セキュリティ株の急騰はいつまで続く? 答えが出るのは11月ではなく、2月の決算

📌 この記事は公開情報(各社の決算短信と開示、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月22日時点のものです。
🔄 2026年11月4日に更新しました。 15社のうちグローバルセキュリティエキスパート(4417)は、10月30日の決算と同時に、米アクセンチュアの日本法人から1株8,500円のTOB(株式の公開買い付け)を受けると発表しました。会社は賛成して応募を勧めており、上場はやめる予定です。8,500円は、この記事の基準日の10月22日の終値7,960円より6.8%高い値段です。筆頭株主のビジネスブレイン太田昭和(9658)が受け取るお金と、その配当への効き方はビジネスブレイン太田昭和の記事で計算しました。
10月、サイバーセキュリティの会社の株がそろって急騰しました。きっかけは、国内で相次いだ情報漏えいと、AIを使って見つかったPHPの重大な脆弱性です。ストップ高が続いた会社もあります。
これだけ上げると、会社のもうけも増えるのか、が気になります。
この記事の答えは、10月の上げは業績についてきたものではない、というものです。15社のうちいちばん上げたのは売上が減った赤字の会社で、上げの小さかった会社のほうが売上は伸びていました。しかも11月に出る決算は7〜9月の分で、10月の騒ぎより前の期間です。騒ぎが本物の需要かの答えが出るのは、2027年2月の決算からです。
10月の上げは、5年でいちばん大きい騒ぎ
セキュリティの会社15社の株価は、10月6日から22日までに、真ん中の値で市場より約38ポイント上げました。この5年でいちばん大きな上げで、2022年のウクライナ侵攻のころを上回ります。
調べたのは、セキュリティを主な仕事にしている上場企業15社です(会社の一覧は後の表)。15社の半分以上がそろって普段の2倍を超えて上げた日は、5年で5日しかありません。そのうち3日が、今月の8日・16日・22日でした。
株探は10月6日、情報漏えいが深刻になるなかで関連株が軒並み急騰したと伝えています。その日の取引の後には、サイバーセキュリティクラウドが、被害を受けた会社の初動の相談を無償で受ける窓口を開くと発表しました。
22日は、Webサイトを作るのに広く使われるプログラム言語PHPの、重大な脆弱性2件の修正版が出た翌日です。米Fortune誌によると、この2件は、AIを使った2つの研究チームが見つけました。サイバー攻撃が増えるとセキュリティの会社の株がなぜ注目されるのかは、サイバーセキュリティ関連株の入門記事で取り上げています。
被害やAIの発表の日でも、株価が動くとは限らない
国内の大きなサイバー被害の日と、AIのセキュリティの発表の日を11日並べると、15社がそろって大きく動いたのは4日だけでした。
KADOKAWAやアサヒグループの被害の日は、15社はほとんど動いていません。大きく動いたのは、トヨタが全工場を止めた2022年3月1日と、アスクルの被害が分かった2025年10月20日でした。
AIの発表は、向きが逆になりました。2026年2月、Anthropicがプログラムの弱点を探すAIの道具「Claude Code Security」を出すと、次の営業日に15社のうち9社が普段の2倍を超えて下げています。「AIがセキュリティの仕事を代わりにする」と受け止められた形です。
10月は、AIが脆弱性を見つける力が「攻撃が増える」側に読まれ、買われました。2月に大きく下げた会社と、10月22日に大きく上げた会社は、ほとんど重なりません。
いちばん上げたのは、売上が減った会社
15社の10月の上げを並べると、上げの大きかった5社より、上げの小さかった5社のほうが売上は伸びていました。いちばん上げたセキュアヴェイルは、4〜6月の売上が前の年より減り、営業赤字です。
上げの小さかった5社は、セグエ・HENNGE・網屋・デジタルアーツ・エルテスで、エルテスを除く4社は売上が16%以上伸びています。逆に、上げの大きかった5社には、売上が減って営業赤字のセキュアヴェイルと、営業赤字のアズジェントが入っています。
上げの大きさとよく重なったのは、会社の大きさでした。時価総額の小さい会社ほど大きく上げていて、10月に株価が2倍を超えた3社のうち2社は、時価総額が150億円に届きません。
増えた時価総額は、今期のもうけの何年分か
10月に15社の時価総額は、合わせて約2,300億円増えました。今期の予想がある12社で比べると、増えた分は営業利益の予想の合計の約7倍で、会社によっては40年分を超えます。
時価総額は、株価に株の数をかけた、会社の値段です。10月だけで、何年分もの利益に当たる値段が上乗せされたことになります。
その値段に見合うには、セキュリティの需要が本当に増え、売上と利益が大きく伸びる必要があります。それが分かるのは、まだ先です。
関連企業と日本の接点
15社は、同じ「セキュリティ」でも仕事の中身がばらばらです。海外の製品を売る会社、自社で作る会社、攻撃を監視する会社、人を育てる会社があります。
| 会社 | 上場 | 何をしている会社か | 次の決算 |
|---|---|---|---|
| ソリトンシステムズ(3040) | 東証プライム | 認証などのセキュリティ製品を自社で開発 | 11月12日 |
| テクマトリックス(3762) | 東証プライム | 海外のセキュリティ製品の販売や構築、医療のシステム | 10月30日 |
| セグエグループ(3968) | 東証プライム | 海外のセキュリティ製品を輸入して販売 | 11月12日 |
| GMOグローバルサイン・ホールディングス(3788) | 東証プライム | Webサイトの電子証明書、電子契約「GMOサイン」 | 11月12日 |
| デジタルアーツ(2326) | 東証プライム | 有害なサイトを止めるフィルタリングで国内首位 | 10月30日 |
| サイバーセキュリティクラウド(4493) | 東証グロース | Webサイトへの攻撃を止めるサービス | 11月13日 |
| FFRIセキュリティ(3692) | 東証グロース | 標的型攻撃を防ぐ製品を自社で開発 | 11月12日 |
| HENNGE(4475) | 東証グロース | クラウドの利用者の認証・管理 | 11月5日 |
| サイバートラスト(4498) | 東証グロース | 電子証明書と認証、Linux | 10月29日 |
| グローバルセキュリティエキスパート(4417) | 東証グロース | セキュリティの教育・診断・相談 | 10月30日 |
| エルテス(3967) | 東証グロース | ネット上の炎上などのリスクを見張る | 2027年1月 |
| 網屋(4258) | 東証グロース | 記録(ログ)の管理とネットワーク | 11月11日 |
| セキュアヴェイル(3042) | 東証スタンダード | ネットワークの24時間の監視 | 11月13日 |
| ブロードバンドセキュリティ(4398) | 東証スタンダード | 脆弱性の診断と監視 | 11月12日 |
| アズジェント(4288) | 東証スタンダード | 海外のセキュリティ製品を輸入して販売 | 11月13日 |
10月に大きく上げたアクリート(4395・東証グロース)は、取引の会計の処理を調べる特別調査委員会が開かれ、4〜6月を含む中間決算の発表を延ばしているため、15社に入れていません。米国のCrowdStrikeやPalo Alto Networksは、日本の取引所には上場していません。
図は、10月の上げの上位4社と下位4社です。残りの7社の10月の上げは、上の「いちばん上げたのは、売上が減った会社」の図に入れています。
この1年の株価の差を、セキュリティの需要だけで説明することはできません。デジタルアーツは売上が伸びても1年で大きく下げ、セキュアヴェイルは売上が減っても上げました。
次の山場は11月の決算、ただし中身は7〜9月の分
10月29日から11月13日にかけて、14社が決算を出します。ただし中身は7〜9月の売上で、10月の騒ぎが数字に出るのは、早くても2027年2月の決算からです。
サイバートラスト
10月の上げは15社で2番目
テクマトリックス・グローバルセキュリティエキスパート・デジタルアーツ
売上が伸びている会社が先に出る
HENNGE
9月決算なので1年分の決算と来期の予想
残りの9社
見る数字
- 7〜9月の売上の前年比が、4〜6月より上がったか
- 10月以降の受注や問い合わせについての会社の説明
- 今期の予想を変えるか
10〜12月の決算
10月の騒ぎが売上に出る最初の決算
11月の決算で数字が良くても悪くても、それは10月の騒ぎの答えではありません。会社が「10月以降に問い合わせが増えた」と説明するかどうかが、先に分かる手がかりになります。
予想:売上の伸びが上向くのは、14社のうち7社以下
11月13日までに出る14社の決算で、7〜9月の売上の伸びが4〜6月より上がる会社は、7社以下だと見ています。
理由は3つです。
- 10月の騒ぎは、まだ数字に入らない:決算の中身は7〜9月で、材料はそのあとの10月に出ました。
- 前の四半期より伸びが上がるのは、もともと半分ほど:15社の過去の8四半期では、45回中21回でした。
- 4〜6月の伸びが高い会社が多い:セグエや網屋は2割を超えて伸びた後で、さらに上げるのは簡単ではありません。
株価がどちらに動くかは予想しません。決算の前の20日で市場より2割超上げてから決算を迎えた例は、15社の過去120回の決算で5回しかなく、前例と呼べる数がありません。
で、儲かるのか
10月のセキュリティ株の上げに乗って、いちばん上げた小さな赤字の会社を買い増すのは、業績に裏付けがありません。上げの小さかった会社のほうが売上は伸びていて、11月の決算は10月の騒ぎより前の7〜9月の分です。騒ぎが本物の需要かは、2027年2月の決算まで分かりません
選ぶなら、株価の上げではなく売上の伸びで選びます。11月の決算では、10月以降の問い合わせや受注についての会社の説明を見ます。
11月の決算は7〜9月の分
→騒ぎの答えはまだ出ない
会社が受注や問い合わせの増加を示す
↑2月の決算で売上が伸びる
説明が出ず売上の伸びも鈍る
↓10月の上げの根拠がなくなる
情報源
- 各社の決算:株探の決算の表(各社の3か月ごとの売上高・営業利益・決算の発表日、2026年10月22日に確認)、各社の決算短信。今期の予想と時価総額は株探(2026年10月22日)
- 会社の概要:株探の各社の基本情報、東京証券取引所の上場銘柄一覧(市場の区分、2026年8月末)
- 10月の材料:株探(2026年10月6日「情報漏えい深刻化するなかサイバーセキュリティー関連が軒並み急騰」・10月7日・8日・16日)、メディアIR(2026年10月22日・PHPの重大な脆弱性2件と関連株)、Fortune(2026年10月21日・AIを使ったチームがPHPの脆弱性を発見)、The Next Web・The Decoder(同)
- AIの発表:Anthropic「Claude Code Security」(2026年2月20日)と米国のセキュリティ株の下げ(Globes・Yahoo Finance)、Anthropic「Project Glasswing」(2026年4月7日)、ファイブ・アイズのサイバー機関「AI Call to Action」(2026年6月22日・ビジネス+IT)
- 国内の被害:トヨタの全工場停止と小島プレス工業(2022年2月28日・3月1日の報道)、名古屋港(2023年7月)、KADOKAWA(2024年6月9日・14日の発表)、日本航空(2024年12月26日)、アサヒグループホールディングス(2025年9月29日)、アスクル(2025年10月19日)
- アクリート:株探(2026年9月9日・29日・特別調査委員会と会計監査人)
- 株価:Yahoo Financeの日次終値。市場との差=その会社の騰落率−TOPIX連動ETF(1308)の騰落率。業種の株全体=情報通信・サービスその他のETF(1626)。普段の振れ幅=前の250営業日の標準偏差
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