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火星の通信を支えているのは2001年に上がった機体——NASAが理由を書かなかった最大7億ドルの行き先

2026.09.04 ・ 執筆:フクリ
火星の通信を支えているのは2001年に上がった機体——NASAが理由を書かなかった最大7億ドルの行き先

📌 本記事は公開情報(NASAおよび各社の公表資料、報道、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年9月4日時点のものです。

火星の探査車が撮った写真は、直接地球には届きません。

上空を回っている機体が受け取って、地球へ送り直しています。 その機体が古くなっています。

その置き換えを、NASAが発注しました

受注したのはBlue Origin。 競っていたRocket Labは敗れました。NASAは選定理由書を公表していません。

何が決まったのか

用語を1つ置きます。

確定固定価格契約は、決めた金額の中で仕事を仕上げる契約です。費用が想定を超えても、追加で請求できません。 逆に安く作れれば、その差は受注側の利益になります。

NASAは火星通信網(Mars Telecommunications Network)の開発を、Blue Originに発注しました。

金額最大7億ドル(確定固定価格)
納入期限2028年12月31日
運用開始2030年に火星で
範囲設計・開発・統合・打ち上げ・運用のすべて
運用管理NASAのSCaN(宇宙通信・航法)プログラム

Blue Originは設計から運用までを一括で引き受けます。 機体は同社のブルーリングという高機動の宇宙機がもとになると報じられています。

搭載するのは科学データ・画像・航法情報の中継機能と、20キログラム分の観測機器またはキューブサットです。

⚠️ 「最大7億ドル」は上限であって、確定額ではありません。

なぜ、いま置き換えが要るのか

中継機が寿命に近づいているからです。

  • マーズ・オデッセイ(2001年打ち上げ)は現役で最も古い火星探査機。燃料が残り少なく、姿勢を保つ装置が2012年に1つ壊れて予備がありません
  • MRO(2005年打ち上げ)は2030年代までは動く見込みですが、1機ですべてを背負うことはできません
  • MAVEN(2013年打ち上げ)も任務の終わりが近づいています

そして、置き換えの計画がありませんでした。

探査車や着陸機をいくら増やしても、上空で受け取る機体が無ければデータは地球に届きません。 火星の通信は、地上の設備でいえばiPhoneより前の世代で回っています。

軌道上の設備を後から手当てする事業の広がりは宇宙のAIデータセンター、見るべきは「何機打ち上げるか」ではないに、使い終わった機体を片づける側の動きは使い終わった衛星を「回収してもらう」時代が来るにまとめています。

米国では、誰の損得になるのか

この契約は、8社の中からの選定でした。

入札できたのは、2024年と2025年の商業火星サンプルリターン研究に参加した8社に限られていました。 2025年7月に成立した予算調整法が、この事業の資金と入札資格の両方を縛っています。

表に出ていた対抗馬はRocket Labです。

どちらの主張が効いたのかは分かりません。 NASAが理由を公表していない以上、ここから先は推測になります。

落選した日、株価は動いていませんでした

Rocket Labの終値を並べると、こうなります。

日付終値
2026年8月27日67.53ドル
2026年8月28日64.39ドル
2026年8月31日63.92ドル
2026年9月1日62.54ドル
2026年9月2日(発表日)63.10ドル

発表があった日、終値は前日より上がっています。 下げていたのはその前の週でした。

⚠️ この動きを今回の落選で説明することはできません。 別の材料でも株価は動きますし、取引時間中の値動きは終値からは分かりません。

それでも、「大型契約を逃した日に終値が下がらなかった」という事実は、市場がこの結果をどう受け止めたかを考える材料になります。

Blue Originの資金調達についてはベゾスのBlue Origin、創業以来初の外部調達100億ドルにまとめています。

日本では、誰の損得になるのか

この契約に日本企業は入っていません。 ただし、同じ仕事ができる会社は日本にもあります。

  • NECは「はやぶさ2」など深宇宙探査機の本体を手がけてきました
  • 三菱電機は衛星のバスと通信機の実績を持ちます

深宇宙の通信は、地球周回とは別の技術です。 距離が桁違いに長く、電波は弱く、遅延は片道で数分から20分以上になります。日本はその経験を持っている数少ない国の1つです。

遠くの小さなものを見る技術に日本の資本が入った例は住友商事とSBIが、累計1,000万ドルの米スタートアップに出資しましたにあります。

⚠️ 今回の契約に両社がかかわるという情報はありません。 能力の話であって、受注の話ではありません。

宇宙関連の株価

三菱電機が欧州の打ち上げ会社に出資した件はスペインのロケットに、三菱電機が2回続けて最大の金を出したで扱いました。

関連企業と日本の接点

確度で3段に分けています。

区分企業上場この件での位置
① 契約の当事者Blue Origin未上場受注側。設計から運用まで一括。個人は直接買えません
① 契約の当事者NASA政府機関発注者。選定理由書は公表していません
② 落選した側ロケットラボ米国(RKLB)Explorerを提案。ESCAPADE双子機の実績を訴えていました
③ 同じ能力を持つ日本企業NEC東証(6701)深宇宙探査機の本体
③ 同じ能力を持つ日本企業三菱電機東証(6503)衛星のバスと通信機
③ 同じ能力を持つ日本企業IHI東証(7013)固体ロケットと宇宙機器

株価は上の図で見ています。

フクリの見方

この契約で決まったのは、火星の通信を1社が丸ごと持つ形になったことだという見立てです。

理由は1つです。設計・開発・統合・打ち上げ・運用が、すべて同じ会社に入っています。 これまでNASAは探査機ごとに別の会社へ発注し、通信は副次的な機能として積んできました。通信そのものを事業として切り出し、1社に任せたのは新しい形です。

だから7億ドルという金額より、「誰が火星の回線を持つか」が決まったことのほうが大きいと見ています。

敗因は分かりません

Blue Originは「月でやっていることを火星で使い回せる」と説明し、Rocket Labは「月の案件を抱えていない身軽さ」を訴えていました。 正反対の売り込みで、規模を押した側が勝ちました。

⚠️ ただしNASAは選定理由書を公表していません。 「規模の論理で決まった」というのはこの記事の推測であって、確認された事実ではありません。 価格が決め手だった可能性も、技術評価の差だった可能性もあります。

検証できる材料が、ほとんど残っていません

入口は法律で8社に絞られ、出口の選定理由は公表されていません。

入る前と決まった後の両方が見えない契約で、外から確かめられるのは金額と納期だけです。

この見立てが外れる3つの条件

では、何を見ていればいいのか

見るものどこで何が分かるか
選定理由書が出るかどうかNASAの調達情報敗因の推測が検証できます
ブルーリングの製造の進み方Blue Originの発表2028年12月31日に間に合うか
オデッセイとMAVENの運用終了NASAの発表中継が細る速さ。予定より早ければ、2030年でも遅いことになります

納期どおりに進むなら、この見立ては維持されます。 逆に2機目の発注が別の会社に出れば、話は変わります。

まとめ(3行)

情報源

  • NASA「NASA Selects Blue Origin as Mars Telecommunications Network Provider」(2026年9月)
  • Via Satellite、GeekWire、Space.com、Payload の各報道
  • NASA および Scientific American、The Planetary Society による火星中継機の現状(オデッセイ2001年・MRO 2005年・MAVEN 2013年)
  • Yahoo Finance(株価の週次終値・2025年9月〜2026年9月4日/日次終値・2026年8月〜9月2日)
免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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