TSMCの決算で日本の半導体株はどう動くのか 東京エレクトロン・アドバンテスト・SCREENなど7社の過去23回

📌 この記事は公開情報(TSMCの財務カレンダー、各社の決算資料、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月6日時点のものです。
🔄 2026年10月20日に更新しました。 10月15日の決算の夜、米国のTSMC株は米国の株全体より2.1ポイント下げました。前例では、こうした夜の翌日に日本の7社は9回中8回下げていましたが、今回の翌日(10月16日)は7社の真ん中の値が+0.1ポイントで、下げませんでした。7社は前日の10月15日に、すでに真ん中の値で−8.0ポイント下げていました。この日は東京でAI関連の株が一斉に下げた日で、TSMCの発表は取引が終わる30分前でした。前例は10回中8回になります。
TSMCの決算がよければ、日本の半導体株も上がるのでしょうか。
前例では、TSMCの株が決算で下げた夜は、日本の半導体株もほぼ毎回つられて下げました。上げた夜はついてくる力が弱く、決算の前に先回りして買っておく得もありませんでした。
米国のTSMC株が決算で下げた9回のうち8回、日本の7社は翌日に下げた
2021年1月から2026年7月まで、TSMCの決算は23回ありました。決算の日に、米国のTSMC株が米国の株全体より下げたのは9回で、そのうち8回は、翌日の日本の半導体7社の真ん中の値も下げています。
TSMC(台湾積体電路製造)は、半導体の製造を請け負う世界最大の会社です(ファウンドリとは)。決算では、次の四半期の売上の見通しや、工場への投資(設備投資)の計画を示します。日本の装置や材料の会社は、TSMCのような半導体メーカーに製品を売っています。
TSMCの株は、台湾の取引所のほか、米国の取引所でも売り買いされています(ADR=米国預託証券という形)。この記事では、これを「米国のTSMC株」と呼びます。決算の説明会は台湾時間の14時、日本時間の15時に始まり、米国のTSMC株はその日の夜(日本時間)に売り買いされます。日本の株がその反応を受けるのは、主に翌日の取引です。
数えたのは、東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、ディスコ、SCREENホールディングス、信越化学工業、SUMCOの7社です。動きは、株全体と比べた差(ポイント)で数えました。日本の株は、東証の株全体の動きに合わせて動く投資信託(TOPIX連動ETF)と、米国のTSMC株は米国の株全体を表すS&P500と比べています。たとえば、ある日本の株が3%上げ、TOPIX連動ETFが1%上げた日は+2ポイントです。7社の「真ん中の値」は、7社を動きの順に並べて4番目の値です。
米国のTSMC株が上げた14回のうち、翌日に7社の真ん中の値が上げたのは9回でした。真ん中の値は、米国のTSMC株が下げた回で−2.6ポイント、上げた回で+1.2ポイントです。2024年10月は、米国のTSMC株が+9.8ポイント上げたのに、翌日の7社は−0.1ポイントでした。23回の全体では、翌日に7社の真ん中の値が下げたのは13回です。
決算の翌日は、日本の7社が大きく動きやすい日でもあります。23回×7社の161件のうち、翌日に普段の振れ幅の2倍を超えて動いたのは26件(16%)でした。普段の日にこの大きさで動くのは5〜6%です。
下げのほうが大きく伝わるのは、決算の日だけではない
米国のTSMC株が米国の株全体より3ポイント以上動いた日で比べると、決算の日でも、それ以外の日でも、日本の7社には下げのほうが上げの約2倍の大きさで伝わっていました。
決算の日は、米国のTSMC株が大きく動きやすい日です。23回のうち14回で、米国のTSMC株は米国の株全体より3ポイント以上動きました。それ以外の日では1,423日のうち131日です。決算の日だから日本株の反応の仕方が変わるのではなく、米国のTSMC株が大きく動く日が来やすい、と読めます。
3ポイント以上動いた決算の日で見ると、米国のTSMC株の真ん中の値は上げた回が+6.0ポイントで、下げた回の−4.4ポイントより大きく動いていました。それでも翌日の日本の7社は、上げが+1.2、下げが−2.6ポイントです。
決算の前に先回りして買っておく得も、前例にはありませんでした。決算の6営業日前の終値で買い、翌営業日の終値で売っていた場合、7社の真ん中の値は+0.2ポイントで、TOPIX連動ETFを上回ったのは23回中12回です。2025年1月には、ロイターが決算の前に「良好な内容を先取りしようとする動き」を伝えました。その回(1月16日)は、米国のTSMC株が+4.1ポイント上げた一方、翌日の7社は+0.2ポイントでした。
SCREENとSUMCOは下げた9回とも下げ、信越化学はほとんど動かない
会社ごとに見ると、ついてくる強さははっきり違いました。米国のTSMC株が下げた9回、SCREENとSUMCOは9回とも翌日に下げ、SCREENの真ん中の値は−5.0ポイントでした。
10月16日(今回の決算の翌日)は、SCREENが+0.1、SUMCOが+0.1ポイントで、どちらも下げませんでした。下げた夜の翌日に下げたのは、2社とも10回中9回になります。
いちばん大きく動いてきたのはSCREENで、23回のうち7回、普段の2倍を超えて動いています。米国のTSMC株と同じ向きに動いた回がいちばん多いのはSUMCOで、23回中20回でした。
例外はディスコです。上げた回の真ん中の値(+1.7)のほうが、下げた回(−1.3)より大きくなっています。
信越化学は、どちらの向きにもほとんど動いていません。4〜6月期の売上のうち、シリコンウエハーや回路を焼き付けるときに塗る薬剤を含む電子材料は約4割で、約3分の1は塩化ビニルなどの生活環境基盤材料でした。同じシリコンウエハーを作るSUMCOとは、事業の中身が違います。
関連企業と日本の接点
数えた7社は、いずれも東証プライムに上場する半導体の装置と材料の会社です。各社の決算も、10月下旬から続きます。
| 会社(市場:コード) | 作っているもの | 次の決算 | 株価(10月6日) |
|---|---|---|---|
| 東京エレクトロン(東証プライム:8035) | ウエハーに回路を作る工程の装置(薬剤を塗る、削る、膜をつけるなど) | 10月30日 | 12,805円 |
| アドバンテスト(東証プライム:6857) | できあがった半導体を試験する装置(テスター) | 10月28日 | 41,850円 |
| レーザーテック(東証プライム:6920) | 回路を焼き付けるときの原版(マスク)を検査する装置 | 未定 | 46,550円 |
| ディスコ(東証プライム:6146) | ウエハーを切る・削る・磨く装置 | 10月22日 | 65,500円 |
| SCREENホールディングス(東証プライム:7735) | ウエハーの洗浄装置 | 10月30日 | 16,230円 |
| 信越化学工業(東証プライム:4063) | シリコンウエハー、回路を焼き付けるときに塗る薬剤、塩化ビニル | 10月27日 | 6,321円 |
| SUMCO(東証プライム:3436) | シリコンウエハー | 11月11日 | 3,724円 |
| TSMC(台湾証券取引所:2330、ニューヨーク証券取引所:TSM) | 半導体の製造の請け負い。日本の取引所には上場していない | 10月15日 | 米国の株 482.30ドル |
次の決算の日は、株探の各社の決算ページの予定日(10月7日時点)です。レーザーテックは予定日が出ていません。
1年で見ると、装置の5社はディスコを除いて2倍を超え、TOPIX連動ETF(1308)を大きく上回りました。この1年のTSMCの決算の翌日は、2026年4月と7月に、7社の真ん中の値で−2.6、−5.5ポイント下げています。7月は装置の5社がそろって下げ、SUMCOは−12.4ポイント、信越化学はほぼ0でした。株価の差を、TSMCの決算だけで説明することはできません。
次の山場は10月15日15時の決算と、その夜の米国
TSMCの決算は10月15日(木)の日本時間15時からです。前例で翌日の日本株の向きとそろいやすかったのは、その夜の米国のTSMC株の動きでした。
で、儲かるのか
TSMCの決算は、日本の半導体株にとって「上がる材料」というより、下げを運んでくる日として前例に残っています。米国のTSMC株が下げた夜の翌日は9回中8回下げ、上げた夜はついてくる力が弱いものでした。先回りして買う得は前例にありません。持っている人は、10月15日の夜の米国のTSMC株の向きと会社ごとの差を知ったうえで、決算をまたぐかを決めることになります。
米国のTSMC株が下げた9回のうち8回、7社は翌日に下げた。真ん中の値は−2.6ポイント。
下げた回の真ん中の値は、SCREENが−5.0、信越化学は−0.4ポイント。
10月15日15時の決算と、その夜の米国のTSMC株の動き。
情報源
- TSMC:財務カレンダー(7〜9月期の決算の説明会=2026年10月15日 14:00〜15:30、台湾時間)
- 決算の日:2021年1月〜2026年7月のTSMCの四半期決算の23回。23回とも、その日が米国のTSMC株の売買の量が前後5営業日でいちばん多い日だったことを確かめた
- 株価:Yahoo Financeの日次終値(配当を含まない)。日本株の市場差はTOPIX連動ETF(1308)との差、米国のTSMC株の市場差はS&P500との差。普段の振れ幅は、それより前の250営業日の市場差の標準偏差
- ロイター:アングル:半導体株切り返し、復活の序章か TSMC決算に集まる熱視線(2025年1月8日、ビジネス+IT掲載)
- 信越化学工業:2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年7月24日)(セグメント別の売上)
- 各社の次の決算の日:株探の各社の決算ページの予定日(2026年10月7日時点)
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。