ムラキの株価はなぜTOB価格3,000円より4割近く安い? イクヨが買うのは半分まで、始まるかもまだ決まっていない

📌 この記事は公開情報(イクヨとムラキの適時開示、ムラキの株主総会招集通知、大量保有報告書、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年11月2日時点のものです。
🔄 2026年11月6日に更新しました。 ムラキは11月5日に、臨時株主総会の招集通知を出しました(記事では6日としていましたが、1日早く出ています)。議案は、会社が出した取締役2名の選任だけです。会社は、ストライダーズとの資本業務提携を進めるための増員と説明しています。候補の村瀬晶久氏はストライダーズの社外取締役で、ムラキの株を12.25%持つストライダーズの子会社(倉敷ロイヤルアートホテル、いまの社名はGalaxyRiders)の監査役でもあります。もう1人の平山茂氏は、航空業界での経験が長い人です。招集通知には、イクヨのTOBへの意見や、買収への対抗策の議案はありません。総会は11月27日で、議決権の行使の期限は26日の午後6時です。
自動車部品のイクヨ(7273)は10月26日、カー用品の卸のムラキ(7477)の株を、1株3,000円のTOB(株式の公開買い付け)で買う予定だと発表しました。発表の前の日の終値1,458円の約2倍です。
ムラキの株価は2日続けてストップ高になりましたが、そのあと下げ、11月2日の終値は1,901円でした。3,000円で買ってもらえるなら、なぜ株価はそこまで上がらないのでしょうか。
理由は2つあります。イクヨが買うのは議決権の半分までなので、応募しても3,000円で売れるのは持ち株の4〜7割だけです。しかもTOBを始める条件は、ムラキが買収防衛策を使わないと決めることで、始まるかはまだ決まっていません。2つを差し引くと、1,901円は「TOBが行われる見込みは4〜7割」と見た値段になります。
3,000円で売れるのは、応募した株の4〜7割だけ
イクヨが買う株数には上限があり、応募がそれを超えると、全員の株を同じ割合で減らして買います。ほかの株主がみな応じれば、3,000円で売れるのは応募した株の約4割です。
イクヨはすでにムラキ株の17.01%を持っています。TOBで買うのは、それと合わせて議決権の半分を少し超える50.10%までで、株数にすると48万6,300株が上限です。
応募が上限を超えると、応募した株数に比例して買う株を割り振ります。これを按分(あんぶん)といい、買ってもらえなかった株は持ち主に戻ります。
ほかの株主が全員応じると、応募は121万9,700株です。そのうち買ってもらえるのは約4割で、残りの約6割は手元に戻ります。
ただ、全員が応じるとは限りません。ムラキは9月に、ストライダーズ(9816)と資本業務提携を結びました。その子会社の倉敷ロイヤルアートホテルが、2位の株主だったドリーム・ワークスから12.25%を買っています。
提携先と社員持株会、取引先持株会、社員向けの株式給付信託が応じなければ、応募は約79万株に減ります。この場合、買ってもらえる割合は約6割に上がります。創業家の村木ミチ氏(7.64%)も応じなければ約7割です。
株価1,901円は「行われる見込み4〜7割」の値段
応募した株の4割を3,000円で売り、戻った6割が発表の前の1,458円に戻るとすると、1株の値打ちは2,073円です。株価はこの値打ちの手前で止まっています。
| 応じる株主(売れる割合) | 値打ち | 見込み |
|---|---|---|
| 全員(約40%) | 2,073円 | 約72% |
| ムラキ側を除く(約61%) | 2,404円 | 約47% |
| 創業家も除く(約71%) | 2,560円 | 約40% |
全員はイクヨ以外の全員です。ムラキ側は、提携先・社員持株会・取引先持株会・社員向けの信託を指します。かっこの中は応募した株のうち3,000円で買ってもらえる割合、値打ちはTOBが行われたときの1株の値打ち、見込みは株価1,901円が示す、TOBが行われる見込みです。
1株の値打ちは、買ってもらえる割合に3,000円を掛け、戻った株を発表の前の終値1,458円で数えて足したものです。
見込みは、株価が発表の前の1,458円からどれだけ上に来ているかを、値打ちまでの幅で割って出しました。TOBが取りやめになれば株価は1,458円に戻り、行われれば値打ちまで上がる、という前提です。
1,458円は、イクヨが株を買い始める前の1月中旬の株価(1,424〜1,451円)とほぼ同じ水準です。戻った株が1株あたり純資産の1,886円で落ち着くとしても、見込みは36〜51%になります。
イクヨは「純投資」で買い、2か月半後に取締役の過半数を求めた
イクヨがTOBを始める条件の1つ目は、ムラキが防衛策をやめるか、使わないと決めることです。ムラキは9月に、イクヨと投資会社が一緒に動いたと認め、防衛策を使う可能性があると公表しています。
イクヨは1月に、投資事業組合からムラキ株の17.01%を1株2,400円で買いました。大量保有報告書の目的は「純投資」で、経営への関与は目的としないと書いています。
それから2か月半後の4月3日、イクヨはムラキとの面談で、取締役の過半数をイクヨ側にする案を求めました。4月下旬には、イクヨと投資会社のBlue Goats Capitalが、役員の選任と防衛策の廃止を求める提案を続けて出しています。
ムラキの独立委員会は、2つの提案に同じ誤記まであったことなどから、2社が一緒に動いたと判断しました。2社の持ち分は合わせて最大24.02%で、ムラキの防衛策が手続きを求める20%を超えています。
ムラキは9月24日に、2社の共同協調行為を認定しました。防衛策の中身は新株予約権の無償割当てで、ムラキは「行う可能性がある」としています。これは、買収者以外の株主に新しい株を受け取る権利を配り、買収者の持ち分の割合を下げる手です。
TOBを始める条件の1つ目(ムラキが防衛策を使わないこと)は、イクヨが自分で外すこともできます。ただ、防衛策の手続きを守るとして、すぐには始めないと書いています。
ムラキは防衛のため、4〜9月に「買収対応関連費用」7,560万円を特別損失に計上しました。その結果、上期の純利益は100万円まで減りました。前の年の上期は4,200万円です。
買い手のイクヨの株価は、この1年で半分になりました。イクヨは6月末に現預金を44.7億円持っており、TOBの代金14.6億円は自己資金でまかなうとしています。
| 会社 | 上場 | この記事での位置 |
|---|---|---|
| ムラキ | 東証スタンダード(7477) | TOBを受ける側。株主は561名。11月27日に臨時株主総会 |
| イクヨ | 東証スタンダード(7273) | TOBをかける側。ムラキ株の17.01%を持つ筆頭株主 |
| ストライダーズ | 東証スタンダード(9816) | ムラキの提携先。子会社の倉敷ロイヤルアートホテルが12.25%を持つ |
次は11月6日の参考書類と、11月27日の臨時株主総会
11月27日の臨時株主総会では、取締役2名を選びます。どちら側の候補なのかは、11月6日に出る参考書類で分かります。TOBの開始はどれだけ早くても2027年4月下旬が目安です。
臨時株主総会の参考書類
会社の案の2名。TOBへの意見・対抗策の議案はなし
ムラキの臨時株主総会
議案は取締役2名の選任。議決権は10月13日の株主名簿で決まる
イクヨがTOBを始める目安
防衛策の手続き(最長180日)が終わるころ。期間は30営業日の予定
条件がそろわなければ、提案を取り下げる
イクヨが条件を外して始めると決めない限り
ムラキの防衛策では、買収する側が情報を出す期間が最長60日、ムラキの取締役会が検討する期間が最長120日あります。イクヨはこの合計180日を待つとして、TOBの開始の目安を2027年4月下旬に置きました。
TOBが始まって3,000円を受け取れるのは、早くても2027年6月ごろになります。その間に条件が変われば、値段が見直されることもあると、イクヨ自身が書いています。
予想:11月27日まで、株価は2,073円を超えない
11月27日の臨時株主総会の日まで、ムラキの終値は、全員が応じたときの値打ち2,073円を超えないと見ています。
新しい材料が出ない
→2,073円の手前にとどまる
ムラキが賛成・防衛策を使わない
↑2,400円台へ近づく
イクヨが提案を取り下げる
↓発表前の1,458円へ
ストップ高をつけた10月27日の終値2,158円は、値打ちを上回りました。ただ翌日には1,975円まで下げ、11月2日までの4日間は1,900〜1,975円の間です。
ムラキ株は、これまでも支配権のニュースで跳ねては戻ってきました。1月20日はイクヨが株を買ったと伝わってストップ高になり、4月には2,424円まで上げたあと、1週間で1,704円まで下げています。
上に外れるのは、ムラキの取締役会がTOBに賛成するか、防衛策を使わないと決めたときです。そのときは、ムラキ側の株主が応じない場合の値打ち(2,404円)に近づくと見ています。
で、儲かるのか
ムラキ株は「3,000円で買い取られる株」ではありません。TOBが行われても1株の値打ちは2,073〜2,560円で、しかも始まるかが決まっていません。TOBが行われる見込みは、株価が示す4〜7割より低いと見ています
イクヨが買うのは議決権の半分までで、応募した株の4〜7割しか3,000円になりません。TOBが始まるには、ムラキが防衛策をやめるか使わないと決める必要がありますが、ムラキは逆の方向に動いてきました。2社の共同協調行為を認定し、提携先に12.25%を持ってもらい、上期の経常利益1億500万円の7割にあたる7,560万円を防衛に使いました。イクヨは防衛策の手続きを守るとしていて、開始の目安は2027年4月下旬です。見るのは11月6日の参考書類と、11月27日の総会でどちらの側の取締役が選ばれるかです。
上限は48万6,300株
÷応募の4〜7割
TOBが行われれば
=2,073〜2,560円
ムラキが防衛策を使わない
?早くて2027年4月下旬
情報源
- イクヨ「ムラキ株式会社(証券コード:7477)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」(2026年10月26日)=1株3,000円(10月23日の終値1,458円に対し105.76%の上乗せ)、上限48万6,300株・下限なし・買付け後50.10%、買付代金14億5,890万円、前提条件①〜⑥(放棄できるのは①②④⑤)、開始の目安2027年4月下旬、2027年5月31日までに条件がそろわなければ取り下げ、按分、6月30日の現預金44億7,300万円・最大20億円を充当
- ムラキ「株式会社イクヨによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」(2026年10月26日)、「当社独立委員会に対する諮問に関するお知らせ」「臨時株主総会招集に関するお知らせ」「特別損失の計上並びに第2四半期(中間期)連結業績予想との差異および通期連結業績予想、期末配当予想に関するお知らせ」(2026年10月29日)=11月27日の臨時株主総会・取締役2名の選任・参考書類は11月6日から、買収対応関連費用7,560万2,000円、上期の純利益100万円(前年同期4,200万円)
- ムラキ「当社株式の大量買付行為への対応方針に関する株式会社イクヨおよびBlue Goats Capital株式会社による共同協調行為等の認定についてのお知らせ」(2026年9月24日)=4月3日の面談、4月21日・23日の提案、共通の誤記、持ち分の合計21.77%〜最大24.02%、新株予約権の無償割当てを行う可能性
- ムラキ「主要株主の異動(予定)に関するお知らせ」(2026年9月15日)=倉敷ロイヤルアートホテルがドリーム・ワークスから18万株(12.25%)を取得
- ムラキ「第68回定時株主総会招集通知及び株主総会資料」(2026年5月27日)=2026年3月31日の大株主・株主数561名
- イクヨ「大量保有報告書」(2026年1月23日提出・EDINET)=1月19日に25万株を1株2,400円で市場外で取得、保有の目的は純投資
- Blue Goats Capital「ムラキ株式会社株式に関する当社保有方針の見直しを決定」(2026年7月4日・PR TIMES)
- 株探:ムラキの銘柄ニュース(2026年1月20日「ムラキがS高、イクヨが株式を取得し筆頭株主へ」、10月26日・27日のストップ高)
- 株価:Yahoo Financeの日々の終値。1株あたり純資産1,885.67円はイクヨの開示(ムラキの2026年3月期の単体の貸借対照表)による
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