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ロケットに載せる場所が足りず、衛星が平たくなりました——直径1メートル・厚さ2.5センチのDiskSat

2026.08.29 ・ 執筆:フクリ
ロケットに載せる場所が足りず、衛星が平たくなりました——直径1メートル・厚さ2.5センチのDiskSat

📌 本記事は公開情報(各社・研究機関の公表資料、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年8月29日時点のものです。

小型の人工衛星は、これまで箱の形が当たり前でした。

平たい衛星が出てきています。直径1メートル、厚さ2.5センチ、重さ17キログラム。 米国の非営利研究機関エアロスペース・コーポレーションが、NASAと組んで作ったDiskSat(ディスクサット)です。

薄くした理由は、性能ではありません。ロケットに載せる場所が足りないからです。

米国で起きたことが、米国と日本のそれぞれで誰の得になり、誰の損になりうるのか。公表されている打ち上げ価格から順に確かめていきます。

なぜ板にするのか

ロケットの先端にはフェアリングという覆いがあり、その中に衛星を積みます。積めるかどうかを決めるのは、多くの場合「重さ」ではなく「かさ」です。ただし、値段の付き方はこれとは別です。そこは後半で見ます。

箱型の衛星は、厚みのぶんだけ場所を取ります。小型衛星の標準規格であるキューブサットは、一辺10センチの立方体を「1U」として、それを何個つなげるかで大きさを表します。6Uなら10×20×30センチほどです。

DiskSatは、この考え方を捨てました。面をできるだけ広く、厚みをできるだけ薄くして、フェアリングの中で皿のように重ねる設計です。

面が広いことには、もうひとつ意味があります。折りたたみ式のパネルを広げなくても、200ワットを超える太陽電池を表面に張れます。小型衛星がいつも足りなくなる電力を、可動部を増やさずに確保できるということです。

打ち上げ枠そのものを買いにいく動きはロケットを上げるルールはできて、降ろすルールがまだないでも触れました。小型衛星を作る側の事情は26億円の内訳を読むと、日本のロケット産業の出資者が見えてくるにまとめています。

同じ高さに、何機積めるのか

公表されている寸法から、実際に計算してみます。

厚さ2.5センチなら、高さ1メートルに40枚入ります。 6Uキューブサットを長辺で縦に置けば3機です。同じ高さで13倍という計算になります。

⚠️ 1機あたりにできることは同じではありません。 40機ぶんの重さは680キログラムになり、小型ロケットが一度に運べる量に近づきます。「積める機数」と「打ち上げられる重さ」は別の制約です。

実際に飛ばして、何が起きたか

2025年12月、ロケットラボのエレクトロンで4機が打ち上げられました。 米宇宙軍のミッションの一部として、バージニア州のワロップス飛行施設から飛んでいます。放出装置もエアロスペース・コーポレーションの自作です。

高度550キロメートルに入り、いまは大気の抵抗で毎月およそ2キロメートルずつ下がっています。目標は高度300キロメートル未満の超低軌道で、そこまでは電気推進を使って自分で下ろす計画です。低いほど地上を細かく見られますが、そのぶん空気の抵抗を受けます。

DiskSatはここで、円盤の縁を進行方向に向けて飛びます。正面から受ける面積が小さくなるので、抵抗を抑えられます。 姿勢と軌道の制御にはエンパルジョン(Enpulsion)の小型電気推進を積んでいます。

ただし、4機すべてが順調だったわけではありません。

⚠️ DiskSat Cは、2本あるバッテリーが両方とも恒久的に使えなくなりました。 DiskSat Aでも1本が同じ状態です。原因はバッテリーヒーターの設計不良で、電力の消費が偏りました。修正ソフトは作ったものの、配信が終わった時点ではすでに故障していたと報告されています。星を見て姿勢を測る装置に迷光が入る問題も起きましたが、これは運用の見直しで解決しています。

それでも、商用のライセンスは進んでいます。現時点で4社が契約しています。

会社何に使うか
Satlyt軌道上のデータセンター網(→地上で嫌われた計算資源は、どこへ行くのか
Orbotic Systems地球観測から宇宙状況監視まで
Sarmony合成開口レーダーの衛星網
Neumann Space自社の推進装置をDiskSatに組み込む

この4社はいずれも未上場で、個人が直接買う手段はありません。

なぜ場所が足りなくなるのか

2026年8月28日から29日、ユタ州ソルトレークシティで小型衛星の国際会議が開かれました。技術も資金環境も近年で最良と言われる一方で、会場の空気は張り詰めていたと報じられています。

理由は、いま最も使われている打ち上げ手段が、この先も同じように使えるのか分からないからです。

用語を補います。相乗り(ライドシェア)とは、大きなロケットの空いた場所に小さな衛星を安く載せてもらう仕組みです。小型衛星の会社にとって、いまの主要な打ち上げ手段になっています。

会場では、かつてノースロップ・グラマンが小型ロケット「ペガサス」をやめたときと同じ道をたどるのではないか、という懸念が語られました。

📝 念のため:これは業界関係者の懸念として報じられたもので、SpaceXが相乗りをやめると発表した事実はありません。

その懸念に対する動きも、すでに出ています。

  • 打ち上げ仲介のExolaunchとSEOPSは、ファルコン9を自社で買って独自の相乗り便を回しています。
  • フランスの打ち上げ仲介RIDE!は、MaiaSpaceの余剰能力を押さえました。 2028年から最大6便分を売り出す見込みだとしています(契約の中身は公表されていません)。
  • そして、衛星の形そのものを変えるのがDiskSatです。

打ち上げ枠を先に押さえてしまうか、同じ枠により多く詰めるか。 会議で見えたのは、この2つの方向でした。

打ち上げ回数そのものを増やそうという政策の動きはロケットを上げるルールはできて、降ろすルールがまだない、使い終わった衛星を片づける側の商売は軌道上サービスで扱っています。

米国では、誰の損得になるのか

ここで、公表されている打ち上げ価格に当たります。

SpaceXの相乗りには価格表があります。太陽同期軌道まで、50キログラムまでが35万ドル。50キログラムを超えたぶんは1キログラムあたり7,000ドルです。

この2行から、薄さが値段に効くのかどうかが分かります。

DiskSatは17キログラムです。1機だけ相乗りに載せても、50キログラムぶんの基本料金35万ドルがまるごとかかります。 2機積んで34キログラムでも、同じ35万ドルです。薄さは、相乗りの価格表では1ドルも報われません。

薄さが効くのは、ロケットを丸ごと買って自分で埋める側です。 1本の値段が決まっているなら、何枚詰められるかがそのまま1機あたりの原価になります。

ExolaunchとSEOPSがファルコン9を自社で買った理由は、ここにあります。 相乗りの席を買う側から、席を作って売る側に回ったということです。

得をする側と、損をしうる側

得をしうるのは、機数で競う地球観測の会社です。米国で上場している代表は3社です。

  • プラネット・ラボ(PL)=約200機のSuperDoveで地球の陸地を毎日撮影し、高解像度のSkySatを15機運用
  • ブラックスカイ(BKSY)=解像度35センチの新型Gen-3へ移行中。2026年末までに12機以上を軌道に置く計画
  • スパイア・グローバル(SPIR)=LEMURをこれまでに160機以上打ち上げ、気象・船舶・航空機を追跡

この3社が競っているのは、同じ場所を1日に何回撮れるかです。機数がそのまま、その回数になります。打ち上げの原価が下がれば、同じ予算でより多く上げられます。

逆に、打ち上げ企業にとっては両刃です。 1回の打ち上げにより多く積めるということは、同じ機数を上げるのに必要なロケットの本数が減るということでもあります。

⚠️ どちらに転ぶかは、まだ決まっていません。 打ち上げの単価が下がって需要そのものが増えれば、本数は減らずに済みます。この記事は「こう決まった」ではなく「ここが分かれ目になる」と書いています。

日本では、誰の損得になるのか

DiskSatを採用した4社のうち、Sarmonyは「合成開口レーダー(SAR)の衛星網」を作ろうとしています。

SAR衛星は、日本にも上場企業が2社あります。

会社コード何をしているか
QPSホールディングス東証グロース 464A小型SAR衛星を作って運用し、画像データを売るQPS研究所の持株会社。2025年12月に持株会社へ移行し、旧コード5595は上場廃止
Synspective東証グロース 290A小型SAR衛星「StriX」を開発・運用。2024年12月に上場

SAR衛星は、レーダーで地表を見ます。光学カメラと違い、雲があっても夜でも撮れるのが特徴です。だから災害の把握や安全保障に使われ、日本の2社はどちらもここで伸びてきました。

この2社の商売も、何機を軌道に上げられるかで決まります。1機では地球の同じ場所を1日に何度も見られません。機数がそのまま、撮れる頻度になります。

つまりDiskSatは、日本の2社にとって「将来の競合が持つかもしれない武器」です。

同じ空きスペースに何倍も積める相手が現れれば、1機あたりの打ち上げ費用が変わります。 機数で勝負する商売では、そこがそのまま原価の差になります。

⚠️ ただし、いますぐ効く話ではありません。 DiskSatは実証機4機のうち1機が停止した段階です。SarmonyがDiskSatで実際にSAR網を作れるかは、まだ分かりません。 日本の2社が今日困るという話ではなく、数年先に効くかもしれない変化として見る話です。

関連企業の一覧

区分企業上場この件での位置
① 名前が出たエアロスペース・コーポレーション非営利の研究機関DiskSatの開発元
① 商用ライセンスSatlyt/Orbotic Systems/Sarmony/Neumann Space未上場(個人が直接買う手段はありません)DiskSatを採用した4社
① 打ち上げ仲介Exolaunch/SEOPS/RIDE!未上場(同上)自社でロケットを買う、または余剰能力を押さえる側
② 米国・打ち上げ側ロケットラボ(RKLB)/ファイアフライ(FLY)/レッドワイヤ(RDW)米国上場
(日本の取引所には上場していません)
1回に積める数が増えると、必要な本数が減りうる側
② 米国・機数で競う側プラネット・ラボ(PL)/ブラックスカイ(BKSY)/スパイア・グローバル(SPIR)米国上場打ち上げの原価が下がると得をしうる側
③ 日本・機数で競う側QPSホールディングス(464A)/Synspective(290A)東証グロース同上。Sarmonyは将来の競合になりうる

⚠️ この一覧は論点の位置を整理したものであり、投資対象として推奨するものではありません。 ②③の各社について、DiskSatの採用や今回の件への関与は確認されていません。

米国で機数を競う2社

📝 プラネット・ラボ(PL)は同じ1年で指数282、途中で721まで上がっており、振れ幅が大きすぎるためこの図から外しました。 同じ縮尺に載せると、ほかの線が読めなくなります。

日本で機数を競う2社

📝 QPSホールディングスの指数は、持株会社へ移行する前のQPS研究所(旧コード5595)の株価を含みます。 移行時に株式は1対1で引き継がれています。

フクリの見方

ここから先は、事実の整理ではなく、この記事の見立てです。

DiskSatで注目すべきなのは、衛星が薄くなったことではありません。ロケットに空きが足りないという制約が、衛星そのものの設計を書き換え始めたことです。

根拠は、順番です。普通、衛星の形は「何をしたいか」で決まります。 撮りたい、通信したい、測りたい。DiskSatの形を決めたのは、そのどれでもなく「フェアリングに何機詰められるか」でした。

制約が上流にさかのぼっています。打ち上げが足りない→ロケットを買う→それでも足りない→衛星の形を変える。ここまで来ると、これは打ち上げ業界の話ではなく、衛星を作る側の設計思想の話になります。

そして、価格表を見て分かったことがもう1つあります。SpaceXの相乗りは重さで課金するので、薄さは相乗りの値段には効きません。 効くのはロケットを買い切って自分で埋める側です。ExolaunchとSEOPSがファルコン9を買ったのは、その側に回ったということだと見ています。

投資として見るなら、買う対象はDiskSatではありません。 開発元は非営利で、採用4社も仲介3社も未上場です。効く可能性があるのは、機数で競う地球観測の会社の原価の前提です——米国のプラネット・ラボ、ブラックスカイ、スパイア・グローバル。日本のQPSホールディングスとSynspective。

打ち上げ企業には両刃です。1回に多く積めれば単価は下がりますが、同じ機数を上げるのに必要な本数も減ります。

だから見るべきなのは、株価ではなく次の1年の実績です。 4機のうち1機が停止した段階の技術が、採用した4社の実機で成立するかどうか。ここが決まるまで、原価の前提は動きません。

この見立てが外れる条件

投資として見るときの注意

まとめ(3行)

情報源

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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