調査

立会外分売の発表で下げた株価は戻るのか 2022年からの210件と、11月に増える分売

2026.10.13
立会外分売の発表で下げた株価は戻るのか 2022年からの210件と、11月に増える分売

📌 この記事は公開情報(各社の適時開示、市場データ、日本取引所グループの上場銘柄一覧)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月13日時点のものです。

立会外分売が発表されると、株価は下がります。その下げは、分売が終われば戻るのでしょうか。

この記事の予想は、立会外分売を発表した株は分売日の前日まで市場より下げ、分売のあとは市場より戻す、というものです。ただし、発表の前の水準までは戻らないことが多いと見ています。

立会外分売は、大株主などの株を取引の外で売る仕組み

立会外分売(分売)は、大株主などが持つ多くの株を、ふだんの取引(立会)とは別に、決まった値段で売る仕組みです。値段は前日の終値をもとに決め、多くは少し割り引きます。買える株数に上限をつけて、多くの個人に売ります。

発表から分売日まで、ふつうは1週間ほど
▼
① 予定を知らせる分売をする予定の期間と株数を、会社が開示する
② 前日の夕方に値段が決まるその日の終値をもとにした値段と、分売日を開示する
③ 分売日の朝に売買が成立8時00分〜8時45分に申し込みを受ける。1人あたりの上限がある
申し込みの時間は日本取引所グループの用語集による。証券会社の受付の締め切りはそれより早いことがある(SBI証券は分売日の8時20分まで)。数えた分売の割引率は、真ん中で前日の終値の約3%

会社の開示に書かれた目的は、「株式の分布状況の改善」と「流動性の向上」が多く見られます。株主の数や、市場で売り買いされる株を増やして、プライム市場やスタンダード市場の上場を続ける基準を満たすために行う会社もあります。

売る側にとっては、市場で一度に売ると値段が崩れやすい量の株を、売りやすくする方法です。買う側にとっては、前日の終値より少し安く買える機会になります。ただし、申し込みが多いと、希望した株数を買えるとは限りません。

分売日の前日まで下げ、分売のあとは戻した

2022年からの210件を数えると、株価は発表の日に下げ、そのあと分売日の前日まで、さらに市場より下げていました。分売のあとは市場より戻しています。

ここでの「市場」は、同じ市場(プライム・スタンダード・グロース)の全銘柄の値動きを順に並べた真ん中の値(中央値)です。たとえば、その株が3%下がり、市場が1%下がったなら、市場との差は−2ポイントです。「戻した」は、分売のあとに市場より上だったという意味で使います。

この向きは、2022年から2026年(9月まで)の5年とも同じでした。

ただ、分売のあとに戻したのは、下げた分の一部だけです。発表の前日から通して見ると、4件に3件は市場より下のままでした。

大きく下げた株は、そのあと戻りやすいとも言われます。そこで、同じ時期に同じくらい下げた別の株と比べました。

同じくらい下げた別の株は、そのあと横ばいでした。分売日の前日までの下げも、分売のあとの戻りも、別の株には出ていない動きです。

関連企業と日本の接点

どの市場・業種でも、向きは同じでした。動きが大きいのはグロース市場で、プライム市場の大きな会社は小さめでした。

ふだんの1日の売買に比べて分売の株数が多い会社ほど、分売日の前日までの下げが大きい傾向がありました。割引率の大小では、はっきりした差は見えませんでした。

今年(2026年)の分売でも、同じ形が出ています。

今年の分売も、多くが分売日の前日まで市場より下げ、分売のあとに戻しています。値動きには会社ごとの理由もあり、分売だけでは説明できません。

同じように株を売り出す仕組みでも、公募増資・売出の記事では、受渡日のあとも株価は戻りませんでした。分売は、1人あたりの上限をつけて、多くの個人に売る点が違います。

次の山場は、11月の中間決算のあと

分売日は、決算の発表が集まる月とその翌月に多く、いちばん多い月は11月です。前例では、11月中旬に発表が集まり、11月下旬に分売日が集まりました。

10月下旬〜11月中旬3月決算の会社の中間決算の発表
11月下旬分売日が集まる。お知らせの翌日〜分売日の前日は、前例では市場より下げやすい期間
分売日の前日の夕方分売の値段と分売日が決まる
分売の20営業日後前例では、3件に2件が市場より戻した

分売のお知らせを見たら、自分で確かめることは4つです。

  • 分売をする予定の期間(分売日はその中のどれか1日)
  • 分売する株数が、ふだんの1日の売買の何日分か
  • 分売の値段の割引率(前日の夕方に分かる)
  • 使っている証券会社の、申し込みの方法と締め切り

株価が動く理由の基本は株価が動く理由にまとめています。

予想:分売日の前日まで市場より下、分売のあとは戻す

次に分売が発表された株は、分売日の前日まで市場より下げる見込みが高いと見ています。分売のあとの20営業日は、市場より戻す見込みです。

予想の理由は3つです。

  • 5年とも同じ向きだった:2022年から2026年まで、どの年も分売日の前日まで下げ、分売のあとに戻しました。
  • 別の株には出ていない:同じ時期に同じくらい下げた別の株は、横ばいでした。
  • どの市場・業種でも同じだった:大きさは違っても、向きはそろっていました。

ただし、予定のお知らせはほとんどが15時以降に出るので、発表の日の下げは、翌朝の取引の始まりにまとめて出ます。分売のあとも、発表の前の水準までは戻らないことが多くありました。

で、儲かるのか

この記事の答え

分売が発表された株は、分売日の前日まで市場より下げ、分売のあとは戻す見込みです

前例では5年とも同じ向きでした。分売で買った人は、寄り付きで値段より上になったのが4件に3件でした。

いちばん確か

発表の翌日〜分売日の前日

↓市場より
下げる
分売で買った人

分売日の寄り付き

→値段より
上が多い
分売のあと

分売日から20営業日

↑市場より
戻す

情報源

  • 開示:kabupro の毎日の適時開示の一覧(2022年1月〜2026年10月12日)から、見出しに「分売」を含む開示857件を集め、本文から分売の予定期間・分売日・値段・株数を読んだ。一覧が取れなかった取引日が41日(全体の約3%)あり、その日の開示は数えていない
  • 対象:東証に上場する会社の分売で、分売日と株価がそろう233件(月ごとの件数の図)。そのうち、最初の予定のお知らせが取れた210件で、段階ごとの値動きを数えた。名証・福証・札証だけに上場する会社は入っていない。1日で±40%を超えて動いた日がある銘柄(株式分割の反映漏れなど)は、その期間を外した
  • 数え方:発表の日=最初のお知らせに株価が反応した日(15時以降の開示は翌営業日)。市場=同じ市場の全銘柄の同じ期間の値動きの真ん中。同じくらい下げた別の株=同じ市場で、同じ期間の市場との差が分売の株と±1.5ポイント以内の株(5銘柄以上)の真ん中。分売で買った人の損得=分売の値段と分売日の始値の比べ(値段が前日の終値の0〜12%引きに収まり、読み取れた182件)。株数の多さ=分売の株数を、発表前60営業日の1日の売買高の真ん中で割った値
  • 株価:Yahoo Financeの日次の始値・終値と売買高
  • 市場と業種:日本取引所グループ「東証上場銘柄一覧」(2026年8月末)の市場区分と33業種
  • 仕組み:日本取引所グループの用語集「立会外分売」(条件の発表・申し込みの時間・値段の決め方)、各社の開示(例:Link-Uグループ「株式の立会外分売実施に関するお知らせ」2024年12月20日)、SBI証券のヘルプ「立会外分売」。2015年度の分売を数えた先行研究に、三宅敦史「立会外分売とその後の株価について」(神戸学院経済学論集 第49巻第3号、2017年12月)がある
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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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