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日本の「ヨウ素独占」は本当か?ペロブスカイト太陽電池と千葉かん水資源の投資地図

2026.07.11 ・ 執筆:フクリ
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📌 この記事は公開情報(経済産業省・USGS・各社の公表資料など)をもとにした情報提供・解説です。数値・固有名詞は執筆時点(2026年7月10日〜11日)で確認できた情報にもとづくもので、状況は今後変わり得ます。

「半導体の特殊ガスCOSを日本が独占している」という噂を検証した前回の特集に続き、今回はヨウ素という資源を取り上げます。「日本はヨウ素を独占していて、ペロブスカイト太陽電池が普及すれば日本企業が総取りする」——そんな話を見かけたことはないでしょうか。調査に使ったスライド資料を記事の上部にまとめているので、まずはそちらに目を通してから読み進めると理解しやすいと思います。

先に結論を言うと、独占という表現はやはり言い過ぎでした。日本は世界2位のヨウ素生産国であり、埋蔵量や国内サプライチェーンの強さでは確かに優位に立ちますが、生産量そのもので世界一なのはチリです。さらに、ペロブスカイト太陽電池が実際に使うヨウ素の量を試算すると、日本の年間生産量に対してごくわずかであることも分かりました。「独占だから買う」ではなく、もう一段掘り下げた視点が必要なテーマです。

ヨウ素とペロブスカイト太陽電池の関係

ペロブスカイト太陽電池は、シリコンの代わりに「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造の材料で光を電気に変える次世代の太陽電池です。薄くて軽く、フィルムのように曲げられるのが特徴で、重い設備を置けなかった工場の屋根や壁面、窓などにも設置できると期待されています。経済産業省は次世代型太陽電池戦略の中で、この技術を日本発の産業として育てる方針を示しています。

ここで使われる代表的な結晶は「ABX₃」という構造を持ち、AとBの位置には有機分子や鉛が、Xの位置にヨウ素(またはその一部)が入ります。つまりヨウ素は添加物ではなく、発電層そのものを構成する主要元素の一つです。一方でヨウ素には「安定化しにくい」という難点もあり、時間の経過とともにヨウ素が動いて劣化を引き起こすことが、複数の学術レビューで長期耐久性の課題として指摘されています。ヨウ素は必要不可欠な材料であると同時に、扱いを誤ると劣化の原因にもなる材料、という二面性を持っている点は押さえておきたいところです。

なお発電層そのもの以外にも、ヨウ素は「前駆体」(発電層をつくるための原料化合物。ヨウ化鉛や有機ヨウ化物など)や、電荷を電極へ運ぶ「正孔輸送材料」(発電層で生じたプラスの電荷を取り出す補助材料)の一部にも使われます。この記事の後半で紹介する企業には、粗ヨウ素そのものを扱う会社だけでなく、こうした加工後の材料を扱う会社も含まれます。

ペロブスカイト太陽電池の投資テーマは3層構造
資源粗ヨウ素の生産・精製(千葉のかん水、チリの硝石鉱床)
量産実装フィルム型モジュールの製造・施工(積水化学など)
高付加価値材料高純度前駆体・機能材料・封止材(日本精化など)
図:ペロブスカイト関連の投資機会は「資源」だけでなく3つの層に広がっている。本記事はこの3層構造に沿って整理する。

「日本独占」説を検証する

世界の生産量で見ると、日本は2位

米国地質調査所(USGS)が2026年2月に公表した最新の資料によると、2025年のヨウ素生産量はチリが世界最大で、日本は僅差ではなく明確な2位という結果でした。米国を除く世界生産のうち、チリだけでおよそ3分の2を占めるとUSGSは説明しています。

2025年生産量(推計)報告埋蔵量
チリ約23,000トン約750,000トン
日本約9,000トン約4,900,000トン
トルクメニスタン約800トン約70,000トン
イラン約700トン約40,000トン
アゼルバイジャン約210トン約170,000トン

(米国オクラホマ州も主要な生産地ですが、USGSは企業秘密を理由に生産量を非開示としています)

この表からも分かる通り、年間の生産量そのものではチリが世界最大です。経済産業省・資源エネルギー庁は日本のヨウ素の世界シェアを約30%、世界2位と説明しており、これは「独占」ではなく「有力な2番手」という位置づけが正確です。

ここで「生産量」と「埋蔵量」の違いにも触れておきます。生産量はその年に実際に採れた量、埋蔵量は今の技術・価格で採算が合う形で将来採れると見込まれる量の推計です。日本の報告埋蔵量は約490万トンとチリ(約75万トン)を大きく上回りますが、これは「毎年たくさん採れる」ことを意味するのではなく、「長期にわたって採り続けられる可能性が高い」という将来の余地を示す数字です。実際に増産できるかは、設備投資や採取に伴う地盤沈下対策(千葉県が監視・規制を行っています)といった別の制約にもよります。

日本のヨウ素は、天然ガス鉱業会などの資料によると、千葉県の地下約200〜2,000mに存在する「かん水」(太古の海洋生物由来の有機物が長い年月をかけて濃縮した地下水)から、天然ガスの副産物として採取されています。千葉県だけで日本の生産量の約8割、世界生産のおよそ4分の1を占めるとされ、海外の主要産地(チリの硝石鉱床=硝酸塩を含む鉱物の地層、米国オクラホマ州のかん水)とは成り立ちの異なる資源です。

日本の本当の強みは「独占」ではなく「サプライチェーンが国内で閉じやすいこと」

経済産業省の資料は、ヨウ素の産出量そのものよりも、精製・化合物化・フィルム製造・施工までを国内でつなぎやすい体制づくりを政策上重視していると読み取れます。米国向けヨウ素輸入のうち日本が占める割合は2021〜2024年平均で約11%(チリは約88%)とUSGSは示しており、日本は世界2位の生産国であると同時に、チリに次ぐ規模の輸出国でもあります。「独占」という強すぎる表現よりも、「資源から製品まで国内で完結させやすい、数少ない国の一つ」と理解するのが実態に近いといえるでしょう。ただし、国内で完結しやすいことがそのままコスト競争力や量産の成功を保証するわけではない点には注意が必要です。

ペロブスカイト普及で、ヨウ素はどれくらい必要になるのか

ここが今回の調査で最も重要な発見です。まず「1GW」とは発電設備の容量(最大出力)を表す単位で、実際に1年間に発電した電力量そのものではありません。標準的な日射条件(1平方メートルあたり1,000W)のもとで、変換効率20%のモジュールなら1kWの容量を得るのに約5平方メートルが必要になる、という計算が試算の出発点です。

経済産業省の資料が示す代表的な材料構成(ペロブスカイト層の材料量が1平方メートルあたり約1.6g、うちヨウ素が重量比61.4%)をこの面積に当てはめると、発電容量1GWぶんのモジュールをつくるのに必要なヨウ素は、発電層に含まれる理論量としておよそ4.9トンという結果になります。これはあくまで発電層に「含まれる」理論量であり、製造時の歩留まりロス(作った製品のうち実際に良品として使える割合の目減り分)や交換部材、混合ハライド化(ヨウ素の一部を臭素などに置き換えて特性を調整すること)などによる化学組成の違いは含んでいません。膜厚の仮定が異なる別の独立した試算でも、1GWあたり3〜6トン程度という近い結果が得られており、計算方法が違っても同じオーダー(数トン単位)に収まる点は、この数字が桁として大きく外れていないことを示しています。

日本の年間ヨウ素生産量 vs 2040年累計導入分の理論含有量 9,000トン 日本の年間生産量 (2025年単年・USGS) 約100トン 2040年までの累計20GW導入分 に含まれるヨウ素の理論量(累計)
図:左は日本の2025年「1年間」の生産量、右は2040年までに「累計」で導入される想定の全設備が含む理論量。単年生産量と累計導入量という異なる期間の数字を比較している点に注意(経産省の材料構成データをもとに試算した理論値で、歩留まりや組成変化は含まない)。

つまり、2040年までの累計導入分をすべて足し合わせても、その理論含有量は日本の「1年分」の生産量の約1%にとどまるということです。「ペロブスカイトが普及すれば粗ヨウ素の量が不足する」という仮説は、少なくとも量だけで見る限り近中期では成立しにくいと考えられます(高純度化合物の生産能力や価格、地政学的なリスクまで含めた供給網全体の余力を保証するものではありません)。

この試算が示すのは、投資テーマとしての注目点が原料の数量そのものよりも、太陽電池グレードまで高純度化した化合物(ヨウ化鉛や有機ヨウ化物など)、耐久性を左右する封止材、量産・施工のノウハウに向かう可能性がある、ということです。K&Oエナジーグループが掲げる2027年のヨウ素・ヨウ化カリウム販売目標(年1,900トン)と比べても、1GWあたりの理論含有量4.9トンは0.3%に満たない規模にとどまります。

なお、数量だけでなく価格の動きにも触れておきます。USGSによると、2025年のヨウ素の米国輸入平均単価は1kgあたり約68ドルで、2021年の約33ドルから4年でおよそ倍増しました。スポット価格(当日取引される市場価格)も同年の最初の10か月平均で約73ドル/kgと、前年より上昇しています。原料の「数量」インパクトが小さいとしても、需給が引き締まれば「価格」がヨウ素メーカーの収益を左右する要因になり得る、という視点も押さえておきたいところです。

日本の勝ち筋は「シリコンとの正面対決」ではない

ペロブスカイト太陽電池のもう一つの競争相手は、研究段階の代替技術ではなく、すでに巨大な供給網を持つ中国製シリコンパネルです。経済産業省自身も、日本の太陽電池の世界シェアが2000年頃の約50%から、現在は1%未満まで低下した経緯を振り返り、量産投資や需要創出のスピード不足を要因として挙げています。同じ土俵で価格競争をすれば、過去のシリコン太陽電池と同じ結果になりかねません。

そのため日本企業が狙っているのは、価格競争ではなく「シリコンパネルを設置できなかった場所」に新たに市場をつくることです。具体的には、耐荷重の小さい工場・倉庫の屋根、壁面、窓、インフラ設備など、重い架台や補強工事が要らない場所に、軽量で曲げられるフィルム型を導入する戦略です。環境省の2026年度導入支援策も、設置場所の耐荷重が1平方メートルあたり10kg以下であることを主な要件の一つとしており、支援策の設計自体がこうした新規設置市場を意識したものになっています(実際にこの市場が想定通り広がるかどうかは別途確認が必要です)。

日本の主な政策・企業ロードマップ
2026年度積水化学が現有設備で限定供給を開始
2027年度積水化学が100MWラインを稼働予定
2030年GW級供給体制・14円/kWhが政策目標
2040年国内累計20GW導入が政府目標
図:経済産業省・積水化学の公表資料をもとに整理。いずれも計画段階の目標であり、実現を保証するものではない。

関連企業一覧(関わり方別)

以下は今回の調査で公開資料から関与を確認できた企業を、事業との関わり方に応じて整理したものです。PER(予想株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)は、いずれも株探で2026年7月10日15時30分時点にそろえて確認した参考値です。ただしこれらの指標だけでは割安・割高を判断できず、赤字企業や事業構成の異なる複合企業間を単純比較することもできない点にご注意ください。

① フィルム型・タンデム型のセル製造を自社で手がける企業

(「タンデム型」とは、ペロブスカイトとシリコンなど異なる材料を重ねて発電効率を高める方式のことです)

銘柄ティッカー事業との接点参考指標(2026年7月10日時点)
積水化学工業4204フィルム型「SOLAFIL」の事業化を2026年3月に発表。2027年度に100MWラインを稼働させる計画(会社発表)予想PER約13.8倍、PBR約1.24倍
カネカ4118自社のシリコンセルを使ったタンデム型を開発中。2028年度の販売開始を計画(会社発表)予想PER約10.7倍、PBR約0.68倍

② ヨウ素そのものを生産・供給する企業

銘柄ティッカー事業との接点参考指標(2026年7月10日時点)
K&Oエナジーグループ1663千葉のかん水由来ヨウ素を生産。2025年のヨウ素事業売上は約150.9億円(会社決算)予想PER約15.6倍、PBR約0.92倍
伊勢化学工業4107国内最大級のヨウ素メーカー。AGCが議決権53.5%を保有(AGC・同社IR)予想PER約35.6倍、PBR約4.76倍、時価総額約1,938億円
AGC5201伊勢化学工業を連結子会社として保有。ガラス・化学品が中心事業で、ヨウ素関連は事業全体の一部予想PER約17.7倍、PBR約0.91倍

③ 高純度材料・部材を供給する企業

銘柄ティッカー事業との接点参考指標(2026年7月10日時点)
日本精化4362正孔輸送材料「Spirokite」を製造・販売(会社ウェブサイト)。2026年3月期は主力のファインケミカル分野が営業増益予想PER約10.8倍、PBR約1.10倍
コニカミノルタ4902フィルム型の寿命を左右するバリアフィルムを開発中(会社発表)予想PER約10.1倍、PBR約0.54倍

④ 出資・施工など間接的に関わる企業

銘柄ティッカー事業との接点参考指標(2026年7月10日時点)
日揮ホールディングス1963フィルム型の量産技術を持つEneCoat Technologies(非上場)へ出資。独自の施工法を開発中(会社発表)予想PER約12.2倍、PBR約1.32倍

伊勢化学工業はヨウ素事業の売上比率が高く、2026年2月には子会社を通じて高純度ヨウ化鉛(ペロブスカイトの前駆体材料)の生産工場を2027年までに新設する基本合意(MOU)を結んだと発表しています。一方で予想PER35倍台・PBR4倍台という評価はすでに他社より高い水準にあります。前述の通りヨウ素の原料数量そのものの効果は小さいため、この計画の受注状況や採算がどう開示されるかが、今後の分析の材料になります。K&Oエナジーグループについては、ペロブスカイト向けの数量効果だけでなく、医薬品・造影剤向けなど既存用途を含めたヨウ素需給全体の動きも確認事項として挙げられます。

個人投資家が直接は買いにくい先(非上場・海外上場)

企業国・市場事業との接点備考
Oxford PV英国・非上場2024年に世界初の商用ペロブスカイト・タンデムパネルを出荷したと自社発表他社への特許ライセンス供与も進めているとされるが、契約先の詳細は本記事で個別に確認できていない
EneCoat Technologies日本・非上場フィルムを巻き取りながら連続生産する「ロール・ツー・ロール」量産技術でNEDOの支援採択を受けたと発表日揮ホールディングスが出資
GCL Technology中国・香港上場昆山でGW級生産拠点を稼働させたと自社発表2025年通期は最終赤字。生産能力の大きさと採算が取れているかは別問題
SQMチリ・米国ADRとして取引可能世界最大級のヨウ素・リチウム企業。2025年のヨウ素関連売上は約10.4億ドル、世界販売シェアは推計37%(Form 20-Fより)ヨウ素価格に加え政治・為替・リチウム事業の動向など、日本企業とは異なる要因で株価が動く

Oxford PV・EneCoat Technologiesは非上場のため個人投資家が直接株式を購入することはできません。GCL Technologyは香港市場、SQMは米国ADR(外国企業の株式を米国市場で売買できるようにした預託証券)を通じた取引が可能ですが、いずれも国内の証券会社で外国株取引口座の開設が必要です。

⚠️ テーマ株として慎重に扱うべき例

倉元製作所(5216)は、ガラス・フィルム両用の年産1MW設備を計画していますが、2026年6月の開示では資金調達の遅れや設備到着の遅れ、追加資金需要も明らかにしています。同時期の中国企業との協定も正式契約ではなく、出資・量産・収益化を保証しないと自ら明記しています。「量産設備」「提携」といった見出しだけで評価せず、正式契約・資金完了・製品認証・顧客売上まで確認する姿勢が欠かせません。

なぜ、まだ大きなテーマとして意識されにくいのか

政策支援も技術開発も前進しているにもかかわらず、関連銘柄が「次世代エネルギーの本命」として大きく話題になっている様子は、今のところあまり見られません。これは技術が劣っているからではなく、株式市場が評価に使う情報がまだ十分にそろっていないから、と考えられます。考えられる要因を整理すると、次の通りです。

テーマとして意識されにくい、考えられる5つの要因
要因内容
① 事業規模がまだ小さい積水化学など主要企業にとっても、ペロブスカイト事業は連結決算の中でまだ小さく、翌年度以降の利益への寄与を数字で見積もりにくい
② 原料の数量インパクトが小さい前述の通りヨウ素そのものの需要拡大は限定的で、原料メーカーの業績を単独で押し上げる規模ではない
③ 利益がどの工程に残るか未確定資源・材料・セル製造・施工のうち、どこが最も大きな利益を得るのか、業界内でもまだ決着していない
④ 長期の実績データが乏しいシリコン太陽電池と違い屋外での長期劣化データが限られ、20〜30年の保証を前提にした採算計算がしづらい
⑤ 「旗艦銘柄」が見当たらない関連企業の多くは化学・住宅・電子材料などの複合企業で、ペロブスカイト単体の業績が連結決算に埋もれやすい
図:政策・技術面の前進に対して、株式市場側の評価材料がまだ追いついていない可能性がある要因を整理(特定銘柄の株価水準を断定するものではありません)。

これらが今後解消されていく兆しとしては、①量産ラインの歩留まりや稼働率の公表、②公共施設や企業との複数年契約、③国際認証や長期保証の確立、④建築規制・補助制度の整備、⑤海外メーカーへの材料・技術ライセンス供与、が挙げられます。ニュースを追う際は、効率記録の更新よりも、実出荷量・受注残・投下資本利益率(ROIC。投じた資金に対してどれだけ利益を生み出せているかを示す指標)といった数字が出てきているかどうかを確認するとよさそうです。

技術・事業化の進み方に関する3つのシナリオ

以下は株価の見通しではなく、技術や事業化がどう進むかについての観察シナリオです。実際にどの数字が確認できるかによって、企業ごとの評価材料も変わってきます。

シナリオ想定される技術・事業の姿確認したいポイント
強気100MWラインが計画通り安定稼働し、公共・大手企業からの複数年契約や海外ライセンスが具体化。2040年に20GWを超える導入が視野に入る歩留まり、非補助金案件の受注、投下資本利益率の開示状況
中立(基準)フィルム型は軽量屋根・壁面・公共施設など限定市場で段階的に普及。業績への寄与も段階的資源・量産・材料それぞれの工程で、事業進捗の節目ごとの開示状況
慎重耐久性・歩留まりの課題が長引き、中国の低価格攻勢で採算確保が難しくなる。量産計画が延期される量産投資の遅延や追加資金調達の有無、既存事業への影響

いずれのシナリオが実現するにせよ、確認したいのは「技術の凄さ」よりも、実出荷量・受注残・補助金なしでの採算・投下資本利益率といった、数字で裏付けられる情報です。

フクリの見方

  • 「日本がヨウ素を独占している」という言い切りは、調べてみると正確ではありませんでした。華やかな一言ほど、一次資料に当たって確かめる価値があるというのは、COS特集に続いてこのテーマでも実感したところです。
  • ヨウ素の数量そのものは、ペロブスカイト太陽電池の普及を左右するボトルネックにはなりにくい、というのが今回の試算の結論です。投資の視点としては、「資源国だから」ではなく「高純度材料・量産技術・施工までを事業として積み上げられるか」を見ていく必要があると考えています。
  • 政策の目標年限(2027年・2030年・2040年)はまだ先の話です。関連企業の株価は既存事業の業績にも大きく左右されるため、テーマだけで判断せず、決算での事業別開示や受注動向を継続して確認することが、判断材料を増やすうえでのポイントになりそうです。

まとめ(3行)

  • 日本のヨウ素生産量は世界2位(約9,000トン、2025年)で、世界最大はチリ(約23,000トン)。「独占」は誇張であり、日本の強みは資源から製品までを国内で一貫できる点にある
  • ペロブスカイト太陽電池1GWあたりの必要ヨウ素量は約4.9トンと試算され、2040年の国内累計20GW目標を満たしても日本の年間生産量の約1.1%にとどまる
  • 投資の焦点は原料の数量ではなく、高純度化合物・機能性材料・量産技術・施工にあり、関連企業ごとに事業の進捗と実利益の開示を確認する視点が欠かせない

投資の基礎を確認したい方は、株価の評価倍率を扱ったPER・PBRの読み方の記事や、グロース株・バリュー株の視点をまとめた成長株と割安株の違いの記事、個別テーマに集中しすぎないための分散投資の考え方の記事もあわせてご覧ください。半導体材料の「独占」説を検証したCOS特集、AIと資源をテーマにしたAI×水資源の特集も、あわせてどうぞ。

情報源

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

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