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PBR1倍割れ問題とは?東証が上場企業に迫った「資本コスト経営」をやさしく解説

2026.07.03 ・ 執筆:フクリ
PBR1倍割れ問題とは?東証が上場企業に迫った「資本コスト経営」をやさしく解説

「あの会社はPBR0.8倍で割安」「東証がPBR1倍割れ企業に改善を要請」──日本株のニュースでよく見かける言葉ですが、そもそも何が問題なのでしょうか。この記事では、①PBR(株価純資産倍率)とは何か、②「1倍割れ」がなぜ問題視されるのか、③東京証券取引所が上場企業に求めていること、を順にやさしく整理します。

そもそもPBRってなに?

PBR(Price Book-value Ratio・株価純資産倍率)は、株価が会社の「解散価値」の何倍かを示す指標です。PER・PBRの基本記事で詳しく解説していますが、ここでも簡単におさらいします。

会社を今すぐ解散して、資産を全部売り、借金を返したら、株主の手元にいくら残るか──これが1株あたりの純資産(BPS)です。株価がこの純資産と同じならPBR=1倍。株価がそれより低ければPBR1倍割れ(=1倍未満)ということになります。

PBR1倍以上株価が会社の純資産と同じか、それより高く評価されている
PBR1倍未満会社を解散した方が、今の株価より価値が高いとみなされている
図:PBR1倍を境に、市場からの評価の意味合いが変わる。

なぜ「1倍割れ」が問題なの?

PBRが1倍を下回るというのは、極端に言えば「その会社を今すぐ解散して資産を株主に分配した方が、株を持ち続けるより得」と市場が評価している状態です。もちろん実際に解散する会社はほとんどありませんが、この状態が続くこと自体が「経営陣が株主のお金を効率よく使えていない」というシグナルとして受け取られます。

日本の上場企業には、長年この状態が珍しくありませんでした。現金や不動産をたくさん抱えながら、それを収益に結びつける戦略が弱く、市場から「もったいない会社」と見なされてきた面があります。

東証が動いた:「資本コストや株価を意識した経営」要請

2023年3月、東京証券取引所(東証)はプライム市場・スタンダード市場の上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。ざっくり言うと、「PBRが低いままの会社は、原因を分析して改善策を開示・実行してください」という異例の呼びかけです。

東証の要請(2023年3月〜)
現状分析自社のROE・PBRを把握する
計画の策定・開示改善に向けた方針を投資家に示す
継続的な取り組み一度出して終わりでなく更新し続ける
図:東証が上場企業に求めた3ステップ(2023年3月要請)。

この要請から3年が経った2026年時点で、プライム市場企業のうちPBR1倍割れの企業の割合は27%まで低下したと報告されています。要請前と比べると、高PBR・高ROE(自己資本利益率)の企業群が増え、低PBR・低ROEの企業群が減るという変化が見られます。開示の面でも、プライム市場では93%の企業が何らかの対応を開示済みとされ、単なる「開示して終わり」ではなく内容を更新し続ける企業も増えています(2026年2月末時点)。

プライム市場企業のPBR水準(2026年2月末時点)
プライム市場企業のPBR水準の内訳 27% PBR1倍割れ
PBR1倍割れ 27%  PBR1倍以上 73%。第一生命経済研究所調べ(2026年2月末時点・プライム市場)。要請前と比べ改善傾向にあるが、個別企業がこの基準を満たすかは会社ごとに異なる。

📝 念のため:これは市場全体の傾向であり、個別企業がPBR1倍を超えたかどうかは会社ごとに大きく異なります。「東証が要請したから全社が改善した」わけではありません。

会社は具体的に何をするの?

PBRを改善する方法は大きく分けて2つの方向があります。

  • 分子(株価)を上げる:収益力を高めて将来の成長期待を上げる、投資家への情報発信(IR)を強化する、など。
  • 分母(純資産)を最適化する:使い道の乏しい現金を設備投資やM&Aに回す、自社株買いで株数を減らす、配当を増やして株主に還元する、など。

自社株買いは、PBRの計算式の分母(純資産)を減らす効果があり、PBR改善策としてよく使われる手法の一つです。詳しくは自社株買いの記事で解説しています。

投資家として、どう受け止める?

強気の見方:PBRが低い会社が改善に本気で取り組めば、株価の見直し(再評価)が起きる余地があります。「割安さ」に「改善の動き」が加わることで、株価が動くきっかけになり得ます。

慎重な見方:PBRが低いままの理由は会社によって様々で、開示を出しただけで実態が変わらない「見せかけの対応」も混じる可能性があります。低PBRというだけで「割安だから買い」と短絡的に判断するのは危険です。PER・PBRの使い方の注意点にもある通り、指標はあくまで一つのものさしにすぎません。

フクリの見方

  • PBR1倍割れは、単なる「割安・割高」の話ではなく、「経営陣が株主のお金をどれだけ有効に使っているか」を映す指標だと捉えると理解しやすいです。
  • 東証の要請は日本市場全体の構造改革の一環であり、数年単位でじわじわ効いてくるテーマです。株価が動く理由を理解する上でも、こうした制度的な背景を知っておくと役立ちます。
  • 個別企業を見る時は、PBRの数字だけでなく、「なぜ低いのか」「改善策は具体的か」まで確認する姿勢が大切です。

まとめ(3行)

  • PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回ると、市場が「会社を解散した方が価値がある」と評価している状態を意味する。
  • 東証は2023年3月から上場企業に資本コストや株価を意識した経営を要請しており、2026年時点でPBR1倍割れ企業の比率は改善傾向にある。
  • 改善策には収益力の向上やIR強化、自社株買い・配当といった手段があるが、開示だけで実態が伴わないケースもあり、数字だけで判断しないことが大切。

情報源・参考

  • 東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」:jpx.co.jp
  • 第一生命経済研究所「東証の『資本コストや株価を意識した経営』要請から3年」:dlri.co.jp
  • BUSINESS LAWYERS「東京証券取引所『資本コストや株価を意識した経営』に関する4年目の取組み」:businesslawyers.jp
免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
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