最初の審査の結果になります。アドバンスクリエイトは、プライム市場の上場維持の基準を満たせず、スタンダード市場への変更を申請中です。株価の差を、特別注意銘柄の指定だけで説明することはできません。

次の山場は年末〜1月の東証の審査の結果

10月末までに監査法人の意見は出ず、ニデックは10月30日に確認書を東証に出しました。次の山場は、年末から1月に出る東証の審査の結果です。ニデック株が大きく動いてきたのは、こうした不正と監査の知らせの日でした。

10月中不正な会計に関わった人を、決算をつくる仕事から外す(会社の計画)。10月19日に監査法人が252名の追加の調べを求め、一部は終わらなかった
10月末監査法人の意見は出なかった。10月30日に内部管理体制確認書を東証に出した(指定から1年)
10月23日ACCESSの審査の結果は指定継続(8月27日に確認書を提出)。新しいルールで、プライム市場の会社が受けた最初の審査
11月中ニデックが、132名を確かめる追加の作業を終える予定(監査が終わる時期は未定)
12月末までニデックの臨時株主総会(9月30日の株主が対象。2026年3月期の決算の報告など)
2027年3月末のあと指定継続なら、次の期末のあとの審査で、仕組みが実際に動いているかを確かめる(再審査の期限は最長で2028年6月末・共同通信)

予想:ニデックは上場を保ち、審査は「指定継続」が本命

年末から1月に出る審査の結果は、「指定継続」が本命と見ています。上場は続き、結果の日の株価は、前例どおりならほとんど動きません。

🔄 11月3日:10月末までに監査意見は出ませんでした(外れる条件①)。ACCESSは10月23日に指定継続で、新しいルールでもプライム市場の会社は上場廃止になっていません。

予想の理由は3つです。

  • 仕組みは10月に整う見込み:監査法人が意見を付けない理由は、不正に関わった人がまだ決算の担当にいることです。会社はその入れ替えを10月中に終える計画で、監査法人も月末までの意見に向けて話し合っています。
  • 実際に動いているかの確認には時間がかかる:新しいルールでは、仕組みが整ったかを1年後の審査で、実際に動いているかを次の期末のあとの審査で確かめます。人を入れ替えてから審査の結果までが2〜3か月では、動いていると認めるには短いと見ています。
  • 前例の大企業は、審査で上場廃止になっていない:いちばん近い前例の東芝も、1回目の審査は指定継続でした。その後、決算の発表が遅れて上場廃止の手前の監理銘柄にも指定されましたが、最後は指定を外されています。

年内にニデック株が大きく動くなら、審査の結果の日より、10月末の監査意見の日だと見ています。

で、儲かるのか

この記事の答え

ニデックは上場を保つ見込みです。審査の結果は「指定継続」が本命です

10月末の監査意見は出ず、審査は監査意見のないまま進みます。それでも、同じ新しいルールで審査されたACCESSは10月23日に指定継続でした。審査の結果の日は、指定継続ならほとんど動きません。

いちばんありそう

仕組みは整い、動いているかの確認は持ち越しなら

→ニデック株は
ほぼ動かない
こうなれば上がる

監査法人が意見を出し、指定解除なら

↑ニデック株は
上がる
こうなれば下がる

意見が出ず、仕組みも整ったと認められなければ

↓ニデック株は
大きく下がる

情報源

  • 日本取引所グループ:特別注意銘柄一覧(現在の指定状況と2024年以降の指定)。特別注意銘柄の指定について(ニデック)(2025年10月27日)。特別注意銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:ACCESS(2025年8月26日)、同:エア・ウォーター(2026年4月30日)
  • 東京証券取引所:特設注意市場銘柄制度の見直し等に係る有価証券上場規程等の一部改正について(2023年12月26日、2024年1月15日から施行)、上場廃止基準の概要
  • ニデック:IRニュース(2026年9月30日「2026年3月期有価証券報告書に係る監査報告書の意見不表明…に関するお知らせ」、9月29日「代表取締役社長執行役員の辞任および新社長執行役員等の選定に関するお知らせ」、9月15日「臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ」)
  • ACCESS:「内部管理体制の整備及び運用状況等に関するお知らせ」(2026年8月27日、同日に内部管理体制確認書を提出)。アドバンスクリエイト:「当社株式の監理銘柄(審査中)指定に関するお知らせ」(2026年9月30日)
  • 報道:時事通信(2026年10月1日、社長の会見とPwC Japanの同席)、共同通信(10月7日、審査の時期と再審査の期限)、ロイター(10月8日、オアシス・マネジメントの要請と保有比率7.97%)
  • 前例:Wikipedia「特別注意銘柄に指定された企業一覧」と日本取引所グループの一覧から、指定日・指定継続の決定日・指定解除の日を集め、オリンパス・東芝などは各社の開示で確かめた(東芝の1回目の指定継続は2016年12月19日の通知、監理銘柄の指定は2017年3月15日)。大企業=指定のとき東証1部の会社
  • 数え方:結果の発表の日の前の取引日の終値から、発表の次の取引日の終値までの騰落率から、TOPIX連動ETF(1308)の騰落率を引いた差(ポイント)。指定解除は、効力の日の前の取引日を発表の日とした(東証は取引のあとに公表することが多い)。Yahoo Financeに株価が残っている会社だけ(指定解除18件・指定継続7件)。株価は日次終値(配当を含まない)
免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
← ホームに戻る