証券株はなぜそろって下げた? 配当の権利落ちのあとは、毎年のようにTOPIXに負けてきた

📌 この記事は公開情報(各社の開示、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月27日時点のものです。
10月、証券会社の株がそろって下げました。野村ホールディングスや大和証券グループ本社、SBIホールディングスのような大手から、店舗で個人に株を売る中小の証券会社まで、東証の業種で「証券、商品先物取引業」に入る会社のすべてです。
証券株は「相場の先行指標」と言われることがあります。相場の天井が近いのか、それとも証券会社に何か起きたのか、気になるところです。
この記事の答えは、どちらでもない、というものです。証券株は毎年のように、配当の権利落ちのあとにTOPIXに負けてきました。今年はその負けが、株の取引が減るなかで10年でいちばん大きく出ています。前例では、証券株の大きな負けが相場の天井のサインになったことはほとんどありません。
そろって下げた。でも相場の天井のサインにはなってこなかった
9月28日から10月27日までの1か月で、証券株37社はすべて下げました。TOPIXとの差は、10年の日々のなかで下から1.2%に入る大きさです。
大きく下げたのは、今村証券・水戸証券・岩井コスモホールディングス・岡三証券グループのように、店舗で個人に株や投資信託を売る証券会社です。ネット証券や大手がそれに続き、投資ファンドを運営するジャフコ グループのような投資の会社の下げは小さくなっています。
下げは1日で起きたものではありません。37社の真ん中の動きがTOPIXより普段の2倍を超えて下げた日は、10月5日の1日だけでした。10月を通じて少しずつ下げています。
「相場の先行指標」という見方の背景には、証券会社のもうけが株の取引の量で大きく変わることがあります。取引が細り始めると証券株が先に下げ、そのあと相場全体が下げる、という考え方です。
10年をさかのぼると、そうはなっていません。証券株が1か月でTOPIXより大きく負けたあと、その次の1か月でTOPIXが下げたのは2018年12月の1回だけでした。
10年のすべての日で比べても同じです。証券株が1か月でTOPIXに負けた大きさと、その次の1か月のTOPIXの動きには、ほとんど関係がありません(相関係数は0.00)。
大きく負けた回には、相場の急落で証券株がもっと大きく下げた回(2024年8月)と、相場が上がるなかで証券株だけが取り残された回(2023年5月・2025年10月)の両方があります。今回は、TOPIXがわずかに下げるなかで証券株が大きく下げた形です。
配当の権利落ちのあとは、毎年のように負けてきた
証券株は、配当の権利が付く最後の日から1か月、10年で19回中16回TOPIXに負けてきました。今回の負けは、その20回のなかでいちばん大きいものです。
多くの会社は、3月末と9月末に株を持っている人に配当を払います。その権利が付く最後の買いの日を「権利付き最終日」と呼び、今年の9月は28日でした。今回の1か月は、ちょうどこの日から数えた1か月にあたります。配当のしくみは配当金と配当利回りの記事で説明しています。
ほかの月末から数えた1か月でも、証券株はTOPIXに負けることが多いのですが、権利落ちのあとは負ける回がさらに増えます。これまででいちばん大きかった負けは2025年9月の5.6ポイントで、今回はそれを上回りました。
数字はすべて配当込みで比べています。権利落ちの日には、もらえる配当の分だけ株価が下がりやすくなります。その分は足し戻したうえでの負けです。株主優待を新しく出した会社の権利落ちの日の動きは、優待新設の記事で数えています。
負けは、権利落ちの次の1か月にも続いてきました。配当を受け取った分を足しても、権利付き最終日から2か月でTOPIXに負けたのは19回中17回です。
なぜこの時期に負けるのかは、この数え方からは決められません。配当をもらった人の売りが理由なら、配当の利回りが高い会社ほど下げそうですが、そうはなっていません。今回の1か月の下げと前期の配当の利回りを、配当を出している32社で比べると、関係はほぼありませんでした。
この時期は、証券会社の決算が出る時期とも重なります。3月末までの1年と9月末までの半年の決算は、多くが4月下旬と10月下旬に出ます。
関連企業と日本の接点
今年は、証券会社のもうけを左右する株の取引が減っています。東証の売買代金(概算)は、6月から3割減りました。
7〜9月の売買代金は、4〜6月より7%少なくなっています。7〜9月の決算を先に出した3社は、どれも経常利益が4〜6月より大きく減りました。
株探の決算の見出しは前の年の同じ3か月と比べて書かれていて、3社とも「増益」か小さな「減益」でした。前の年の7〜9月は、株の取引が今ほど多くなかった時期です。4〜6月と比べると、利益は2〜7割減っています。
| 会社 | 上場 | この話での位置 | 株価(10月27日) | 7〜9月の決算 |
|---|---|---|---|---|
| 野村ホールディングス(8604) | 東証プライム | 国内最大手。海外の投資銀行の事業も大きい | 1,439円 | 10月28日 |
| 大和証券グループ本社(8601) | 東証プライム | 大手。店舗とネットの両方で個人に売る | 1,709円 | 10月30日 |
| SBIホールディングス(8473) | 東証プライム | ネット証券最大手のSBI証券を持つ | 2,847.5円 | 11月2日 |
| 松井証券(8628) | 東証プライム | ネット証券。もうけの多くが個人の株の売買と信用取引 | 1,022円 | 10月28日 |
| マネックスグループ(8698) | 東証プライム | ネット証券のマネックス証券などを持つ | 628円 | 11月9日 |
| 岡三証券グループ(8609) | 東証プライム | 店舗の証券会社。1か月の下げが大きかった | 1,065円 | 10月29日 |
| いちよし証券(8624) | 東証プライム | 店舗の証券会社。前期の配当は前の期の2倍超 | 1,429円 | 10月29日 |
| 岩井コスモホールディングス(8707) | 東証プライム | 店舗とネット。中間配当は前年より5円多い65円 | 3,875円 | 10月23日に発表済み |
表の会社は、どれも今期の業績予想を出していません。相場しだいで利益が大きく変わる業種です。配当も業績に連動させる会社が多く、岩井コスモは期末の配当を決算しだいとしています。前期の年間配当225円のうち、165円が期末の分でした。
同じ1か月で、銀行株も大きく下げています。銀行株と日銀の会合の関係は地銀株の記事で数えました。
明日から証券会社の決算が続く
表の会社の7〜9月の決算は、10月28日の野村と松井証券から11月9日のマネックスまで続きます。4〜6月からどれだけ利益が減ったかが、数字で出そろいます。
野村ホールディングス・松井証券
見る数字
- 7〜9月の利益が、4〜6月からどれだけ減ったか
- 個人の株の売買から入る手数料
- 配当の決め方(中間配当の額)
岡三・丸三・いちよし・水戸
1か月の下げが大きかった店舗の証券会社
大和証券グループ本社・東海東京
大手と店舗の証券会社
SBIホールディングス
ネット証券最大手を持つ会社
マネックスグループ
表の会社の最後
証券株の次の1か月
10月27日の終値→11月26日の終値の、37社の真ん中とTOPIXの差
3月末の配当の権利付き最終日
ここから1か月で、前例どおり負けるかを数える
予想:次の1か月も、証券株はTOPIXに負ける
証券株37社の真ん中は、10月27日の終値から11月26日の終値までの1か月で、TOPIXに負けると見ています。
ここでの「負ける」は、TOPIXほど上がらないという意味で、値下がりとは限りません。この1か月に当たる過去19回のうち、証券株の真ん中が値下がりしたのは8回で、ほかの負けはTOPIXほど上がらなかった回です。
理由は2つです。
- 前例の向きがそろっている:権利落ちの次の1か月は、19回中17回TOPIXに負けました。
- 大きく負けたあとも、取り返してこなかった:1か月でTOPIXより7ポイント以上負けた8回のうち、次の1か月で証券株がTOPIXに勝ったのは3回でした。
負けなかった回もあります。新型コロナで相場が急落したあとの2020年3月と、2024年9月は、次の1か月でTOPIXに勝ちました。外れるのは、証券株の真ん中がTOPIXより上げたときです。
で、儲かるのか
証券株のそろった下げは、相場の天井のサインではありませんでした。毎年のように起きてきた配当の権利落ちのあとの負けが、株の取引が減るなかで10年でいちばん大きく出ました
前例では、権利付き最終日に買った証券株は、配当を足しても2か月でTOPIXに負けてきました。配当を目当てに買う時期を考える材料になります。
証券株がそろって大きく下げる
→前例では天井のサインにならず
配当の権利落ちのあと
↓次の1か月もTOPIXに負けてきた
取引が急に増える・相場が急に戻る
↑証券株が取り返す余地
情報源
- 業種の分け方:日本取引所グループ「東証上場銘柄一覧」(業種「証券、商品先物取引業」の37社)
- 決算の数字・発表日・見出し・業績予想の有無:株探(各社の決算・業績のページ、2026年10月27日に確認)
- 岩井コスモの配当:岩井コスモホールディングス「剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ」(2026年10月23日)
- 株価:Yahoo Financeの日次終値(配当込み)。TOPIXはTOPIX連動ETF(1308)の配当込みの値動き
- 売買代金:Yahoo Financeの日次終値と出来高から計算(東証の内国株の合計・概算)
- 計算:証券株=各社の配当込みの騰落の真ん中(いま上場している会社。上場をやめた会社は入っていない)。権利付き最終日=月末の最後の取引日の2営業日前(2019年7月より前は3営業日前)。普段の2倍=前の250営業日の、1日の差の標準偏差の2倍
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。