クミアイ化学のアクシーブ(ピロキサスルホン)に後発品 特許で勝っても株価は動かず、値段の話で3回下げた

📌 この記事は公開情報(クミアイ化学の適時開示・決算資料・ニュースリリース、米FMCの開示、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月7日時点のものです。
クミアイ化学の株価は、主力の除草剤に後発品が入ってから、何で動いてきたのでしょうか。
株価を動かしてきたのは、特許の裁判の勝ち負けではなく、除草剤アクシーブの値段の話でした。値段の話で下げた株はそのあとも下げ続けてきたので、本決算で来期の見通しが出るまでは、安値を買い場と決めにくい場面です。
予想を62.5%下げ、株価は1日で12.6%下げた
クミアイ化学は9月11日、通期の営業利益の予想を72億円から27億円に下げました。理由は、海外向けの除草剤「アクシーブ」に後発品が入って値段が下がり、在庫の評価を下げたことです。
株価は9月10日の759円から、9月11日に663円まで下げました(−12.6%)。TOPIX連動ETFとの差は−12.2ポイントで、普段の日の動きの7.8倍です。そのあと10月6日までの14営業日でも、市場よりさらに5.5ポイント下げ、10月5日には2年来の安値の653円をつけています。
アクシーブは、有効成分ピロキサスルホンの除草剤のブランド名です。クミアイ化学が自社で作り、オーストラリアでは「Sakura 850 WG」の名前でも売っています。会社の決算資料によると、2026年10月期の第3四半期までは、オーストラリアとアルゼンチン向けの出荷が減り、米国向けは販売の支援を強めて増やしました。
特許の勝訴では動かず、値段の話の3回だけ大きく下げた
クミアイ化学は、中国やオーストラリアでピロキサスルホンの特許の裁判を続け、勝ってきました。それでも株価は勝訴では動かず、アクシーブの値段の話で予想を下げた3回だけ大きく下げています。
クミアイ化学は2024年から、ピロキサスルホンを作る中国の会社を、中間体や製法の特許で訴えてきました。相手には安徽久易農業(Anhui Jiuyi Agriculture)などが入っています。2026年7月には中国の裁判所で一審に勝ち、8月には別の会社と、クミアイに有利な形で和解しました。オーストラリアでは2026年1月に、2040年10月まで有効な製法の特許を取っています。
こうした特許の発表7回の前後2日で、株価の動きはどれも普段の範囲でした(大きくても普段の1.6倍)。
アクシーブの値段で予想を下げた3回は違います。
| 発表日 | 中身 | 前後2日の市場差 | その後の20営業日 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月10日 | 後発品への対策の値下げなどで、通期の予想を下げた | −8.3(普段の3.6倍) | −9.7 |
| 2025年12月12日 | 今期の予想に、アクシーブの減収81億円を入れた | −5.9(普段の2.5倍) | −5.3 |
| 2026年9月11日 | 値崩れで在庫の評価を下げ、通期の予想を下げた | −13.4(普段の5.7倍) | 14営業日で−5.5 |
前の2回は、発表のあとの20営業日でも市場より下げ続けました。株価は、裁判の勝ち負けより、アクシーブがいくらで売れるかを見ています。
米FMCは、後発品の圧力のなかで株価が93%下がった
主力の農薬に後発品が入った米国のFMCは、株価が3年9か月で93%下がり、決算の翌日の大きな下げを何度も繰り返しました。
FMCは、殺虫剤「Rynaxypyr(クロラントラニリプロール)」を主力にしてきた米国の農薬会社です。2025年7〜9月期の決算の発表では、値下がりの理由の一つとして「中南米とアジアの後発品による競争の圧力」を挙げました。
株価は2023年1月3日の124.92ドルから、2026年10月5日には9.00ドルになりました。決算の翌日には、2025年2月5日に−33.5%、2025年10月30日に−46.5%、2026年2月5日に−19.5%と、大きな下げを何度も繰り返しています。2025年10月30日には、インド事業の売却に伴う損失なども重なっています。
今期は残り3か月で49億円の赤字を見込む計算、化成品は伸びている
クミアイ化学の通期の予想は、8〜10月の3か月で営業赤字になる計算です。一方で、化成品の事業は、AIサーバー向けの材料で利益を伸ばしています。
| 2025年11月〜2026年7月の9か月 | 売上高 | 営業利益 | 前の年からの増減 |
|---|---|---|---|
| 農薬及び農業関連 | 1,119億円 | 68億円 | −32% |
| 化成品 | 225億円 | 19億円 | +31% |
| 会社全体 | 1,414億円 | 76億円 | −27% |
9か月の営業利益は76億円で、通期の予想は27億円です。差し引くと、残りの8〜10月で49億円の赤字を見込んでいる計算になります。前の期の営業利益は106億円だったので、今期は75%の減益です。
化成品では、AIサーバー向けの電子材料に使うビスマレイミド類の出荷が大きく増えました。9か月の営業利益は19億円で、農薬(68億円)よりはまだ小さい事業です。
関連企業と日本の接点
ピロキサスルホンをめぐる会社のうち、日本の取引所で株を買えるのはクミアイ化学だけです。前例のFMCは米国の上場企業です。
| 会社(市場:コード) | この話での位置 | 株価 |
|---|---|---|
| クミアイ化学工業(東証プライム:4996) | 除草剤アクシーブ(ピロキサスルホン)を作る。中国・オーストラリアで特許の裁判を続ける | 658円(10月6日) |
| FMC(米ニューヨーク証券取引所:FMC) | 殺虫剤Rynaxypyrの会社。後発品の圧力を理由の一つに挙げた。日本の取引所には上場していない | 9.00ドル(10月5日) |
| 安徽久易農業など中国の会社 | ピロキサスルホンを作り、クミアイ化学に特許で訴えられた。日本の取引所には上場していない | — |
株価の差を、後発品だけで説明することはできません。FMCはインド事業の売却などの別の材料も抱えていました。クミアイ化学も、国内向けの農薬や化成品は伸びています。
次の山場は12月中旬の本決算
次に株価が大きく動きそうなのは、12月中旬の本決算です。これまでの3回と同じく、アクシーブの値段が来期の予想にどう入るかが焦点です。
で、儲かるのか
クミアイ化学の株価を動かしてきたのは、アクシーブの値段だ。特許の勝訴では動かず、値段の話で下げた2回は、そのあとも下げ続けた。後発品の値崩れは一度で終わりにくく、FMCも後発品の圧力のなかで、決算の日に大きな下げを繰り返した。12月の本決算で来期のアクシーブの見通しが出るまで、安値を買い場と決めない。
値段の話で予想を下げた3回は、前後2日で普段の2.5〜5.7倍の下げ。
営業利益の予想は27億円。8〜10月で49億円の赤字を見込む計算。
12月中旬の本決算で、来期のアクシーブの見通し。
情報源
- クミアイ化学工業:2026年10月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ(2026年9月11日)、決算補足説明資料(2026年10月期第3四半期)、2025年10月期通期連結業績予想及び期末配当予想の修正(2025年10月10日)、決算補足説明資料(2025年10月期)
- クミアイ化学工業のニュースリリース:中国におけるピロキサスルホン製品に対する特許権侵害訴訟手続きの開始(2025年2月13日)、オーストラリアにおけるピロキサスルホンに関する製造工程特許付与(2026年1月9日)、中国におけるピロキサスルホン重要中間体物質特許権侵害訴訟 勝訴(2026年7月22日)、同 和解(2026年8月21日)
- FMC:2025年7〜9月期の決算の発表(8-K、2025年10月29日)
- 株価:Yahoo Financeの日次終値(配当を含まない)。市場差は、クミアイ化学の騰落率からTOPIX連動ETF(1308)の騰落率を引いた差。決算の発表日は株探のクミアイ化学の決算のページ
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。