調査

空売りが積み上がった株は踏み上げで上がるのか 空売り残高が発行済み株式の4%以上の小型株は、3か月で市場より5ポイント下げた

2026.10.15
空売りが積み上がった株は踏み上げで上がるのか 空売り残高が発行済み株式の4%以上の小型株は、3か月で市場より5ポイント下げた

📌 この記事は公開情報(日本取引所グループの公表資料、各社の適時開示、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月14日時点のものです。

空売りが多い株は、いずれ買い戻しが入って急に上がる。そんな「踏み上げ」を期待して、空売りが積み上がった小さな会社の株を買う人がいます。その期待は、当たってきたのでしょうか。

この記事の予想は、空売りが積み上がった小さな会社の株は、踏み上げよりも、そのまま市場より下げる見込みが高い、というものです。とくに、空売りが積み上がったまま、直前の3か月に株価が大きく上がっていた株は、下げやすいと見ています。

空売りの残高は、東証が毎日、名前つきで公表している

空売りは、株を借りて売り、あとで買い戻して返す取引です。東京証券取引所(東証)は、発行済み株式の0.5%以上の空売りの残高を、空売りをしている人の名前と一緒に、毎日公表しています(残高が5%未満の個人は「個人」とだけ載ります)。

① 借りて売る株を持っていない人が、証券会社などから株を借りて市場で売る。値下がりすれば、安く買い戻して差額が利益になる
② 買い戻して返す借りた株は、いずれ市場で買い戻して返す。空売りが多い株には、この「将来の買い」がたまっている
③ 踏み上げ株価が上がると、損を抑えたい空売りの人が一斉に買い戻し、株価がさらに急に上がる。これを踏み上げと呼ぶ
空売りは損が大きくなりうるので、上がり始めると買い戻しが重なりやすい。これが「空売りが多い株は上がる」という見方の根っこ

空売りの残高が発行済み株式の0.2%以上になった人は、2営業日後の午前10時までに証券会社へ残高を伝え、証券会社が東証に報告します。東証は、そのうち0.5%以上のものを「空売りの残高に関する情報」として公表します。数えた報告の95%は、証券会社や銀行の名前でした。そのうち備考に「顧客取引に係るヘッジ」と書かれた報告は、報告全体の15%です。証券会社の名前の売りが、客との取引に伴うものか、自分の判断によるものかは、表からはほとんど分かりません。株価のサイトに出る「信用売残」は、信用取引で売っている株数を大口・小口を問わずすべて足した別の数字で、ここでの空売りの残高とは一致しません(「信用買残」は信用取引で買っている側の株数です)。

この記事では、2024年3月からの毎日のファイル531日分(東証の過去1年分と、Internet Archiveに保存されていた分)を読み、人ごとの最新の割合を足して、月末ごとに「公表された空売り残高の合計(発行済み株式の何%)」を出しました。0.5%未満の空売りや、報告の対象外の売りは入りません。見えている分だけの合計です。

空売りが積み上がった小型株は、3か月で市場より下げた

月末に公表された空売り残高の合計が発行済み株式の4%以上あったスタンダード・グロースの株は、その後60営業日(約3か月)で市場より約5ポイント下げていました(中央値)。この集計では、空売りが多い組ほど、下げも大きくなっていました。市場より上げたのは4割です。

この記事では、スタンダード市場とグロース市場の株を「小型株」と呼びます。市場で分けた呼び名で、時価総額の大きさとは必ずしも一致しません。ここでの「市場」は、TOPIXなどの指数ではなく、同じ市場(プライム・スタンダード・グロース)の全銘柄の値動きを順に並べた真ん中の値(中央値)です。たとえば、その株の株価が10%下がり、市場が6%下がったなら、市場との差は約−4ポイントです。

前から下げていた株が続けて下げただけ、とも考えられます。そこで、空売りの報告がない株のうち、前の3か月の株価の値動きが近い株と比べました。近い株は、その後の3か月で市場とほぼ同じでした。年で分けても、2024年・2025年・2026年のどの年も、空売りが4%以上の小型株は市場より下げていました。

ただ、業績や資金繰り、会社の大きさ、売買の量まではそろえていません。空売りが下げを招いたのか、下げそうな会社に空売りが集まったのかは、この数え方では分かりません。月末ごとに数えたので、同じ株が何度も入っています(のべ件数)。数えたのはいま上場している会社だけで、上場廃止になった会社は入っていません。

では、踏み上げは起きなかったのでしょうか。市場より大きく上げた株は、たしかにありました(その上げが買い戻しによるものかまでは、この数え方では分かりません)。ただ、反対側に大きく下げる株も、同じくらいありました。

空売りが積み上がった小型株は、大きく上げることも、大きく下げることも多い株でした。踏み上げを狙って買うと、うまくいく株がある一方で、同じくらいの数の株で大きく損をする形です。真ん中の値で見ると、市場より下でした。

業種で分けても、情報・通信やサービス、医薬品、電機・精密、小売、商社・卸売、機械と、社数の多い業種はどれも市場より下げていました。上げていたのは、化学や自動車など、社数の少ない業種だけです。プライムの大きな会社では、空売りが4%以上でも下げは小さめでした。

関連企業と日本の接点

空売りが4%以上の小型株は、月末ごとに数えたのべ件数の3件に1件で、前後60日に新しい株を出すお知らせ(第三者割当・新株予約権・公募・売出しなど)がありました。小型株全体では12件に1件です。お知らせがあった株は、なかった株より大きく下げていました。お知らせがあっても、株が実際に出たとは限りません。

小さな会社が株を出してお金を集めるとき、よく使われるのが「行使価額修正条項付新株予約権」(MSワラント)です。決まった相手(割当先)に、あとで株を受け取れる権利を渡し、相手が権利を使う(行使する)たびに新しい株が出ます。権利を使うときの値段は、そのときの株価に合わせて動き、決められた下限までは株価が下がっても権利が使われやすい設計です。新しい株が出れば、株を持っている人1人あたりの持ち分は薄まります。

ここで1つ注意があります。新株予約権などの権利を使って受け取る株数の範囲内で先に売る空売りは、残高の報告の対象外です(東証の空売り規制の説明)。つまり、公表された空売りは、割当先のこうした売りそのものではありません。誰が、なぜ売っているのかは、空売りの表からは分かりません。分かるのは、空売りが積み上がった小型株に、新しい株のお知らせが重なりやすかった、ということです。

いま(10月14日公表分まで)、公表された空売り残高の合計が発行済み株式の4%以上あるスタンダード・グロースの株は97社です。そのうち18社に、直近60日(8月15日〜10月14日)の間に新しい株を出すお知らせがありました。

この一覧は、公表された空売りの残高(0.5%以上の分だけ)を名前ごとに足して、大きい順に並べたものです。会社の良し悪しや、これからの株価を示すものではありません。メタプラネット(3350)は、MSワラントで集めたお金でビットコインを買う方針をお知らせしている会社です。

次の山場は、いま空売りが多い会社の3か月後

空売りの残高は、毎営業日に公表されます。いま空売りが4%以上ある小型株の60営業日後は、2027年1月中旬です。

毎営業日東証が空売りの残高を公表(0.2%以上を報告、うち0.5%以上を公表)
毎月の初めMSワラントを出した会社が、前の月にどれだけ行使されたか(月間の行使状況)をお知らせ

空売りが多い株を見たら、自分で確かめることは4つです。

  • 公表された空売りは、0.5%以上の分だけ。その合計が発行済み株式の何%か、ここ数週間で増えているか減っているか
  • その会社に、第三者割当や新株予約権(とくにMSワラント)のお知らせがないか。あれば、月間の行使状況で実際にどれだけ株が出たか、集めたお金を何に使うか
  • 決算短信で、業績や資金繰りに問題が書かれていないか
  • スタンダード・グロースの株か、プライムの株か

第三者割当で株を出す会社の株価の前例は資本業務提携の記事で、新しい株を売り出す公募増資の前例は公募増資の記事で取り上げています。

予想:空売り残高が4%以上で、株価が直前3か月に大きく上がった小型株は、市場より下げる

公表された空売り残高の合計が発行済み株式の4%以上あるスタンダード・グロースの株は、3か月で市場より下げる見込みが高いと見ています。とくに、直前の3か月に株価が市場より20ポイント以上上がっていた株が本命です。市場より大きく上げる株も、全体の8件に1件ほどありますが、どの株かは前もって見分けられません。

前もって分かることで分けると、どの年もどの市場でも同じ向きだったのは、直前の3か月の株価の値動きでした。空売りが4%以上で、直前の3か月に株価が市場より20ポイント以上上がっていた株は、その後の3か月で市場より約10ポイント下げていました(中央値・上げは35%)。直前の株価の値動きが近い、空売りの報告がない株は、ほぼ横ばいでした。新しい株のお知らせが先にあったかどうかでは、2025年には差が出ませんでした。

予想の理由は3つです。

  • 3年とも同じ向きだった:2024年・2025年・2026年のどの年も、空売りが4%以上の小型株は市場より下げました。
  • 前の値動きが近い株は下げなかった:前から下げていた株が続けて下げた、というだけでは説明しにくい動きです。
  • 株価が直前に大きく上がった株ほど下げた:2025年と2026年、スタンダードとグロースのどれでも、直前の3か月に株価が市場より20ポイント以上上がった株の下げが大きめでした(2024年は件数が少ない)。

ただし、空売りと株価のどちらが先かは分かりません。上場廃止になった会社は入っていないので、下げは小さめに出ている可能性があります。

この前例を当てはめると、次にこの形になりそうなのは、次の27社です(10月14日公表分まで。空売りが発行済み株式の4%以上の小型株のうち、7月13日〜10月13日の株価の上がり方が、市場の真ん中の値より20ポイント以上大きかった株)。あくまで前例を当てはめた予想で、会社の良し悪しや、売り買いを示すものではありません。

図の右の数字は、その3か月の株価の上昇率です。たとえばフィーチャは、株価が236円から1,018円になりました。

前例では、この組でも15%ほどは、逆に市場より30ポイント以上上げていました。

で、儲かるのか

この記事の答え

空売りが積み上がった小型株は、市場より上げた株が4割にとどまります

空売り残高が発行済み株式の4%以上の小型株は、前例で3か月に市場より約5ポイント下げました(中央値)。直前の3か月に株価が大きく上がっていた株は約10ポイントでした。

いちばん確か

空売りが4%以上で、直前の3か月に株価が大きく上がった小型株

↓市場より
下げる
8件に1件

大きく上げる

↑市場より30
ポイント以上
プライム

大きな会社の空売り

→あまり
変わらない

情報源

  • 空売りの残高:日本取引所グループ「空売りの残高に関する情報」の毎日のファイル。2025年10月〜2026年10月14日は東証のページ、2024年3月〜2025年9月はInternet Archiveに保存された版(計531日分)。2024年3月〜8月は抜けが多いので、月末は2024年12月から数えた
  • 数え方:空売りをした人(名前・委託者・信託財産の名前)ごとに最新の割合を持ち、0.5%未満の報告で外した。報告者の名前が変わったとき(新しい名前の報告に書かれた前回の計算日と割合が、古い名前の残高と一致したとき)は、古い名前の分を外した。保存されていない日をはさんで、最後の報告から90日を超えて報告のない残高は外した(その日に出た「減った」報告を見落としている可能性があるため。全日分そろっている2025年10月以降は、報告の99%が前回から36日以内)。月末(2024年12月〜2026年6月の19回)の合計を、その月末から60営業日の値動きと比べた(のべ件数・同じ株が何度も入る)。市場=同じ市場の全銘柄の同じ期間の株価の値動きの中央値。市場との差=(1+その株の値動き)÷(1+市場の値動き)−1(市場の動きが小さいときは、ほぼ値動きの引き算)。近い株=同じ市場・同じ月末で空売りの報告がなく、前の60営業日の市場との差が±5ポイント以内の株(5銘柄以上)の中央値
  • 新しい株を出すお知らせ:kabupro の毎日の開示の一覧から、見出しに第三者割当・新株予約権の発行・行使価額修正・公募・株式の売出し・転換社債などを含むもの。月末の前後60日にあれば「お知らせあり」。小型株全体の割合(8%)は、同じ月末のスタンダード・グロース株から無作為に選んだ株で数えた。お知らせがあっても、株が実際に出たとは限らない
  • 株価:Yahoo Financeの日次終値。いま上場している会社だけ
  • 市場と業種:日本取引所グループ「東証上場銘柄一覧」(2026年8月末)
  • 制度:日本取引所グループ「空売りの残高に関する情報 ご利用の手引き」「空売り規制の概要」(残高報告は0.2%以上、公表は0.5%以上。新株予約権の行使で取得する株数の範囲内の売付けは残高報告の対象外)
  • 各社の開示:メタプラネット「第27回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使価額の修正」(2026年6月9日)ほか
免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

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フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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