IT株はなぜ下がった? AIの不安で一斉に売られ、売上が伸びた会社から戻った

📌 この記事は公開情報(各社の決算、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月28日時点のものです。
システム開発やソフトウェアの会社の株が、10月に大きく上げています。ベイカレントは決算と新しい中期計画を受けてストップ高になり、オービックも業績の予想を引き上げた翌日に上げました。
こうしたIT株は、今年の前半に大きく売られていました。「AIがITの仕事を奪う」という見方が広がったためです。
IT株を一斉に売らせたのは、前の晩の米国のIT株の急落でした。売られている間も売上は伸びていて、戻るときは売上の伸びが大きい会社から戻っています。
一斉に売られた日は、前の晩に米国のIT株が急落していた
日本のIT株91社の真ん中は、6月までにTOPIXより3割余り下げました。そろって大きく下げた日の多くは、前の晩に米国のIT株が急落した日です。
数えたのは、東証の情報・通信業とサービス業のうち、システム開発・ITコンサル・ソフトウェア・セキュリティの91社です。受託開発・SI・コンサルの会社が53社、パッケージソフト・SaaS・セキュリティの会社が38社で、通信・放送・ゲーム・ネット通販の会社は入れていません。
いちばん大きく下げたのは2月4日で、91社のほぼすべてがTOPIXより下げました。前の晩の米国では、アクセンチュアとコグニザントがそれぞれ約9%下げています。Anthropicが企業向けのAIエージェント「Claude Cowork」に、仕事の流れを丸ごと自動にする機能を足した直後でした。
2月23日の夜には、AnthropicがAIで古い基幹システム(COBOL)の作り直しを早められると書き、IBMの株が13.2%下げました。日本のIT株は、翌日にまたそろって下げています。
1年の営業日をすべて並べると、米国のITサービス株がS&P500より3ポイント超下げた夜は26回あり、翌日に日本のIT株の真ん中がTOPIXより下げたのは25回でした。米国で3ポイント超上げた夜の翌日は、日本もほとんどの日で上げています。
前の晩の米国の動きは東京の取引が始まる前に分かりますが、寄り付きの値段にすぐ入るので、先回りの材料にはなりません。同じ形は、電線株の下げを米国の光部品株で分けた記事でも数えています。
戻ったのは、売上が伸び続けた会社だった
下げるときは売上に関係なく一斉に売られ、戻るときは売上の伸びが大きい会社から戻りました。
売上の伸びの上位3分の1は、前年より13%以上売上が伸びていた会社です。それでも2月までの下げは、ほかの会社と同じか、むしろ大きくなっています。売られた理由が、それぞれの会社の売上ではなかったということです。
2月末からの戻りでは、はっきり分かれました。売上の伸びの下位3分の1は、2月末からほとんど戻っていません。
受託開発・SIの会社でも、パッケージソフト・SaaSの会社でも、同じ向きでした。IT以外の931社では、売上の伸びの上位と下位の差は小さく、IT株の戻りだけが売上の伸びで大きく分かれています。
1年で見ると、IT株の真ん中はまだTOPIXより18.3ポイント下にいます。売上の伸びの下位3分の1は25.9ポイント下で、戻りから取り残されています。
⚠️ 売上の伸びは、株探の3か月ごとの決算の、直近2四半期の売上の前年比の平均です。10月に7〜9月の決算を出した会社(ベイカレント・オービックなど)は、その分も入っています。91社は会社の事業内容を見て選んでいて、選び方によって数字は少し変わります。
これから7〜9月の決算を出すIT会社
91社のうち67社が、10月29日から11月13日までに7〜9月の決算を出します。4〜6月の売上の伸びが5%未満だった会社は22社です。
表は、そのうちTOPIXのSmall 1までの大きめの会社です。4〜6月の売上が前年を下回った会社には、DTS・BIPROGY・三菱総合研究所・シグマクシスがあり、4社とも1年の株価はTOPIXより下です。決算の発表のあとに株価がどう動くかは、好決算なのに株価が下がる理由の記事で、市場の予想との差から数えています。
11月13日までに、IT会社の決算がほぼ出そろう
IT会社の7〜9月の決算は、11月13日にほぼ出そろいます。そのあとで、この記事の予想を答え合わせします。
野村総合研究所・システナ・NSD・JBCC HD
7〜9月の売上の伸びは、野村総合研究所+9.0%・システナ+2.9%・NSD+10.6%・JBCC HD+3.5%
大塚商会・テクマトリックス・デジタルアーツ
4〜6月の売上の伸びは、大塚商会が+8.7%、テクマトリックスが+19.1%
TIS・三菱総合研究所・コムチュア
4〜6月の売上の伸びは、TISが+7.0%、三菱総合研究所が−2.0%
ラクス・Appierなど、IT会社の決算がほぼ出そろう
この日までの決算が答え合わせの対象
売上の伸びが5%未満の会社の決算の2日
10月29日〜11月13日に決算を出したIT会社の、業種ETFとの差の真ん中
予想:売上の伸びが5%未満のIT会社は、決算で下げる
10月29日から11月13日までに7〜9月の決算を出すIT会社のうち、売上の伸びが前年比5%未満だった会社は、決算の2日の業種ETFとの差の真ん中がマイナスになると見ています。
前の2回の決算期では、売上の伸びが5%未満の会社の決算の2日の真ん中はマイナスでした。反対に、AIの不安で一斉に売られていた1〜3月の決算期(多くは2月に発表)は、売上の伸びに関係なく動いていて、5%未満の会社の真ん中はプラスです。
「決算の2日」は、発表の前の取引日の終値から、発表の次の取引日の終値までの動きで、業種ETF(東証の17業種ごとのETF)との差で見ています。外れるのは、この決算期に売上の伸びが5%未満だった会社の真ん中がプラスになったときです。11月17日に数えます。
で、儲かるのか
IT株を一斉に売らせたのは前の晩の米国のIT株の急落で、それぞれの会社の売上ではありませんでした。戻るときは、売上の伸びが大きい会社から戻りました
米国の夜の急落は、東京の寄り付きで値段に入るので先回りはできません。売られたIT株を見るときは、下げた日に米国で何があったかと、その会社の売上が伸び続けているかを分けて見ます。売上の伸びが小さい会社は、1年で見てまだ大きく取り残されています。次の手がかりは、11月13日までに出る7〜9月の売上の伸びです。
前の晩に米国のIT株が大きく下げた
↓26回中25回、翌日に下げた
売上の伸びが上位3分の1
↑2月末から+34.8
売上の伸びが下位3分の1
→2月末から+1.2
情報源
- 決算の数字と発表日:株探(各社の「3か月決算【実績】」の表と決算発表予定日、2026年10月29日に取得)
- 株価:Yahoo Financeの日次終値。TOPIX=TOPIX連動ETF(1308)、業種ETF=東証の17業種のETF(NEXT FUNDS TOPIX-17シリーズ)。米国=アクセンチュア(ACN)・コグニザント(CTSH)・EPAM(EPAM)・IBM(IBM)・S&P500連動ETF(SPY)
- 2月3日の米国のIT株の下げとAnthropicの発表:Business Today(2026年2月4日)
- 2月23日のIBMの下げ:ロイター(The Star・2026年2月24日の転載)
- ベイカレント・オービックの決算:株探(2026年10月15日・27日)
- 計算:TOPIXとの差=株価の比÷TOPIX連動ETFの比。売上の伸び=直近2四半期の売上の前年比の平均(2026年10月28日までに出た分)。決算の2日=発表日の前の取引日の終値→発表日の次の取引日の終値の、業種ETFとの差。対象は東証の上場銘柄一覧の規模区分でTOPIX Small 2までの会社
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。