ROE・ROAとは?会社の「稼ぐ力」をはかる指標をやさしく解説

決算のニュースで「ROEが改善」「ROAが高い」といった言葉を見かけます。どちらも会社の“稼ぐ力”をはかるものさしですが、何が違うのでしょう? この記事では、ROEとROAを、日本企業の実際の数字といっしょにやさしく解説します。
ROE・ROAってなに?
どちらも「もとでに対して、どれだけ利益を生んだか」を示す割合です。何を“もとで”とするかが違います。
- ROE:株主が出したお金(自己資本)に対して、どれだけ利益を上げたか。
利益 ÷ 自己資本。 - ROA:借金も含めた会社の全資産に対して、どれだけ利益を上げたか。
利益 ÷ 総資産。
💡 たとえ話。同じ100万円の利益でも、元手500万円で稼いだ会社(ROE 20%)と、元手2,000万円かかった会社(ROE 5%)では、前者のほうが“お金の使い方が上手”といえます。
2つは「かけ算」でつながっている
ROEとROAは別々の指標に見えますが、実はきれいな関係式で結ばれています。
ROE = ROA × 財務レバレッジ。
財務レバレッジは総資産 ÷ 自己資本で、借金が多いほど大きくなる数字です。つまり——
ROAが同じでも、借金を増やせばROEは上がります。
これが、「ROEだけを見てはいけない」と言われる理由です。数式の上でそうなっているので、感覚の話ではありません。ROEが高い会社を見つけたら、ROAも高いのか、それとも財務レバレッジで高くなっているだけなのかを確かめる。これが正しい使い方です。
なぜ「8%」が目安なのか
「ROEは8%以上が目安」とよく言われます。この数字には出どころがあります。
2014年に経済産業省が公表した伊藤レポートです。ここにこう書かれています。
ROEが8%を超える水準で、約9割のグローバル投資家が想定する資本コストを上回る。
かみくだくと、こういうことです。投資家がその会社にお金を出すとき、「これくらいは見返りがほしい」と考える最低ラインがあります。これが資本コスト。グローバル投資家が日本企業に期待する資本コストは平均で7%超とされ、ROEが8%を超えていれば、そのうち約9割の期待を上回ることになります。
つまり8%は、なんとなくの区切りではなく、投資家の期待を上回っているかどうかの境界線として置かれた数字です。伊藤レポートは「グローバル投資家と対話する際の最低ライン」と位置づけています。
💡 逆に言えば、ROEが資本コストを下回っている会社は、株主のお金を預かって、期待より少ない成果しか返せていないということ。これがPBR1倍割れの議論ともつながります。
日本企業の実際の水準
では、日本企業はどのくらい達成しているのか。経産省の資料に、TOPIX500構成銘柄の分布が出ています。
ROE 8%以上の企業は、2013年度が46.6%、2022年度が45.0%。9年たってむしろわずかに下がっています。
伊藤レポートが「最低ライン8%」を打ち出したのが2014年。その後10年近く、日本の大型株のおよそ半分は、この線を超えられていません。
もう1つ、投資家として知っておくとよい数字があります。同じ資料によると、ROEの実績値を開示している企業は6割程度、資本コストについて記述している企業は54.6%、資本コストの実績値まで開示している企業は12.4%どまりです。「うちの資本コストはこれで、ROEはそれを上回っています」と説明できている会社は、まだ少数派だということです。
見るときの注意点
| 見るポイント | ROE | ROA |
|---|---|---|
| 分母 | 自己資本(株主のお金) | 総資産(借金も含む) |
| 借金の影響 | 増やすと上がる | 影響を受けにくい |
| 8%の目安 | あり(伊藤レポート) | 業種差が大きく一律の目安なし |
| 何が分かるか | 株主から見た効率 | 事業そのものの効率 |
- ROEは借金で高く見せられる:上で見たとおり、数式上そうなります。ROAとセットで見れば、借金に頼っていないかが分かります。
- 業種で水準が違う:設備が多い業種はROAが低めなど、業種ごとのクセがあります。同じ業界の会社どうしで比べるのが基本です(→株価が動く理由)。
- 1年だけで判断しない:数年の推移で安定して高いかを見ましょう。割安・割高はPER・PBRもあわせて確認を。
フクリの見方:ROEが高い会社を見たら、まずROAを見る
編集部の立場を書きます。ROEの数字を見たら、いちばん最初にすべきなのはROAとの比較です。
理由は単純で、ROE = ROA × 財務レバレッジだからです。ROEが高い理由は2つしかありません。
- ROAが高い——事業そのものが効率よく稼いでいる。これは強い。
- 財務レバレッジが高い——借金が多い。同じROEでも意味がまったく違います。
借金が悪いわけではありません。低金利で借りて高い収益を上げられるなら合理的です。ただし借金でかさ上げされたROEは、金利が上がったとき、あるいは業績が落ちたときに急速にしぼみます。株主から見た「効率のよさ」が、実は借入への依存だった――というのは、決算を読み慣れないうちは見えません。
具体的な手順としては、こうです。 ROEが15%と聞いて「高い」と思ったら、ROAを確認する。ROAも10%前後あれば事業が強い。ROAが3%しかなければ、差は借金で埋められています。この一手間だけで、見える景色が変わります。
この見方の限界も書いておきます。 銀行など金融業は、預金という形で他人のお金を大量に扱う商売なので、財務レバレッジが構造的に高くなります。この業種にこの見方をそのまま当てはめると誤読します(経産省の資料でも金融業は集計対象から除かれています)。また、ROEもROAも過去の決算にもとづく数字で、これからどうなるかは示しません。将来性は成長株か割安株かという別の軸や、利益が配当にどう回るかとあわせて見る必要があります。
まとめ(3行)
- ROE = ROA × 財務レバレッジ。ROEは借金を増やすだけでも上がるので、必ずROAとセットで見る。
- 「8%」の根拠は伊藤レポート。ROE 8%超で約9割の投資家の資本コストを上回るという調査にもとづく。
- ただしTOPIX500でROE8%以上は45.0%(2022年度)と、9年前からほぼ横ばい。目安は達成されていない。
数字の意味が分かると、決算ニュースがぐっと読みやすくなります。いっしょに学んでいきましょう。
情報源・参考
- 経済産業省「持続的な企業価値向上に関する懇談会」参考資料②(2014年伊藤レポートの提言・推奨と進捗確認/2024年5月7日):meti.go.jp
- 経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ(伊藤レポート)最終報告書」(2014年8月):meti.go.jp
- 日本取引所グループ(JPX):jpx.co.jp
- 日本証券業協会「投資の時間」:jsda.or.jp
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。