価格.comの利用者が2割減ったのに、カカクコムの買収の値段はなぜ上がる? 買い手が欲しいのは食べログの予約

📌 この記事は公開情報(カカクコムの決算短信・公開買付けに関する開示、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買や公開買付けへの応募を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月30日時点のものです。
🔄 2026年11月4日に更新しました。 カカクコムの中間決算で、2026年9月度の価格.comの月間利用者は2,946万人でした。前の年の3,172万人より7.1%少ない数です。「1割以上少ない(2,855万人を下回る)」という予想は外れです。6月度の−20.7%から、減りは小さくなりました。食べログの9月度の利用者は9,153万人で、前の年の9,673万人より5.4%少ない数です。4〜9月の事業の利益は、価格.comが56.2億円で前の年より8.5%減り、食べログは129.0億円で18.8%増えました。食べログの利益は、価格.comの2.3倍です。会社は通期の業績予想を変えていません。11月4日の株価は3,730円で、TOPIX連動ETFとの差は+0.3ポイントでした。「4.8ポイントを超えては動かない」という予想どおりです。決算の発表は12時で、日程表の時刻を直しました。
グーグルの検索結果にAIの答えが出るようになって、検索から人が集まるサイトは苦しくなる、と言われます。
価格.comは、その代表のようなサイトです。月間の利用者は、2026年6月度に前の年より2割減りました。
それなのに、価格.comを運営するカカクコムを買おうとする2つの買い手は、値段を上げ合っています。
減ったのは、比べたあとにお客をよそのお店へ送り出す価格.comです。その場で予約まで済ませる食べログは予約が2割増え、事業の利益の約6割を稼いでいます。買い手が値段をつけているのは食べログで、カカクコムの株価はいま、利用者の数ではなく買収の値段で動いています。
価格.comの利用者は、2025年6月から前の年を1割以上下回っている
価格.comの月間の利用者は、2025年6月度から5回続けて、前の年より1割以上少なくなりました。
価格.comは、家電や保険、ネット回線などの値段や評判を比べるサイトです。利用者は比べたあと、よそのお店や会社のサイトへ移って、買ったり申し込んだりします。カカクコムは、主に送り出した先から手数料を受け取ります。
グーグルが日本で、検索結果のいちばん上にAIの答え(「AIによる概要」)を出し始めたのは2024年8月です。ただ、すぐに大きく減ったわけではありません。2024年12月度は4%減で、2025年3月度は前の年とほぼ同じでした。
減りが大きくなったのは、2025年6月度からです。2026年6月度の利用者は2,688万人で、前の年より21%少なくなりました。
カカクコムは決算短信に、利用者が減った理由を書いていません。利用者の数え方の注記は、2023年から変わっていません。
ただし、買収の手続きの開示では、はっきり書いています。買収が株主のためになるかを確かめる特別委員会の聞き取りに、カカクコムは、価格.comにとって「生成AIの台頭による検索行動の変化」が「最大の懸念事項かつ課題」だと答えました(5月12日の開示)。
売上は、利用者ほどには減っていません。4〜6月の価格.comの売上は前の年より5%減で、会社はクレジットカードやローンの紹介が減ったためと説明しています。
食べログは利用者が減っても、予約が2割増えた
同じカカクコムの中でも、食べログは予約が2割増え、事業の利益の約6割を稼いでいます。
食べログも、2026年6月度の利用者は前の年より4%減りました。それでも、4〜6月にネットで予約した人は前の年より24%増えています。
違いは、利用者が最後にどこで動くかです。食べログでは、お店を探した人が、そのまま予約まで済ませます。お店は、予約の人数に応じた料金や月々の料金を食べログに払います。
価格.comでは、比べ終わった人はよそのお店へ移ります。最後の買い物の多くは、価格.comの外で起きます。
求人ボックスは、仕事を探すサイトです。利用者は32%増えました。会社は、広告に力を入れた効果だと説明しています。
事業ごとの利益(セグメント利益)を見ると、稼ぎ頭は食べログです。2026年3月期は222億円で、前の年より23%増えました。
求人ボックスは、成長のための投資を増やして赤字になりました。
4〜6月は差が開きました。価格.comの利益は前の年より減り、食べログは2割増えています。
買い手は値段を上げ続け、株価はその少し上で動いている
2つの買い手は、価格.comの利用者が減るなかで値段を上げ合っています。カカクコムの株価は、いまは利用者の数ではなく、買い手の値段で動いています。
TOB(株式公開買付け)は、買う期間と値段を示して、市場の外で株を買い集めるやり方です。
5月12日、欧州の投資会社EQTのグループが、1株3,000円でカカクコムのTOBを始めると発表しました。報道の前の株価より41%高い値段です(ほかのTOBとの比べは小林製薬のTOBの記事にあります)。カカクコムの取締役会は賛成しました(いまは、応募するかは株主の判断に任せる立場です)。株を買い集めたあとは、上場をやめる計画です。
7月には、米国の投資会社ベインキャピタルとLINEヤフーが組んで、より高い値段を示しました。ここから値段の上げ合いが始まります。
EQT側は値段を7回上げ、10月28日に3,683円にしました。最近の引き上げは1円ずつです。値段を変えるとTOBの期限が延び、10月28日の変更で11月12日までになりました。
ベイン側は、10月26日に3,700円を示しました。大株主のKDDIとの間で「TOBには応じない」という約束ができれば、3,720円を払うとしています。ベイン側のTOBは予告の段階で、まだ始まっていません。
株価は、5月13日から一度も、終値で買い手の値段を下回っていません。買い手どうしがもっと値段を上げる、と市場が見てきたことを示しています。
2つの買い手が狙いに挙げているのは、検索に頼らない稼ぎ方です。EQT側は、AIで値段を比べるのが簡単になると検索から来る客が減るおそれがあるとして、「AIに代替されない」強い場にすると説明しています(5月12日の開示)。
LINEヤフーの坂上亮介CFO(最高財務責任者)は8月の決算発表で、食べログの予約、価格.comでの購入、求人ボックスへの応募のように、成約した時点で課金する事業ができると話しました。食べログとの連携は「最も大事なドメイン」とも述べています(インプレスの報道)。
買収の話が出るまで、カカクコムの株価はTOPIXに大きく負けていました。2024年8月15日から、買収の報道の前日(2026年4月22日)までに5%下げています。
同じ間に、TOPIX連動ETFは47%上げました。
4月23日、ロイターが「EQTが買収を検討している」と報じると、株価は1日に動ける上限いっぱいまで上げました。
グーグルのAIの節目の日には、株価は大きく動いていません。「AIによる概要」を始めた2024年8月16日も、「AIモード」の日本語版を始めた2025年9月9日も、カカクコムの値動きは普段の振れ幅の内でした。普段の振れ幅とは、市場全体との差が1日にどれくらい開くかの、ふだんの大きさです。
決算の日も、買収が始まってからは大きく動かなくなりました。2023年11月から2026年5月までの11回の決算の日のうち、7回は普段の2倍を超えて動いています。
買収が始まったあとの8月5日の決算の日は、市場との差が2.2ポイントにとどまりました。
| 会社 | 上場 | この記事での位置 |
|---|---|---|
| カカクコム | 東証プライム(2371) | 価格.com・食べログ・求人ボックスを運営。11月4日に中間決算 |
| LINEヤフー | 東証プライム(4689) | ベインキャピタルと組んで買収を提案。検索サービス「Yahoo! JAPAN」も運営する |
| KDDI | 東証プライム(9433) | カカクコムの大株主。EQT側のTOBには応じない約束をしている |
| デジタルガレージ | 東証プライム(4819) | カカクコムの筆頭株主。EQT側の買い手の親会社に2割出資する予定 |
| EQT | ナスダック・ストックホルム | スウェーデンの投資会社。買い手はEQTが運用するファンド。日本の取引所には上場していません |
| ベインキャピタル | 上場していません | 米国の投資会社。個人は株を買えません |
EQTの株価は、カカクコム以外の多くの投資先の成績で動くので、図には入れていません。
次は11月4日の決算と、11月12日の買収の期限
11月4日にカカクコムの中間決算があり、11月12日にEQT側のTOBの期限が来ます。
カカクコムの中間決算(12時)
2026年9月度の価格.comと食べログの利用者、食べログのネット予約、価格.comの売上と利益
EQT側のTOBの期限
応募が集まって成立するか。もう一度値段を変えれば、期限はさらに延びる
ベインキャピタルとLINEヤフー側のTOB
予告のまま、始まっていない。始まるかどうかは決まっていない
予想:9月度の価格.comの利用者は、前の年より1割以上少ない
11月4日の決算で出る2026年9月度の価格.comの利用者は、前の年の3,172万人より1割以上少ないと見ています。
根拠は、冒頭の図の直近5回です。どれも1割以上減り、直近の2回は2割を超えました。
1割以上少ないとは、2,855万人を下回ることです。
あわせて、11月4日のカカクコムの株価は、買収の前の普段の2倍を超えては動かないと見ています。値段は、利用者の数ではなく、買い手の値段で決まっているからです。
買収の報道の前の普段の振れ幅は、1日あたり2.4%でした。外れるのは、11月4日の株価が、TOPIX連動ETFとの差で4.8ポイントを超えて動いたときです。
買収が始まってから10月30日までで、市場との差がいちばん開いた日でも4.2ポイントでした。
で、儲かるのか
AI検索の時代に人が減っているのは、比べてよそのお店へ送り出す価格.comです。その場で予約まで済ませる食べログは、予約が増えています。買い手が値段をつけているのは、利益の約6割を稼ぐ食べログの予約です
価格.comの利用者は2025年6月度から前の年を1割以上下回り、カカクコム自身も、生成AIによる検索の変化を価格.comの最大の懸念に挙げました。それでも買い手は値段を上げ続け、株価はいま、利用者の数ではなく買収の値段で動いています。検索から人が来る会社の株を見るときは、利用者の数より、その場で予約・応募・購入まで済ませる人の数を見ます。
価格.comの利用者(6月度)
↓前の年より−21%
食べログのネット予約(4〜6月)
↑前の年より+24%
買収が始まってからの決算の日(8月5日)
→市場との差2.2ポイント
情報源
- カカクコム:決算短信(2024年3月期〜2027年3月期第1四半期)=価格.com・食べログ・求人ボックスの月間利用者数、事業ごとの売上とセグメント利益、食べログのネット予約人数。月間利用者数は各四半期の最後の月の値。2026年3月期 決算説明資料(2026年5月8日)
- カカクコム「Kamgras 1株式会社による当社株券等に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」(2026年5月12日)=特別委員会への説明(生成AIの台頭による検索行動の変化)、EQT側の施策(AIに代替されない場)、1株3,000円
- TOBの値段:Kamgras 1「株式会社カカクコム(証券コード:2371)の株券等に対する公開買付けの買付条件等の変更に関するお知らせ」(2026年7月17日・8月13日・8月27日・9月10日・9月29日・10月14日・10月28日)、カカクコム「BCPE Blitz Cayman, L.P.による当社株券等に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」(7月30日)とその変更(9月17日・10月27日)
- LINEヤフーの発言:Impress Watch「AI時代の「課金」成長に必要 LINEヤフーがカカクコム買収を狙う理由」(2026年8月6日)
- 4月23日の報道:ビジネス+IT(2026年4月23日)=ロイターの報道、株価は値幅制限いっぱいの2,621円
- グーグル:Google Japan Blog「AI による概要:ウェブにつながる新しい方法」(2024年8月16日)、「AIモード」の日本語での提供開始(2025年9月9日・Web担当者Forum)
- 株価:Yahoo Financeの日々の終値。普段の振れ幅=前の250営業日の、TOPIX連動ETF(1308)との差の標準偏差
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