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ゲルマニウム高騰、中国からの輸入はゼロに——光ファイバーの原料の穴を埋めたカナダと、フジクラへの影響

2026.09.28 2026.09.29 更新
ゲルマニウム高騰、中国からの輸入はゼロに——光ファイバーの原料の穴を埋めたカナダと、フジクラへの影響

📌 この記事は公開情報(財務省の貿易統計、米国地質調査所・JOGMECの資料、中国商務部の公告、各社の決算資料、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年9月28日時点のものです。

🔄 2026年9月29日に更新しました。 9月29日に出た8月分の貿易統計(速報)を、二酸化ゲルマニウムの単価の図と本文に反映しました。8月も中国からの二酸化ゲルマニウムはゼロで、カナダからの輸入は続いています。

中国がゲルマニウムの輸出を絞り、値段が跳ね上がっています。光ファイバーの原料が足りなくなり、フジクラなど光ファイバーの会社の利益が削られるのでしょうか。

光ファイバーの原料になる二酸化ゲルマニウムは、中国の代わりにカナダから入っていて、量は減っていません。値上がりの額も光ファイバー各社の利益を左右する大きさではなく、株価を動かしているのはゲルマニウムではなく光ファイバーの需要です。

ゲルマニウムは光ファイバー・ペットボトル・赤外線レンズに使われる

ゲルマニウムは亜鉛を製錬するときなどに取り出す副産物で、日本は主に2つの形で輸入しています。

ゲルマニウムは、半導体の材料のケイ素(シリコン)と同じ仲間の元素です。多くは、亜鉛の鉱石を製錬するときや、石炭を燃やした灰から、副産物として取り出します。2021年に世界で精製された140トンのうち、68%は中国でつくられました。

二酸化ゲルマニウムは白い粉で、ペットボトルの樹脂(PET)をつくるときの触媒になります。国内ではこれがいちばん大きい使い道です。四塩化ゲルマニウムという液体に形を変えると、光ファイバーの芯(コア)に混ぜる材料になります。芯の屈折率を周りのガラスよりわずかに高くして、光を芯の中に閉じ込める役目です。

金属ゲルマニウムは赤外線を通すので、赤外線カメラや暗視装置のレンズ・窓になります。人工衛星の太陽電池の土台(基板)や半導体にも使います。

値段は約3倍、それでも光ファイバーの原料は量を保った

二酸化ゲルマニウムの輸入単価は1年半で約3倍になりましたが、中国の分をカナダとロシアが埋め、輸入量はむしろ増えています。

財務省の貿易統計で、二酸化ゲルマニウムの輸入額を重さで割ると、1kgあたりの値段が出ます。2025年1月は32.3万円、2026年7月は102.3万円、8月(速報)は109.6万円でした。

2025年8月からは、ほぼ毎月上がり続けています。 欧州の取引価格も同じ向きで、米国地質調査所(USGS)によると、2025年1月から10月までに二酸化ゲルマニウムは1kg2,200ドルから2,850ドルに、金属ゲルマニウムは3,150ドルから5,380ドルに上がりました。

同じ時期に、中国の輸出は大きく減っています。USGSによると、中国の金属ゲルマニウムの輸出は、2023年1〜9月の3万6,656kgから、2025年の同じ期間は7,520kgまで減りました。2年で約5分の1です。

では、日本はどこから買っているのか。1〜7月どうしで輸入先を比べると、こうなります。

中国からの二酸化ゲルマニウムは、2025年7月の250kgを最後に入っていません。 その分を埋めたのはカナダ(2,330kg→3,600kg)とロシア(140kg→580kg)で、合計は3,472kgから4,190kgへ21%増えました。

8月(速報)も中国からはゼロで、カナダから610kg(前年の8月は200kg)、ロシアから100kgが入りました。1〜8月の合計は4,900kgで、前年の同じ期間(3,692kg)より33%多くなっています。

もともと日本の二酸化ゲルマニウムはカナダ産が主力で、輸入のうちカナダの分は2021年に66%(JOGMEC)、2025年1〜7月も67%でした。中国の分は3割ほどだったので、カナダとロシアが量を増やして埋められました。そのカナダ産も、1kgあたり34.4万円から83.5万円へ2.4倍になっています。

カナダでゲルマニウムを生産しているのは、資源大手テック・リソーシズのトレイル製錬所(ブリティッシュコロンビア州)だけです。カナダ政府は2026年7月7日、この製錬所でゲルマニウムとアンチモンの生産を2倍にし、ガリウムの生産も始める計画に、最大4億カナダドルを出すと発表しました。投資の総額は最大8億5,000万カナダドルで、完成の時期は示されていません。

止まったのは、赤外線レンズなどに使う金属ゲルマニウム

金属ゲルマニウムは中国からの輸入が2026年1月から止まり、1〜7月の輸入量は前年の3分の1になりました。

金属ゲルマニウムは、2021年に塊・粉の輸入の81%、加工品の98%が中国からでした(JOGMEC)。二酸化ゲルマニウムと違い、中国の比重が大きかった品目です。

2025年1〜7月に中国から入った2,932kgは、2026年の同じ期間は61kg。代わりにベルギーとドイツからの輸入が増えましたが、合計は3,751kgから1,258kgに減りました。2025年11〜12月には中国から1,876kgが入っており、止まる直前にまとめて入った形です。 8月(速報)は中国から塊・粉が48kg入りましたが、1〜8月で見ても中国からは109kgで、前年の同じ期間(2,933kg)の4%に届きません。

値段も跳ねています。塊・粉の金属ゲルマニウムを2026年1〜7月にベルギー・ドイツ・米国から買った単価は1kgあたり113万〜164万円で、2025年1〜7月に中国から買った分(29万円)の約4〜6倍です。

中国の輸出規制は、この3年で段階的に強まってきました。

2023年8月1日ガリウムとゲルマニウムの輸出を許可制に(7月3日に公告)
2024年12月3日ガリウム・ゲルマニウム・アンチモンの米国向けを原則として許可しないと公告
2025年11月9日米国向けの原則不許可を2026年11月27日まで停止。許可制そのものは続く
2026年2月24日日本の20の企業・組織を輸出禁止の対象に、20を審査を厳しくする対象に指定

1月6日の公告は、ゲルマニウムを名指ししてはいません。ただ、ゲルマニウムは中国が軍民両用品として管理している品目で、金属ゲルマニウムを使う赤外線レンズは防衛装備にも使われます。中国からの金属ゲルマニウムが止まった月と、この公告の月は重なっています。

フジクラの利益から見れば小さい額

日本が輸入するゲルマニウムは、全部合わせてもフジクラ1社の営業利益の約5%です。

二酸化ゲルマニウムと金属ゲルマニウムの輸入額は、2025年の1年で56億円でした。2026年は1〜7月で52億円で、同じペースなら1年で約90億円です。

フジクラの2026年3月期の営業利益は1,887億円。日本に入るゲルマニウムを仮に1社で全部使ったとしても、営業利益の約5%です。 実際には光ファイバーをつくる会社は古河電気工業や住友電気工業もあり、ペットボトル向けなど別の使い道もあるので、1社あたりの負担はこれより小さくなります。

株価は、ゲルマニウムが値上がりしている間も上がり続けました。

ゲルマニウムの値段が約3倍になった間に、光ファイバーをつくる3社の株価は3〜5倍になりました。 フジクラの情報通信事業部門は、2026年3月期に営業利益が65.7%増の1,527億円。会社は伸びた理由を、生成AIの広がりを背景にしたデータセンター向けの需要と説明しています。

同じ決算短信で、光ケーブルの急な増産に「調達が追いつかなくなる懸念」があると書いた原料は水素でした。ゲルマニウムについての記載はありません。 会社が名前を挙げて調達を心配している原料は、ゲルマニウムではありません。

一方、光ファイバー用の材料を創業の事業とするトリケミカル研究所は、株価がほぼ横ばいです。同社はいま半導体向けの材料が中心で、2026年8月の決算短信と9月の半期報告書にも、ゲルマニウムについての記載はありません。

関連企業と日本の接点

ゲルマニウムを決算で増益の理由に挙げているのは、精製する側のユミコアです。

会社(市場:コード)ゲルマニウムとの関わり決算・株価で見えること
フジクラ(東証:5803)光ファイバーをつくる2026年3月期の営業利益1,887億円。株価(9月28日)4,957円
古河電気工業(東証:5801)光ファイバーをつくる株価3,785円
住友電気工業(東証:5802)光ファイバーをつくる株価2,200円
トリケミカル研究所(東証:4369)光ファイバー用の高純度材料を創業時から供給株価3,020円。直近の決算資料にゲルマニウムの記載なし
テック・リソーシズ(NYSE:TECK)カナダで唯一ゲルマニウムを生産。生産を2倍にする計画日本の取引所には上場していない
ユミコア(ユーロネクスト・ブリュッセル:UMI)ベルギーでゲルマニウムを精製・リサイクル2026年1〜6月、ゲルマニウム製品の強い需要を増益の理由の1つに挙げた。日本の取引所には上場していない
5N Plus(トロント:VNP)米ユタ州でゲルマニウムの基板、独AZUR SPACEで衛星用の太陽電池をつくる2026年4〜6月、金属の仕入れ値の上昇などで調整後の売上総利益率が34.6%から30.3%に下がった。日本の取引所には上場していない

ユミコアは、ゲルマニウムを売る側です。2026年1〜6月は、ゲルマニウムを含む特殊材料の部門で売上高が前年同期比21%増、調整後の利益(EBITDA)が49%増えました。会社はコバルトの好調とゲルマニウム製品の強い需要などを理由に挙げ、下期もゲルマニウムの需要は底堅いと見ています。

5N Plusは、ゲルマニウムなどの金属を買って加工する側です。4〜6月期の売上高は28%増えましたが、調整後の売上総利益率は下がりました。財務責任者は、金属の仕入れ値の上昇などを理由に挙げています。衛星向けの太陽電池は引き合いが強く、宇宙用太陽電池の入札の額は前年の上期の2倍以上だったと経営陣は説明しています。

3社とも株価は上がっていますが、ユミコアはコバルト、テックは銅や亜鉛など、ゲルマニウム以外の事業のほうが大きく、この値動きをゲルマニウムだけで説明することはできません。

で、儲かるのか

この記事の答え

ゲルマニウムの値上がりは、光ファイバー株を揺らす材料ではない。見るべきは、カナダからの輸入が続くかどうか。

現状

二酸化ゲルマニウムはカナダとロシアから量を確保できています。値段は約3倍でも、輸入額の全部でフジクラの営業利益の約5%です。

今後の株価

光ファイバー各社の株価を動かしてきたのはデータセンター向けの需要です。フジクラが調達を心配している原料も水素です。ゲルマニウムが効くのは、量が足りなくなったときです。

儲かるのか

ゲルマニウムの強い需要で利益を伸ばしているのは、ユミコアなど海外で精製する会社です。日本株でゲルマニウムを理由に買う筋道は見当たりません。

毎月財務省の貿易統計。カナダからの二酸化ゲルマニウムの量と単価、金属ゲルマニウムの輸入先
2026年11月上旬5N Plusの7〜9月期決算。金属の仕入れ値と売上総利益率が戻るか
時期未定テックのトレイル製錬所の増産(ゲルマニウムを2倍に)

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フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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