調査

小林製薬のTOB価格は今の株価を上回るのか 非公開化の報道で先に動いた19社の前例

2026.10.08
小林製薬のTOB価格は今の株価を上回るのか 非公開化の報道で先に動いた19社の前例

📌 この記事は公開情報(各社の適時開示、大量保有報告、市場データ、報道)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月7日時点のものです。

小林製薬の株は、TOBが決まれば上がるのでしょうか、下がるのでしょうか。

前例をそのまま当てはめると、TOBが行われれば今の株価より上に出る見込みのほうが高い、というのがこの記事の答えです。ただし、株価が先に上がるほど、その上乗せは前例では残りませんでした。

前例の上乗せを当てはめると、11社中7社で今の株価より上

TOB価格は、報道の前の株価に上乗せを足して決まってきました。前例11社の上乗せの真ん中は+40.2%で、小林製薬に当てはめると約8,250円、10月7日の終値7,153円より約15%上です。

TOB(株式公開買付け)は、買い手が価格と期間を決めて、市場の外で株をまとめて買い集める方法です。非公開化では、買い手がTOBで株を集めたあと、残った株も買い取って上場をやめます。

小林製薬は2026年9月24日、投資ファンドの日本産業推進機構(NSSK)と英CVCキャピタル・パートナーズによる非公開化の提案が報じられました。報道の前の終値は5,885円です。翌25日の朝、会社は「法的拘束力のない初期的な共同提案を受け取ったのは事実だが、決定した事実はない」と開示し、株価はストップ高の6,885円をつけました。10月7日の終値7,153円は、報道の前より21.5%高い水準です。

前例の会社で、最初のTOB価格が報道の前の株価より21.5%以上高かったのは、11社中7社でした。この7社と同じ上乗せなら、小林製薬のTOB価格は今の株価を上回ります。

残りの4社(イーソル、豆蔵、牧野フライス製作所、電通総研)の上乗せを当てはめると、小林製薬のTOB価格は約6,340〜7,040円になり、今の株価を下回ります。

上乗せの基準が報道の前の株価なのは、各社の開示に書かれています。ホギメディカルは「憶測報道の影響を受けていないと考えられる2025年7月25日」の終値を基準にし、電通総研・テクノプロ・日本調剤・カカクコム・イーソル・豆蔵も、報道の前の終値に対する上乗せを示しています。豊田自動織機では、買い手が報道の前の終値を基準に価格を提案し、会社側は公表日に近い時点を基準にするよう求めていました。

前例は、2025年1月から2026年10月7日までの毎日の適時開示から集めました。見出しに「報道」を含む開示は183件ありました。そのうち本文に非公開化・公開買付・買収の語があった67件を読み分け、買われる側の会社が報道について開示し、正式な発表まで待つ期間があった会社を残しました。報道の当日か次の営業日にTOBが発表された9件は、待つ期間がないので数えていません。すでに始まっていた買収合戦の途中の報道(芝浦電子、ソフト99コーポレーション)と、銀行どうしの経営統合の報道(千葉興業銀行)も外しました。豊田自動織機は報道の時点で会社の開示がありませんが、同じ型なので加えました。牧野フライス製作所は、2025年のMBKパートナーズの提案と2026年の日本産業推進機構の提案を別に数えています。

株価が先に上がった会社では、TOB価格のほうが安かった

上乗せの基準は報道の前の株価なので、報道のあとに株価が上がっても、TOB価格はその分だけは上がりません。TOBの公表の直前の株価と比べると、11社中7社でTOB価格のほうが安くなっていました。

豊田自動織機は、報道の前に13,225円だった株価が、TOBの公表の前日には18,260円まで上がっていました。最初のTOB価格は16,300円で、公表の直前の株価より10.73%安い価格でした。

小林製薬に置き換えると、株価が前例の真ん中の約8,250円に近づくほど、今より上に出る余地は小さくなります。

会社(コード)報道その後最初のTOB価格報道の前の株価と比べて公表直前の株価と比べて
日本調剤(3341)2025年4月14日TOB成立3,927円+140.0%+11.7%
豊田自動織機(6201)2025年4月25日TOB成立(2回引き上げ)16,300円+23.3%−10.7%
テクノプロ(6028)2025年5月15日TOB成立4,870円+43.7%—
牧野フライス(MBK)(6135)2025年5月27日TOB公表後、国の中止勧告で実施されず(2026/4/30)2,350円(分割前11,751円)+14.4%+4.5%
太陽HD(4626)2025年5月28日TOB公表(開始前)4,750円+81.6%−5.1%
ホギメディカル(3593)2025年7月25日TOB成立6,700円+69.2%−0.7%
養命酒製造(2540)2025年8月6日TOB成立4,050円—−10.8%
豆蔵(202A)2025年11月26日TOB成立(初報は会社が否定)3,551円+18.4%−11.7%
ローム(6963)2026年3月6日デンソーが提案を取り下げ(2026/4/28)———
カカクコム(2371)2026年4月23日対抗提案で引き上げ(継続中)3,000円+41.4%+8.2%
電通総研(4812)2026年7月2日TOB公表(開始前)2,300円+7.8%−16.0%
イーソル(4420)2026年8月28日TOB中820円+19.7%−12.3%
かどや製油(2612)2026年9月1日引き上げ予定(対抗の動き)2,514円+40.2%+5.5%
スクウェア・エニックス(9684)2026年9月1日会社が検討を否定———

「—」は、TOBが行われなかったか、株価が確かめられないもの。上場廃止の会社の報道直後・公表直前の株価は、当時の報道と各社の開示による。牧野フライス製作所は2026年9月の株式分割(1株を5株)に合わせて割った値で比べた。

TOBが行われなかった会社は19社中3社

報道で先に表に出た19社のうち、3社ではTOBが行われませんでした。小林製薬が受け取ったのは法的拘束力のない初期的な提案で、TOBの価格も時期も決まっていません。

ロームは、デンソーが株式取得の提案を取り下げました。スクウェア・エニックスは、会社が非公開化の検討を否定しました。スクウェア・エニックスの10月7日の終値は2,790.5円で、報道の前の2,955円も下回っています。牧野フライス製作所は、2025年6月に公表されたTOBが、国(財務大臣と経済産業大臣)の中止勧告を受けて2026年4月に取りやめになりました。

小林製薬には、香港の投資ファンドのオアシス・マネジメントが14.41%を持っています(2026年9月2日時点の変更報告書)。物言う株主が大きく持つ会社では、TOB価格が引き上げられた例があります。豊田自動織機は、米エリオットが応募しないと表明したあと、16,300円から18,800円、20,600円と2回引き上げられました。

関連企業と日本の接点

提案した2社は、どちらも日本の取引所には上場していません。報道で非公開化や買収が表に出て、まだTOBが決まっていない会社は、小林製薬のほかに4社あります。

会社(市場:コード)この件での立場株価(10月7日)
小林製薬(東証プライム:4967)非公開化の初期的な共同提案を受け取った会社7,153円
日本産業推進機構(NSSK)提案した投資ファンド。上場していない—
CVCキャピタル・パートナーズ(ユーロネクスト・アムステルダム)提案した英国系の投資ファンド。日本の取引所には上場していない—
オアシス・マネジメント小林製薬の株の14.41%を持つ投資ファンド。上場していない—
タムロン(東証プライム:7740)ソニーから、ソニーグループの完全子会社とする法的拘束力のない提案を受け取った(2026年7月)1,550円
壱番屋(東証プライム:7630)親会社のハウス食品グループ本社による株式の売却と非公開化が報じられた(2026年8月)1,026円
PHCホールディングス(東証プライム:6523)東邦ホールディングスから株式取得の初期的な提案を受け取った(2026年9月)1,595円
牧野フライス製作所(東証プライム:6135)日本産業推進機構から初期的な買収提案を受け取った(2026年6月の報道)3,385円

報道の前と比べると、10月7日は5社とも上にいます。報道の直後と比べると、小林製薬・タムロン・牧野フライス製作所は上、壱番屋・PHCホールディングスは下です。株価の差を、提案の中身だけで説明することはできません。

次の節目は11月10日の決算と、TOBが公表されるかどうか

小林製薬の次の決算は11月10日です。前例では、報道からTOBの公表までの日数の真ん中は約58日でした。

11月10日小林製薬の1〜9月期の決算
11月下旬報道から約58日(前例の真ん中)。ただし前例は4日から307日まで幅がある

で、儲かるのか

この記事の答え

前例の物差しでは、TOBが行われれば、小林製薬のTOB価格は今の株価より上に出る見込みのほうが高い。前例11社中7社の上乗せが今の位置より大きく、真ん中の値を当てはめると約8,250円、今より約15%上になる。ただし、上乗せの基準は報道の前の株価で、株価が先に上がるほど、その余地は前例では残らなかった。

上に出る側

11社中7社。真ん中の値を当てはめると約8,250円。

下に出る側

11社中4社。当てはめると約6,340〜7,040円。

TOBが行われない

19社中3社。提案の取り下げ、会社の否定、国の中止勧告。

情報源

  • 小林製薬:当社に関する一部報道について(2026年9月25日)
  • オアシス・マネジメントの変更報告書(2026年9月9日受付・義務発生日9月2日・14.41%):株探の大量保有報告の記事による
  • 前例の集め方:kabupro(決算プロ)の日ごとの適時開示一覧(2025年1月1日〜2026年10月7日)から、見出しに「報道」を含む開示183件を集め、本文を読んで分けた
  • 各社のTOB価格・報道前の終値・公表前の終値:各社のTOBに関する開示(豊田自動織機2025年6月3日、日本調剤2025年7月31日、テクノプロ・ホールディングス2025年8月6日、ホギメディカル2025年12月17日、太陽ホールディングス2026年3月31日、養命酒製造2026年2月25日、豆蔵2026年1月23日、カカクコム2026年5月12日、電通総研2026年8月28日、イーソル2026年9月1日、かどや製油2026年9月14日)。牧野フライス製作所の11,751円は2025年6月3日の公表(報道)
  • 引き上げ・取り下げ:豊田自動織機(2026年1月14日・3月2日)、デンソー「ローム株式会社に対する株式取得に関する提案の取下げについて」(2026年4月28日)、牧野フライス製作所「MMホールディングス株式会社による当社株式に対する公開買付けの不実施に関するお知らせ」(2026年4月30日)、カカクコムの3,681円は報道(2026年10月1日)
  • 株価:Yahoo Financeの日次終値(配当を含まない)。上場廃止の会社の報道直後・公表直前の株価は、当時の報道(日本経済新聞、株探など)による
免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

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フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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