村田製作所の株はなぜ高値から6割も下げた? データセンター向けの受注は過去最高、縮んだのは利益に対する株価の高さ

📌 この記事は公開情報(村田製作所の決算短信・決算説明会資料・業績予想の修正のお知らせ、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年11月6日時点のものです。
村田製作所(6981)の株価は、11月5日に1日で16.6%下げてストップ安になり、6日は4,882円でした。6月22日の高値12,250円から60%安です。
村田は、スマートフォンや車、データセンターのサーバーに使う「積層セラミックコンデンサー」の最大手です。10月30日には、データセンター向けの需要が伸びているとして、今期の利益の予想を上げたばかりでした。
11月5日は、米国の中間選挙の結果が出た翌日でした。民主党が上下両院で多数を取り、テキサス州などでは、データセンターの建設を止めると訴えた候補が知事に選ばれています。東京ではこの日、AI関連の株からそれ以外の株にお金が移り、市場全体(TOPIX連動ETF)は0.5%上げました(中間選挙の記事)。
データセンター向けの売上は1年で2.2倍、受注は売上の1.3倍で、会社の計画はまだ崩れていません。縮んだのは、利益に対する株価の高さです。高値では今期の予想利益の約56倍だった株価が、約22倍になりました。2026年の村田の株は、値動きが前の年の約2倍になり、米国の半導体株と一緒に動くAI株として売買されています。議会と知事の選挙で勝った側が訴えたデータセンターの規制は、まだ決まっておらず、動き始めるのは早くても1月です。データセンター向けの通期予想4,250億円は、2月上旬の決算で据え置かれると見ています。
予想を上げた6日後にストップ安、縮んだのは利益に対する株価の高さ
村田の株価は、2月の安値から4か月半で約4倍になり、6月22日の高値から60%下げました。11月5日の下げは、市場を差し引いた1日の下げとして、この10年でいちばん大きいものです。
10月30日の14時に、村田は上期の決算と、今期(2027年3月期)の予想の引き上げを出しました。売上の予想は2兆1,100億円から2兆2,600億円へ、営業利益は4,300億円から5,200億円へ上げています。理由は「データセンター関連需要のさらなる高まり」です。それでもこの日の終値は7.7%安でした。株探によると、発表の前から下げていました。
11月5日は、前の日の終値6,032円から、値幅の下限の1,000円安い5,032円で取引を終えました。株探(フィスコ)は「AI関連の主力処は大幅安」と書いています。市場全体(TOPIX連動ETF)は0.5%高で、市場を差し引いた下げは17.1ポイントでした。普段の動きの8.8倍です。前の晩の米国では、半導体株の指数が3.1%下げていましたが、村田の下げはそれよりずっと大きいものでした。翌6日は日経平均が6.0%下げた日で、村田は3.0%安でした(帝人の記事)。
選挙で決まったこと、まだ決まっていないこと
議会と知事の選挙で勝った側が訴えたデータセンターの建設の停止は、まだ決まっていません。新しい議会も新しい知事も、動き始めるのは1月からです。
5日の晩の米国では、半導体株の指数が12.2%下げました。ロイターは、クアルコムの決算が予想に届かなかったことと、民主党が議会を握るとAIの設備への投資が遅れるとの懸念を挙げています。テキサス州とジョージア州で、データセンターの拡大に反対した候補が勝ったことも挙げています。
- 連邦:民主党は1月から上下両院で多数になる見込みです(米CBSの予測)。データセンターの新しい建設を止める法案には20人の議員が名を連ね、データセンターに自前の電力を用意させる法案もあります。ただ、法律にするには大統領の署名が要ります。トランプ大統領(任期は2029年1月まで)は、建設を止めることに反対しています。民主党の議席は、大統領の拒否を覆せる数に届きません。
- テキサス州:次の知事のヒノホサ氏(1月19日就任)は、州議会が法律をつくるまで、データセンターの新しい許可を止めると約束しています。ただテキサス州では、選挙の前の8月から、共和党のアボット知事のもとで、データセンターの環境の許可と送電網への接続がすでに止まっています(テキサス・トリビューン)。
- ジョージア州・オハイオ州:次の知事は、州全体での新しい建設の一時停止(ジョージア州)や、電気代を開発業者が負担しない限りの停止(オハイオ州)を訴えていました。知事だけでは決められず、州議会の承認が要るものもあります(フォーチュン)。
- 市や郡:10州の41件の住民投票で、1件を除いて、データセンターの建設を制限する側が勝ちました(CNBC)。どれも州全体ではなく、市や郡の投票です。
- 大手IT企業:グーグルの親会社のアルファベットは7月の決算で、2027年の設備投資を「大幅に増やす」と説明していました(ロイター)。10月28日の決算の発表文には、2027年の設備投資の話はありません。
新しい議会や知事が動き始めるのは、村田の2月の決算が映す10〜12月より後です。テキサス州で8月から停止が続くなかでも、村田の7〜9月の受注は売上の1.28倍ありました。
株価を、今期の1株あたりの利益の予想で割った値は、株価が利益の何年分かを示す目安です。10月の予想218.80円で割ると、6月22日の高値は約56倍、11月6日は約22倍です。その間に、予想そのものは7月の185.68円から18%上がりました。株価が下げたのは、利益の見通しが下がったからではなく、同じ利益に対して払われる値段が下がったためです。ただ、この値の高い低いだけで、割高・割安は決められません。
2026年の村田の株は、値動きの大きさも変わりました。1年の値動きの大きさの目安は、2017〜2025年は23〜42%でしたが、2026年は81%です。市場全体が1%動くと、村田は2026年に平均で2.0%動きました(2025年は1.4%)。市場を差し引いた週ごとの動きは、米国の半導体株の指数と一緒に動く傾向が強まっています(相関は直近1年で+0.36、5年で+0.27)。
データセンター向けは1年で2.2倍、受注は売上の1.3倍
村田の売上のうち、データセンター関連は上期(4〜9月)に1,649億円で、全体の15%でした。7〜9月は952億円で、前の年の同じ時期の2.2倍です。受注は3四半期続けて、売上の1.2倍を超えています。
データセンター関連は、AIのサーバーなどに使うコンデンサーや電源のモジュール、電池です(会社の説明)。会社は通期の予想を3,706億円から4,250億円に上げました。上期の1,649億円を引くと、下期は2,601億円です。3か月あたり約1,300億円で、7〜9月の952億円から約37%の伸びが要ります。これまでの3か月ごとの伸びは、+10〜+37%でした。
受注高を売上で割った値は、1を超えると、まだ納めていない注文が増えていることを示します。2023年7〜9月から2025年10〜12月までは0.92〜1.07でしたが、2026年に入ると1.24、1.34、1.28です。7〜9月の全社の受注高は過去最高でした。ただ会社は、「長納期案件の増加に加え、一部用途での前倒し受注の懸念など引き続き動向に注視していく」とも書いています。
電子部品の大手は、そろって6〜7月の高値から下げた
同じコンデンサーをつくる太陽誘電は7月1日の高値から71%、TDKは6月5日から49%、京セラは7月3日から28%下げています。11月5日には、太陽誘電も13.5%下げました。
| 会社 | 上場 | この記事での位置 |
|---|---|---|
| 村田製作所 | 東証プライム(6981) | 積層セラミックコンデンサーの最大手。データセンター関連は上期の売上の15% |
| 太陽誘電 | 東証プライム(6976) | 積層セラミックコンデンサーの大手。11月5日は13.5%安 |
| TDK | 東証プライム(6762) | コンデンサー・電池・センサー。11月5日は8.1%安 |
| 京セラ | 東証プライム(6971) | 子会社でコンデンサーをつくる。11月5日は2.1%安 |
| サムスン電機 | 韓国 | 積層セラミックコンデンサーの大手。日本の取引所には上場していない |
村田が市場より普段の3倍以上下げた日は、この10年で23回あり、うち17回が2026年です。そのあと20営業日で市場を上回ったのは、分かる20回のうち8回でした。大きく下げたあとに、決まった向きはありません。
次は2月上旬の第3四半期決算
村田自身の材料で株価が動きそうなのは、2月上旬の第3四半期決算です(前年は2月2日)。それまでは、米国の半導体株と一緒に動く株と見ておく必要があります。
6日の米国の半導体株の上げ(+4.2%)のあと
前の晩の米国の動きは、東京の寄り付きで値段に入る
テキサス州の新しい知事が就任
データセンターの新しい許可を止めると約束している
第3四半期の決算(前年は2月2日)
- 10〜12月のデータセンター関連の売上
- 通期予想4,250億円の扱い
- 受注÷売上が1を超えたままか
会社の為替の前提は、1ドル155円です。1円の円高で、営業利益は年に約45億円減ります(会社の示した目安)。
予想:データセンター向けの通期予想4,250億円は据え置き
2月上旬の第3四半期決算で、村田はデータセンター関連の通期予想4,250億円を据え置くと見ています。
理由は2つあります。1つめは受注です。3四半期続けて売上の1.2倍を超え、7〜9月の全社の受注高は過去最高でした。予想を下げる理由は、今のところ数字に出ていません。2つめは計画の置き方です。上期の1,649億円は通期予想の39%で、前の年の上期(通期の実績の44%)より下期に寄せた計画です。もう一度上げるには、10〜12月だけで約1,300億円を大きく超える必要があります。
上に外れるのは、AIのサーバーの注文がさらに増え、10〜12月だけで約1,300億円を大きく超える場合です。
下に外れるのは、会社自身が書いている前倒しの受注の反動が出る場合や、米国の大手IT企業がデータセンターへの投資を減らす場合です。
で、儲かるのか
村田の株価が高値から6割下げたのは、データセンター向けの稼ぎが崩れたからではありません。データセンター向けの売上は1年で2.2倍、受注は売上の1.3倍です。縮んだのは利益に対する株価の高さで、約56倍から約22倍になりました。データセンター向けの通期予想4,250億円は、2月上旬の決算で据え置かれると見ています
外れるのは、前倒しの受注の反動が出るときです。村田の株の値動きは前の年の約2倍で、2月の決算までは米国の半導体株と一緒に動く株として見ておく必要があります。
11月6日の終値
=4,882円7〜9月の売上は前の年の
↑2.2倍高値の約56倍から
↓約22倍情報源
- 村田製作所「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年10月30日)
- 村田製作所「2026年度第2四半期決算説明会資料」(2026年10月30日)=用途別売上収益(データセンター関連の上期1,649億円・全体の15.1%・3か月ごとの385〜952億円)、用途別売上予想(通期4,250億円・7月の予想3,706億円・下期2,601億円)、受注÷売上(BBレシオ)、「長納期案件の増加に加え、一部用途での前倒し受注の懸念など引き続き動向に注視していく」、7〜9月の全社の受注高は過去最高、為替の感応度(1円で営業利益約45億円)
- 村田製作所「通期連結業績予想数値の修正に関するお知らせ」(2026年10月30日)=売上2兆1,100億円→2兆2,600億円、営業利益4,300億円→5,200億円、1株当たり当期利益185.68円→218.80円、理由「データセンター関連需要のさらなる高まり」、為替の前提1ドル155円
- 株探「村田製は後場下げ幅縮小、データセンター需要や円安効果で通期業績予想を上方修正」(2026年10月30日)、フィスコ「前日に動いた銘柄」(2026年11月6日)=11月5日の5,032円・1,000円安「AI関連の主力処は大幅安」
- 株探の月足=取引中の安値2,821円(2026年2月2日)・高値12,895円(2026年6月22日)
- EE Times Japan「村田製が通期上方修正 データセンター向け売上高倍増」(2026年11月2日)
- 株探「明日の株式相場に向けて=「ブルーウェーブ」が引き起こした原油急落巡る幻想と現実」(2026年11月5日)=東京ではAI関連株から非AI関連株への資金シフト、データセンター向けMLCCの成長期待が膨らんでいた村田製作所がストップ安
- ロイター(Chibuike Oguh)「Deep chip selloff drags global stocks lower on AI spending concerns」(2026年11月5日・米国時間)=フィラデルフィア半導体株指数−12.2%、クアルコムの決算、民主党が議会を握るとAIの設備への投資が遅れるとの懸念、テキサス州とジョージア州でデータセンターの拡大に反対した候補の勝利
- Fox Business(2026年11月5日)=「AIの設備の建設は遅く、高くつくと市場は受け止めた」(eToroのアナリスト)、具体的な法案の名前は出ていない
- 米CBS(2026年11月4日)=民主党が上下両院で多数を取る見込み
- Yahoo News「Democrats Eye Tougher Data Center Regulations as They Regain Control of Congress」(2026年11月4日)=データセンターの建設を止める法案(下院・20人が名を連ねる)、データセンターに自前の電力を求める法案(上院)、民主党の議席は大統領の拒否を覆せる数に届かない、トランプ大統領は建設を止めることに反対
- テキサス・トリビューン「Gina Hinojosa won the governor’s race. What happens to Texas data centers now?」(2026年11月4日)=州議会が法律をつくるまでデータセンターの許可を止める約束、1月19日に就任、8月からアボット知事のもとで環境の許可と送電網への接続が止まっている
- フォーチュン(2026年11月4日)=テキサス州・ジョージア州・オハイオ州の次の知事のデータセンターについての主張、州議会の承認が要るものもある
- CNBC「Voters rebuff data centers in every ballot measure except one during the 2026 midterms」(2026年11月4日)=10州の41件の市や郡の住民投票(オハイオ州が21件)、データセンターの側が勝ったのはノースダコタ州ハーウッドの1件
- アルファベット「Alphabet Announces Third Quarter 2026 Results」(2026年10月28日)=7〜9月の設備投資513.55億ドル、2027年の設備投資の記載なし/ロイター(2026年7月22日)=2027年の設備投資を「大幅に増やす」との説明
- 前の年の第3四半期決算の発表日=EE Times Japan(2026年2月3日)=2026年2月2日
- 株価・指数:Yahoo Financeの日々の終値(村田製作所・太陽誘電・TDK・京セラ・TOPIX連動ETF〔1308〕・日経平均・米国の半導体株の指数〔フィラデルフィア半導体株指数〕)。値動きの大きさ=日々の騰落率の標準偏差×√252、市場に対する動き=TOPIX連動ETFに対する日々のベータ、米国の半導体株との相関=市場を差し引いた週ごとの動き(1年・5年)
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。