株主優待を新設した株は、権利落ちの日に8割が下げた 3年270件の前例と花王の12月

📌 この記事は公開情報(各社の株主優待の開示、毎日の適時開示の一覧、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月8日時点のものです。
株主優待を新設した株は、優待をもらえる日まで上がり続けるのでしょうか。
この記事の予想は、花王など12月31日が初回の基準日の株は、権利落ちの日の12月29日に下げる、というものです。前例で株価が上げたのは発表の日で、そのあと権利付き最終日までは決まった向きがありませんでした。
優待の新設を発表した日は、4件に3件で上げた
2023〜2025年に優待を新設した会社の株を数えると、発表の日は4件に3件で市場より上げました。決算と同じ日に発表した会社を除いても、上げ方は同じでした。
株主優待は、決まった日(基準日)に株を持っている人に、会社が自社の商品や食事券、ポイントなどを贈る仕組みです。日本の個人投資家に人気があり、新設・導入の開示はここ2年、年に100件を超えています。
数え方はこうです。毎日の適時開示の一覧から、見出しに「優待」と「新設」または「導入」を含む開示を全部集めました。そのうち、初回の基準日が読めて株価が残っている会社について、株価が動く日ごとに、日本の株全体(TOPIX連動ETF)と比べてどれだけ動いたかを数えました。
優待だけを発表した日と、決算と同じ日に発表した日で分けても、発表の日の上げは真ん中で同じ+7.5ポイントでした。決算の中身ではなく、優待そのものが買われたと見られます。
権利付き最終日までは、上げも下げもした
発表のあと、優待をもらえる最後の買付日(権利付き最終日)までの動きは、年によって違い、決まった向きはありませんでした。
優待をもらうには、基準日の株主名簿に名前が載っている必要があります。株は買ってから2営業日後に自分のものになるため、基準日の2営業日前が、優待をもらえる最後の買付日です。これを権利付き最終日といいます。前例では、発表からこの日までは真ん中で約2か月半ありました。
2023年は、権利付き最終日までに下げた株のほうが多い年でした。2024年は上げた株が多く、2025年はほぼ半々です。発表の日に上げた分を、権利付き最終日まで保てるかどうかは、その年の相場しだいでした。
権利落ちの日は、270件中226件で下げた
はっきりしているのは権利落ちの日です。3年とも、どの市場でも、多くの株が市場より下げました。
権利落ちの日は、権利付き最終日の次の営業日です。この日に売っても優待はもらえるので、売りが出やすい日です。株価からは、その回の配当と優待の分が抜けます。
配当の分を株価に足し戻して数え直しても、7割の株が下げました。残った下げには、優待の品物やポイントの分が入ります。
長く持つことを条件にした優待でも、条件のない優待と下げ方は同じでした。花王のように、初回に限って長く持つ条件を外す会社もあります。
関連企業と日本の接点
今年、優待の新設を発表し、初回の基準日がこれから来る会社のうち、主な8社を挙げます。初回の条件は会社ごとに違い、花王は12月31日に株を持っていれば対象です。
| 会社(市場:コード) | 初回の基準日 | 初回の条件 | 株価(10月8日) |
|---|---|---|---|
| 花王(東証プライム:4452) | 2026年12月31日 | 100株以上。初回に限り、長く持つ条件はなし | 3,522円 |
| 三菱鉛筆(東証プライム:7976) | 2026年12月31日 | 2025年12月末に100株以上を持ち、2026年12月末に200株以上 | 3,490円 |
| 日本カーボン(東証プライム:5302) | 2026年12月31日 | 1年以上(6月末と12月末の名簿に3回続けて記載) | 5,180円 |
| K&Oエナジーグループ(東証プライム:1663) | 2026年12月31日 | 初回は2026年6月末と12月末の名簿の両方に記載 | 1,810円 |
| セプテーニ・ホールディングス(東証スタンダード:4293) | 2026年12月31日 | 1,000株以上。長く持つ条件はなし | 487円 |
| ジェコス(東証プライム:9991) | 2027年3月31日 | 100株以上。長く持つ条件はなし | 1,715円 |
| 栄研化学(東証プライム:4549) | 2027年3月31日 | 500株以上を3年以上 | 2,363円 |
| コーセル(東証プライム:6905) | 2027年5月20日 | 初回は2026年11月20日と2027年5月20日の名簿の両方に300株以上 | 1,445円 |
花王・栄研化学・コーセルは、優待と同じ日に決算などを発表しており、発表の日の動きは優待だけでは説明できません。このほか、エクスモーション(11月30日)、和心(12月31日)、HUMAN MADE(2027年1月31日)なども、今年の新設で初回の基準日がこれから来ます。株価の差を、優待の新設だけで説明することはできません。
次の山場は12月28日(月)の権利付き最終日
表のうち12月31日が初回の基準日の5社は、12月28日(月)が権利付き最終日、12月29日(火)が権利落ちの日です。12月31日は休場のため、ふだんより1日早くなります。
予想:花王など12月の株は、12月29日に下げる
12月31日が初回の基準日の株は、権利落ちの日の12月29日に、市場より下げる見込みが高いと見ています。権利付き最終日までの動きは、前例からは読めません。
予想の理由は3つです。
- 前例では、権利落ちの日に8割が下げた:3年とも、プライム・スタンダード・グロースのどの市場でも同じ向きでした。
- 配当だけの下げではない:配当の分を足し戻しても、下げた株のほうが多く残りました。優待の分も抜けるためです。
- 花王は初回だけ、権利付き最終日に買った人も対象:長く持つ条件を初回に限って外しているので、優待をもらうための買いと、権利落ちの日の売りが出やすい形です。
ただし、プライムの会社は下げが小さく、権利落ちの日に市場より上げた例も4件に1件ありました。花王もプライムの会社です。
で、儲かるのか
優待を新設した株は、権利落ちの日に下げる見込みです
前例で上げたのは発表の日でした。権利付き最終日までは決まった向きがなく、権利落ちの日に8割が下げました。
優待の新設を発表した日
↑株価は上げた
発表のあと、権利付き最終日まで
→決まった向きなし
12月29日(権利落ちの日)
↓株価は下げる
情報源
- 前例の集め方:決算プロの「適時開示の一覧」(日ごと)から、2023年1月〜2025年12月に見出しに「優待」と「新設」または「導入」を含む開示338件を集め、各社の開示(PDF)で初回の基準日を読んだ。基準日が読めなかった46件と、上場廃止などで株価が残っていない19件を除いた270件を数えた
- 数え方:TOPIX連動ETF(1308)との差(ポイント)。発表の日=発表をはさむ前後の終値(取引時間のあとの発表は次の営業日の終値まで)。権利付き最終日=基準日(休みなら直前の営業日)の2営業日前。権利落ちの日=その翌営業日。配当の分は、Yahoo Financeの配当の記録で権利落ちの日に配当があった141件に足し戻した。株価はYahoo Financeの日次終値(配当を含まない)
- 年別・市場別:市場は2026年8月末の日本取引所グループ「東証上場銘柄一覧」の区分。発表と同じ日に決算短信・業績予想の修正などを出したかは、その日の開示の一覧で確かめた
- 関連企業:花王「株主優待制度の新設に関するお知らせ」(2026年8月5日)、三菱鉛筆「株主優待制度導入に関するお知らせ」(7月30日)、日本カーボン「株主優待制度の導入に関するお知らせ」(8月25日)、K&Oエナジーグループ「株主優待制度の導入に関するお知らせ」(7月23日)、セプテーニ・ホールディングス(4月21日)、ジェコス(5月11日)、栄研化学「株主優待制度等の導入に関するお知らせ」(7月30日)、コーセル「株主優待制度導入に関するお知らせ」(6月19日)
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