調査

米軍のレアアース磁石は2027年から「鉱山」まで調べられる——米国防総省の調達ルール「DFARS」とは

2026.09.14
米軍のレアアース磁石は2027年から「鉱山」まで調べられる——米国防総省の調達ルール「DFARS」とは

📌 この記事は公開情報(米国の規則と法案、米国の上場企業の開示資料、国連の貿易統計)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年9月12日時点のものです。

EVのモーターにも、米軍の兵器にも、「ネオジム磁石」という強力な磁石が使われています。アメリカは、この磁石を中国に頼りたくありません。

そこで米軍が業者に守らせている買い物のルールが、まもなく厳しくなります。磁石の原料を掘った場所まで調べられるようになるからです。

この変化で強くなるのは、大きな工場を持つ会社ではありません。原料を鉱山までたどれる会社です。

「DFARS」とは、米軍の買い物ルールです

DFARSは、米軍がモノを買うときに業者へ守らせるルールの集まりです。

米軍の兵器や部品は、国防総省(日本でいえば防衛省)が民間の会社から買っています。

そのときに守らなければいけない決まりをまとめたルールブックが「DFARS(国防総省の調達規則)」です。

1米軍に物を売る会社は、ルールを守ると約束する
兵器を作るメーカーは、国防総省と契約するときに、DFARSを守ることを約束します。
2下請けの部品会社にも、同じ約束をさせる
ルールは、部品を作る下請けの会社との契約にも書き込まれます。磁石を作る会社も、ここに入ります。
3その中に「磁石」の決まりがある
中国・ロシア・北朝鮮・イランを通った磁石は、米軍に納めてはいけない、という条文(252.225-7052条)です。

2027年1月から、原料の「産地」まで調べる

2027年1月1日から、磁石そのものだけでなく、原料を掘った場所や精製した場所まで調べられます。

2→5段階米軍が調べる、磁石づくりの段階の数。2027年1月から「掘る・精製する・分ける」が加わる
72.7%2025年に米国が輸入した磁石のうち、中国製の割合(金額ベース・国連の統計を自前で集計)
50%米国の下院が可決した法案が求める、「米国の会社が作った材料」の最低割合

食べ物にたとえると分かりやすいです。

これまでは、「どこの工場で加工したか」だけを見ていました。2027年1月からは、「原料をどこで収穫したか」まで見ます。

磁石でいえば、「どこで溶かして磁石にしたか」だけでなく、「原料をどこの鉱山で掘り、どこで分けたか」まで調べる、ということです。

つまり、韓国や日本で作った磁石でも、原料を中国で掘ったり分けたりしていれば、原則として米軍には納められなくなります。

例外は、アメリカ国内でリサイクルして作った磁石や、「ほかに手に入らない」と認められた場合などに限られます。この「ほかに手に入らない」という例外も、2026年7月の大統領令(大統領が政府に出す命令)で、2027年から認められにくくなりました。

なぜ厳しくするのか——米国の磁石は7割が中国製

米国が買う磁石のうち7割以上が中国製で、その中国が輸出管理を強めたからです。

米国が輸入する磁石は、2025年でも金額の72.7%が中国製です。4年で6ポイントほどしか減っていません。2位は4年とも日本で、2025年は6.1%です。

中国は2025年10月9日、レアアースに関係する品物や技術の輸出管理を強めると発表しました。頼っている相手が、蛇口を締められる立場にあるわけです。

しかも、貿易統計でわかるのは「最後に磁石にした国」だけです。 日本や韓国で作った磁石でも、原料が中国を通っていれば、1月からは原則として米軍向けに使えなくなります。

米国の議会も、同じ方向に動いている

米国の議会は、毎年「国防授権法」という法律を作ります。軍の方針やルールと、予算の枠を決める法律です(実際にお金を出すのは、別の予算の法律です)。議会には下院と上院があり、両方で可決して大統領が署名すると成立します。

2027年分の国防授権法は、まだ成立していません。ただ、下院の案も上院の案も、「原料までさかのぼって調べる」点は同じです。

1下院の案(2026年7月22日に可決)
原料までさかのぼって調べるのに加えて、対象の磁石や原料について、材料費の半分以上を「米国の会社」が作ったものにすることを求めます。ここでいう米国の会社とは、米国の法律でつくられ、米国人が支配している会社です。
2上院の案(委員会で可決)
外国からの買い物の制限を1つにまとめ、掘る・精製する・加工する・作る・組み立てる、のどこかを中国などが行ったものを買わない、とします。始まりは2028年1月です。
3いまの状況
上院では審議が止まっています(2026年7月22日時点の報道)。最終的な中身と時期は、両院の話し合いで決まります。

下院の案が通れば、「どこで掘ったか」に加えて、「米国の会社が作ったか」も問われるようになります。

同じ「1万トン」の工場でも、差がつくのは原料

同じ規模の工場を計画していても、差がつくのは装置ではなく、原料の出どころを示せるかどうかです。

年1万トン規模の磁石工場を計画している、米国の上場企業3社を並べます。

会社どこで磁石を作るか原料はどこから
MPマテリアルズ
NYSE: MP
米テキサス州で計1万トン。新工場は2028年に試運転の予定自社の鉱山(カリフォルニア州)で掘ったものを使う
USAレアアース
Nasdaq: USAR
米オクラホマ州などで計約1万トン。新工場は2028年に試運転の予定ブラジルの鉱山を買収する手続き中
EMAT
Nasdaq: EMAT
韓国で約1,000トンから1万トンへ。装置の納期は2026年11月30日鉱山は持たず、原料の金属を買う

工場の大きさは横並びです。違いは、原料を鉱山までたどれるかどうかです。

鉱山を自社で持つ必要はありません。ほかの会社の鉱山でも、どこで掘ったかを示せれば条件は満たせます。EMATが買っている原料の中身は、別の記事で詳しく読み解きました

関連企業と日本の接点

名前が挙がる会社は3社とも米国の上場企業で、日本は磁石を売る側として関わります。

会社上場この話での位置
MPマテリアルズ米ニューヨーク証券取引所(日本の取引所には上場していません)鉱山から磁石まで自社で持つ。新工場の磁石は国防総省が全量を買う約束(詳しくはこちら
USAレアアース米ナスダック(日本の取引所には上場していません)ブラジルの鉱山を買収する手続き中
EMAT米ナスダック(日本の取引所には上場していません)韓国で磁石を作り、原料は買う。株価は別の記事に載せています

この株価の動きを、DFARSの話だけで説明することはできません。 2社とも鉱山や金属の事業を含めて評価されており、株価はほかの理由でも動きます。

日本の接点は2つです。

  • 米国の磁石輸入で、日本は4年続けて中国に次ぐ2位です。日本で作った磁石も、1月からは原料の出どころを問われます
  • 下院の案が成立すると、「米国の会社が作った材料を半分以上」という条件が加わります。日本の会社の生産がどう数えられるかは、条文の定義と国防総省の細かい規則で決まります

フクリの見方

フクリの見立て

米軍の磁石選びの基準は、
「工場の大きさ」から「鉱山までたどれるか」に変わります。

なぜそう言えるか

2027年1月から、調べる段階が2つから5つに増えます。増えるのは掘る・精製する・分ける、つまり原料の側です。

議会も同じ方向

下院の案も上院の案も、原料までさかのぼる点は同じです。下院の案は米国の会社という条件も加えます。

見るべきもの

工場のトン数ではなく、原料を鉱山までたどれる情報を出しているかです。

この見立てが外れる条件

1「ほかに手に入らない」の例外が、たくさん認められる
例外が多く出れば、原料の出どころは問われなくなります。国防総省は大統領令にもとづき、2028年1月まで半年ごとに例外の状況を報告します。
2リサイクル磁石が主流になる
米国内でリサイクルして作った磁石は、このルールの対象外です。この道が大きくなれば、鉱山の出どころは効かなくなります。
3最終的な法律で、原料の規制が弱まる
いまの下院の案と上院の案は、どちらも原料までさかのぼります。話し合いの結果、この部分が外れたり、大きく先送りされたりすれば、見立ては成り立ちません。

では、何を見ていればいいのか

いつ何を見るか
国防授権法の成立時原料までさかのぼる規定と、下院の案の「米国の会社が半分以上」が残るか
2027年1月以降国防総省の、例外の報告
2027年(2026年の貿易統計)米国の磁石輸入に占める中国製の割合(2025年は72.7%)
2028年MPマテリアルズとUSAレアアースの新工場が動き出すか

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まとめ(3行)

1DFARSは、米軍の買い物ルール
その中に「中国などを通った磁石は納めてはいけない」という決まりがあり、2027年1月から原料を掘った場所まで調べるようになります。
2理由は中国頼み
米国が輸入する磁石は、2025年でも72.7%が中国製です。議会の下院案・上院案も、原料までさかのぼる方向です。
3差がつくのは原料
1万トン規模の3社でも、MPは自社の鉱山、USAレアアースは買収手続き中、EMATは原料を買う立場です。

情報源

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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