ルテニウム高騰でフルヤ金属は最高益——株価を動かした上方修正の中身と、3月から止まった値上がり

📌 この記事は公開情報(財務省の貿易統計、各社の決算短信・開示資料、Johnson Mattheyの市場報告、ユミコアの公表価格、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年9月30日時点のものです。
🔄 2026年10月1日に訂正しました。 公開時は、ルテニウムなどの輸出の量が「決算より先に貿易統計に出る」次の材料だと書き、タイトルにも「決算より先に見える数字」と入れていました。輸出の量とフルヤ金属の売上の伸びを15四半期で比べ直すと、11回で20ポイント以上ずれており、2026年4〜6月は売上が53%増えたのに輸出の量は3%減っていました。輸出で決算を先に読むことはできないため、タイトルと該当する部分を直し、その図を外しました。
ハードディスクの材料になるルテニウムが値上がりし、それを加工するフルヤ金属は最高益を出しました。株価は、ルテニウムの値段で動いているのでしょうか。
株価が大きく上がったのは、業績の見通しが上がった決算の直後でした。その最高益の一部は貴金属そのものを売った利益で、ルテニウムの値段は3月から高い水準で横ばいです。貿易統計の輸出の量は伸びていますが、フルヤ金属の決算を先に読む材料にはなりません。
ルテニウムはHDDに、イリジウムは結晶を育てるるつぼに使われる
ルテニウムとイリジウムは、プラチナの仲間の貴金属です。ルテニウムはデータセンターのHDD(ハードディスク)に、イリジウムは光通信の部品などをつくる結晶の容器に使われ、フルヤ金属はこの2つの加工を主力にしています。
ルテニウムとイリジウムは、白金族金属(プラチナ・パラジウムなど6つの金属の総称)に入ります。英国の調査会社SFAによると、ルテニウムは9割以上がプラチナやニッケルの鉱山から副産物として取れ、いちばん大きな産地は南アフリカです。値段が上がっても、ルテニウムだけを理由に増産しにくい金属です。
使い道は、フルヤ金属の事業で見ると分かりやすくなります。
スパッタリングターゲットは、薄い膜をつけたい板に向けて原子をはじき飛ばすための「元の塊」です。光通信の部品は、決算短信の説明では「順方向に進む光のみ透過し、逆方向の光を遮断する部品」(光アイソレーター)で、その部品の結晶をイリジウムのるつぼで育てます。
白金族の市場報告を毎年出している英国のJohnson Mattheyは、2026年5月の報告で「データセンターの拡大で、HDD向けのルテニウムの需要は5年ぶりの高さになる」とし、ルテニウムの市場は大きな供給不足が続くと見ています。ベルギーの素材大手ユミコアが公表しているルテニウムの価格は、2025年6月の平均の1kgあたり2万658ユーロから、2026年3月16日には5万5,400ユーロと2.7倍になりました。その後は月の平均で4万8,000〜5万3,000ユーロ台と、高い水準のまま横ばいです。
ルテニウムなどの輸出は量が増え、単価は2月から横ばい
日本から輸出されたルテニウムなどの加工品は、2026年1〜8月に量で30%増えました。伸びたのはマレーシアとシンガポール向けです。1gあたりの単価は2月から横ばいです。
財務省の貿易統計には、「イリジウム・オスミウム・ルテニウム」の、塊や粉ではない形(板や加工品)の輸出があります。3つの金属を分けて数えていませんが、2026年の1gあたりの単価はルテニウムの相場に近く、中身の多くはルテニウムとみられます。これを国別・月別に集計しました。
2026年1〜8月の輸出量は7,603kgで、前年の同じ期間の5,871kgより30%多く、金額は572億円と、すでに2025年の1年分(478億円)を超えました。行き先で伸びたのはマレーシアとシンガポールで、合わせて3,645kgから5,351kgへ47%増えています。
シンガポールには、HDDのディスクを外部に売る唯一のメーカーであるレゾナックの、生産の中核の工場があります。 同社は2026年7月に、ディスクの年間の生産能力を約1億6,000万枚から約2億3,000万枚に増やす計画を発表しました。マレーシアには同社のディスク用の基板(アルミの土台)の工場がありますが、マレーシア向けの輸出がどの会社のどの工程に使われているかは、統計からは分かりません。
単価は、2025年の平均の1gあたり4,433円から、2026年2〜8月は7,622円に上がりました。ただし月ごとに見ると、2月からは7,381〜7,911円の間で動いておらず、値上がりは2025年12月から2026年2月にかけてのもので、その後は止まっています。 ユミコアの価格も、3月の最高値のあとは高い水準で横ばいです。
量のほうは、足元で増えています。7〜8月の輸出量は2,477kgで前年の同じ月より27%多く、月の平均では4〜6月(839kg)より48%多い1,238kgでした。
原料の側も同じ動きです。塊や粉の形のイリジウム・ルテニウムの輸入は、2026年1〜8月に1,349億円と、2025年の1年分(1,034億円)を超えました。8割が南アフリカからで、7〜8月は月218億円と、2025年の月平均(86億円)の2.5倍です。
統計には会社の名前が出ないので、この輸出や輸入のうちフルヤ金属の分がどれだけかは分かりません。輸出の量の伸びとフルヤ金属の売上の伸びを2022年10〜12月から15四半期並べると、11回で20ポイント以上ずれていました。 2026年4〜6月は、売上が前年より53%増えたのに、輸出の量は3%減っています。この輸出は業界全体の動きを見る数字で、フルヤ金属の決算を先に読む材料にはなりません。
最高益で増えた粗利の3分の1は、貴金属そのものを売った分
2026年6月期の売上総利益(粗利)は、前の期より161億円増えました。そのうち56億円は、製品ではなく、イリジウムやルテニウムなどの地金を売って得た分です。
フルヤ金属の2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)は、売上高1,001億円(前の期より74.5%増)、営業利益248億円(同160.0%増)で、どちらも過去最高でした。
粗利の増え方を部門別に分けると、製品を売る4つの部門の合計は140億円から243億円へ103億円増えました。一方で、製品に加工しない貴金属を売る部門の粗利は、0.4億円から56億円になっています。
56億円の中には、決算短信の注記にある臨時の販売が入っています。会社は「サプライチェーン支援用の商品在庫を超える強い引き合いに対応するため、イリジウム・ルテニウムについて、原材料在庫からの貴金属販売を実施」したと書いており、この販売の売上は166億円、粗利は33億円でした。この販売は2026年1〜3月までに終わっており、4〜6月にはありません。
製品の粗利の伸びにも、値上がりの時期と重なる動きがあります。HDD向けのルテニウムのターゲットを含む薄膜部門の粗利率は、2025年6月期の38%から、2026年1〜3月には60%まで上がりました。会社は理由を量と値段に分けて書いていませんが、粗利率が跳ねたのは、ルテニウムの輸出単価が上がった時期と重なります。
2027年6月期の見通しは、売上高1,010億円(0.9%増)、営業利益265億円(6.9%増)です。会社は「現在の貴金属価格の水準」と1ドル155円を前提にしています。在庫から売った分の粗利33億円を除いた215億円と比べると、見通しは23%の増益です。
株価が跳ねたのは、業績の見通しが上がった決算の日
フルヤ金属の株価は、2025年8月7日から4.4倍になりました。上げ幅が大きかった上位5日は、すべて決算の発表から2取引日以内です。減益の見通しを出した1回目の決算では13%下がり、そのあとの4回はそのたびに12〜16%上がっています。
2026年6月期の営業利益の見通しは、最初は75億円で、前の期(95億円)より減る予想でした。そこから決算のたびに引き上げられ、実績は248億円と、最初の見通しの3.3倍になりました。
| 発表の日 | 営業利益の見通し | 次の取引日の株価(TOPIX連動ETF) |
|---|---|---|
| 2025年8月7日(前の期の決算) | 75億円(減益の予想) | −13.4%(+1.2%) |
| 2025年11月6日(7〜9月期) | 75→100億円 | +12.2%(−0.5%) |
| 2026年2月6日(10〜12月期) | 100→165億円 | +16.3%(+2.3%) |
| 2026年5月13日(1〜3月期) | 165→225億円 | +16.4%(−1.1%) |
| 2026年8月6日(通期の決算) | 実績248億円・来期265億円 | +14.5%(+0.3%) |
2026年2月は、決算の次の取引日のあとも、2月10日に14.1%、12日に18.6%と続けて上がり、3取引日で57%高になりました。見通しの引き上げ幅がいちばん大きかった回(100億円→165億円)で、株価の上がり方もいちばん大きくなっています。
会社は3回の引き上げの理由に、データセンター向けのHDD部材などの好調と並べて、毎回「サプライチェーン支援部門」の上振れを挙げています。株価を押し上げた見通しの引き上げには、前の章で見た貴金属そのものの販売が含まれていました。
決算の日以外で大きく上がった日もあります。上場来高値を更新した9月25日(終値1万1,700円、+9.3%)は、証券会社の評価の見直しが報じられた日でした。
関連企業と日本の接点
ルテニウムを加工する側の上場企業がフルヤ金属、HDDのディスクをつくる側がレゾナックです。どちらも東証に上場しています。
| 会社(市場:コード) | ルテニウムとの関わり | 決算・株価で見えること |
|---|---|---|
| フルヤ金属(東証プライム:7826) | イリジウム・ルテニウムの加工が主力。HDD・半導体向けのターゲット、結晶を育てるるつぼ、地金の販売 | 2026年6月期の営業利益248億円、2027年6月期の見通し265億円。原材料の在庫は746億円で、総資産の半分を超える。株価(9月28日)1万1,340円 |
| レゾナック(東証プライム:4004) | HDDのディスクを外部に売る唯一のメーカー。ルテニウムを使う側 | シンガポールの子会社で、ディスクの年間の生産能力を約2億3,000万枚に増やす計画(2027年以降に順次)。株価1万4,695円 |
レゾナックの株価は、HDDのディスクのほか半導体材料などの動きでも上下するので、ルテニウムだけで説明することはできません。
で、儲かるのか
フルヤ金属の株価を動かしてきたのは、見通しの引き上げでした。それを支えたルテニウムの値上がりは3月で止まり、在庫からの地金の臨時の販売も1〜3月で終わっています。次に見通しを引き上げるには、製品の量が伸びるか、値段がもう一段上がる必要があります。
最高益で増えた粗利161億円のうち56億円は貴金属そのものを売った分。ルテニウムの値段は3月から高い水準で横ばいです。
株価は5回の決算の日に大きく動きました。来期の見通しは営業利益6.9%増ですが、在庫から売った分を除いて比べると23%増です。
「ルテニウムが上がったから」でフルヤ金属を見る段階は過ぎています。輸出の量は7〜8月に前年より27%多いものの、これまでの輸出とフルヤ金属の売上は大きくずれてきました。11月の決算で見るのは、薄膜部門の粗利率が、値上がりが止まったあとも保てているかです。
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情報源
- 財務省:貿易統計。品別国別表の輸出・輸入(2025年1〜12月と2026年1〜8月、8月は9桁速報・2026年9月29日公表)。統計品目番号7110.49(イリジウム・オスミウム・ルテニウムの、塊・粉以外の形状)の輸出と、7110.41(同・未加工品)の輸入を国別・月別に集計(2026年9月30日取得)
- フルヤ金属:2026年6月期の第2四半期(中間期)決算短信(2026年2月6日)・第3四半期決算短信(2026年5月13日)・決算短信(2026年8月6日)。業績予想の修正に関するお知らせ(2025年11月6日・2026年2月6日・2026年5月13日)、中期経営計画「KFKビジョン2030」(2025年8月7日)とその見直し(2026年8月6日)
- レゾナック:ハードディスクメディアの生産能力の増強(2026年5月11日)・追加の増強(2026年7月28日)
- ユミコア(Umicore):ルテニウムの公表価格(1kgあたりユーロ、2025年1月〜2026年9月29日の日次、2026年9月30日取得)
- Johnson Matthey:2026 PGM Market Report(2026年5月14日)
- SFA (Oxford):The Ruthenium Market and Ruthenium Price(副産物としての生産と産地)
- 株価:Yahoo Financeの日次終値(2026年9月30日取得、9月28日の終値まで)。9月25日の上場来高値は日本経済新聞(2026年9月25日)
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