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監査法人が辞任した会社の株はどうなるのか 3社に1社が1年以内に監理銘柄・不適切会計などの重い開示

2026.10.14
監査法人が辞任した会社の株はどうなるのか 3社に1社が1年以内に監理銘柄・不適切会計などの重い開示

📌 この記事は公開情報(各社の適時開示、市場データ、東京商工リサーチの集計)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月14日時点のものです。

持っている株の会社が「会計監査人の異動に関するお知らせ」を出したら、気にするべきでしょうか。

この記事の答えは、お知らせの本文が監査法人からの「辞任・辞退」なら、気にするべきだというものです。任期満了で会社が監査法人を替える場合とは、その後がはっきり違いました。

監査法人の異動は2種類。本文で見分ける

監査法人(会計監査人)が替わるお知らせには、会社が任期満了で替える場合と、監査法人のほうから降りる場合の2つがあります。見出しはどちらも同じなので、本文で見分けます。

任期満了で交代(会社から)会社が新しい監査法人を選び、株主総会で決める。本文には「任期満了」「監査報酬」「新たな視点」などと書かれる
辞任・辞退(監査法人から)監査法人から「降りたい」と通知が来る。会社は急いで次の監査法人を探す。本文には「辞任」「契約の更新を辞退」「退任の通知」と書かれる
どちらも見出しは「会計監査人の異動に関するお知らせ」が多い。本文の「異動に至った理由及び経緯」を読む

東京商工リサーチが「会計監査人の辞任等」に分類した上場会社は、2025年に39社で、集計を始めてから最も多くなりました。

理由として多いのは、監査法人の人手不足と、登録制度に関わる辞任です。上場会社を監査する監査法人は、法律で決められた名簿に登録していなければなりません(2023年4月に始まった上場会社等監査人登録制度)。登録していない、または登録を断られた監査法人は、上場会社の監査を続けられません。

「辞任」という言葉を使わず、「契約の更新を辞退する」「退任する旨の通知を受けた」と書く会社もあります。本文に監査法人の側から申し出た経緯が書かれていれば、この記事では「監査法人から降りた」と数えました。

監査法人から降りた会社は、3社に1社が重い開示を出した

2022年からのお知らせを本文で読み分けると、監査法人から降りた会社は、3社に1社が1年以内に重い開示を出していました。会社が交代させた場合は、ずっと少なめでした。

ここでの重い開示は、取引所による監理銘柄・特別注意銘柄・整理銘柄の指定や改善報告書、不適切な会計を調べる調査委員会、継続企業の前提に関する注記、決算発表の延期、取引所の決定による上場廃止です。監理銘柄は上場廃止になるかを審査している銘柄、特別注意銘柄は内部の管理体制の改善を求められている銘柄、整理銘柄は上場廃止が決まった銘柄です。継続企業の前提に関する注記は、会社が続いていくことに大きな不確かさがあるという注記で、倒産が決まったという意味ではありません。

どれも開示の見出しの言葉で拾ったもので、深刻さの順番や、不正があったかどうかを判定したものではありません。TOBや合併で上場をやめた会社は数えていません。また、監査法人の辞任が原因で重い開示が出た、という意味でもありません。辞任のお知らせが、会社の問題が表に出る前後に出やすい、ということです。

もともと問題を抱えた会社が多いのでは、とも考えられます。そこで、お知らせの前の1年に重い開示がなかった会社だけでも比べました。

前もって重い開示がなかった会社でも、監査法人から降りた会社のほうが多く出ていました。年ごとに見ても、4年とも同じ向きです。

お知らせの本文に書かれた理由でも、差が出ました。

会計処理をめぐる意見の違いや、内部統制(会社の中の不正やミスを防ぐ仕組み)の問題を書いた会社は、7割が1年以内に重い開示を出していました。ただし、この組は13件と少なめです。「人手不足」「登録制度」「監査報酬」だけが書かれた会社でも、会社が交代させた場合より多く出ています。理由の書き方だけで安心はできません。

関連企業と日本の接点

株価の中央値は、お知らせの前から市場より下げていました。お知らせのあとも市場より下げたのは、監査法人から降りた会社の組だけです。

ここでの「市場」は、同じ市場(プライム・スタンダード・グロース)の全銘柄の値動きを順に並べた真ん中の値(中央値)です。たとえば、その株が8%下がり、市場が3%下がったなら、市場との差は−5ポイントです。お知らせの前に下げていたのは、会社が交代させた場合も同じでした。違いが出たのは、お知らせのあとです。業績や報道など、ほかの材料を差し引いた数字ではありません。

市場別では、スタンダード市場の会社の下げが大きめでした。業種で分けると、メーカーや小売・卸売は下げた一方、情報・通信やサービスは半々で、そろいませんでした。株価よりも、重い開示が出る割合のほうが、はっきりした違いです。

今年(2026年)は、次の会社が監査法人からの辞任などを開示しています。

6社の辞任の理由は会社ごとに違い、どれも会社の会計に問題があったことを示すものではありません。値動きには会社ごとの理由があり、監査法人の異動だけでは説明できません。

エスポアは、辞任のお知らせの前に、決算発表を2度延期していました。その後、別に公表した開示で、監理銘柄に指定され、第三者委員会の調査を経て、9月に上場廃止が決まっています。監査法人が意見を出せない状態の会社の扱いは、ニデックの記事で取り上げています。

次の山場は、11月の中間決算

今年、監査法人が降りた会社の多くは、新しい監査法人のもとで次の決算を迎えます。決算の発表と法定の報告書が予定どおり出るかが、最初の確かめどころです。

お知らせから60営業日前例では、監査法人から降りた会社の株価が市場より下げやすい期間
2027年2月ごろ東京商工リサーチが2026年の監査法人の異動を集計(2025年分は2026年2月27日に公表)
2027年5月監査法人の異動のお知らせが1年でいちばん多い月(3月決算の会社の株主総会の前)

監査法人の異動のお知らせを見たら、自分で確かめることは4つです。

  • 本文の「異動に至った理由及び経緯」が、任期満了での交代か、監査法人からの辞任・辞退か
  • 理由に、会計処理をめぐる意見の違いや内部統制の問題が書かれていないか
  • 次の監査法人が決まっているか(決まるまでの間は、仮の監査法人として「一時会計監査人」を選ぶ)。決算の発表日と法定の報告書の提出期限を、会社の予定表で確かめる
  • お知らせの前の1年に、調査委員会や決算発表の延期などのお知らせが出ていないか

予想:辞任・辞退のお知らせは、重い開示の前触れになりやすい

監査法人から降りたお知らせを見たら、1年以内に重い開示が続く見込みは3割ほどと見ています。株価も、お知らせのあと市場より下げやすいと見ています。

予想の理由は3つです。

  • 4年とも同じ向きだった:どの年も、監査法人から降りた会社のほうが、重い開示が多く出ました。
  • 前もって重い開示がなかった会社でも差が残った:お知らせの前の1年に重い開示がなかった会社に絞っても、差はなくなりませんでした。
  • 株価の中央値もお知らせのあとに下げた:会社が交代させた場合は、お知らせのあとは横ばいでした。

ただし、株価はいま上場している会社だけで数えたので、上場廃止になった会社は入っていません。結果は、いまも上場している会社に限った数字です。

で、儲かるのか

この記事の答え

監査法人から降りた会社は、1年以内に3社に1社が重い開示を出す見込みです

任期満了で会社が替えるのとは別物です。「意見の違い」と書かれていれば、前例では7割に重い開示が続きました。

いちばん確か

本文が監査法人からの「辞任・辞退」

↓重い開示が
3社に1社
株価

お知らせの前日から60営業日

↓市場より
下げる
任期満了で交代

会社が監査法人を替える

→ふだんと
変わらない

情報源

  • 開示:kabupro の毎日の適時開示の一覧(2022年1月〜2026年10月14日・約33万件)から、見出しに「会計監査人」「監査人の異動」を含む開示529件を集め、本文の「異動に至った理由及び経緯」で、監査法人の側から降りた(辞任・辞退・退任の通知・契約更新の辞退)59件と、任期満了で会社が交代させた361件に分けた。同じ会社の1年以内のお知らせは1件にまとめた。一覧が取れなかった取引日が41日(全体の約3%)あり、その日の開示は数えていない
  • 重い開示:お知らせの翌日から1年以内に、同じ会社が出した開示の見出しに「監理銘柄」「特別注意」「整理銘柄」「改善報告」「不適切な会計」「調査委員会」「第三者委員会」「継続企業の前提」「決算発表の延期」「上場廃止の決定」などがあるもの。1年たっていない2025年10月以降のお知らせは、割合から外した
  • 株価:Yahoo Financeの日次終値。比べる相手は、同じ市場の全銘柄の同じ期間の値動きの中央値。いま上場している会社だけ(上場廃止になった会社は入らない)
  • 件数の集計:東京商工リサーチ「2025年上半期 上場企業の監査法人異動」(2025年7月23日)、「2025年 上場企業の監査法人異動」(2026年2月27日)。お知らせの例:クシム「会計監査人からの退任通知受領に関するお知らせ」(2025年2月5日)
  • 制度:上場会社等監査人登録制度(改正公認会計士法、2023年4月1日施行)。米国の研究に、監査法人の辞任の60日前から株価が下げ始め、発表後も少なくとも30日は下げが続くという結果がある(「How do investors react to auditor resignations?」Inderscience、2020年4月オンライン公開)
  • 市場と業種:日本取引所グループ「東証上場銘柄一覧」(2026年8月末)
免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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