EBITDAとは?赤字の会社が「黒字」に見えるカラクリと、その正しい使いどころ

決算のニュースを読んでいると、こんな文に出会うことがあります。
「営業損益は赤字だったが、調整後EBITDAは黒字を確保した」
赤字なのか黒字なのか、どっちなんだ——と思いますよね。実はどちらも正しいのですが、見ている場所が違います。
この記事では、EBITDAが何を足し戻した数字なのか、そしてその足し戻しで何が見えなくなるのかを、実際の決算の数字を使って確かめます。
EBITDAとは何か
EBITDA(イービットディーエー)は、英語の頭文字を並べたものです。
Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization =利払い・税金・減価償却を引く前の利益
つまり、利益からいったん引いた「利息・税金・減価償却」を、もう一度足し戻した数字です。ざっくり言えば「本業でどれだけ現金を稼ぐ力があるか」を示そうとした指標です。
ここでいちばん大事なのは、減価償却を足し戻しているという点です。減価償却とは、大きな設備を買ったとき、その費用を何年かに分けて計上していく会計の手続きのこと(→減価償却のしくみ)。EBITDAは、この費用を「なかったこと」にして計算します。
実例:赤字が黒字に見える瞬間
言葉だけだと分かりにくいので、実際の決算で確かめます。2026年6月にNasdaqへ上場したSpaceXの、2026年4〜6月期です(この決算の中身は別記事で詳しく扱っています)。
営業損益は1.43億ドルの赤字。ところが調整後EBITDAは35.38億ドルの黒字です。差は36.8億ドル。
このお金は、どこかから湧いてきたわけではありません。 内訳はこうです。
- 減価償却 28.48億ドル——買った設備の費用を、今期ぶん計上したもの
- 株式報酬など 8.31億ドル——社員に株で報酬を払ったぶん
どちらも今期に現金が出ていったわけではない費用です。だから「現金を稼ぐ力を見るなら足し戻そう」という理屈になります。理屈としては筋が通っています。
問題は、足し戻したあとの数字だけを見ていると、何が起きるかです。
そもそも、なぜこんな数字が生まれたのか
EBITDAが広まったのは1980年代のアメリカだと言われます。目的は主に3つでした。
ここは押さえておく価値があります。EBITDAはもともと「会社を買う側・お金を貸す側」の道具でした。 「この会社は借金の利息を払い続けられるか」を測るための数字です。個人投資家が「もうかっているか」を知るための数字として作られたわけではありません。
EBITDAで見えなくなるもの
足し戻した3つは、現金が出ていかない費用ではありますが、いずれ必ず払うものです。
| 足し戻すもの | いつ払うか | 無視するとどうなるか |
|---|---|---|
| 減価償却 | 設備を買ったときにすでに払っている。あるいは、いずれ買い替えるときに払う | 設備を買い続けないと事業が続かない会社ほど、実力を大きく見誤る |
| 利息 | 借金があるかぎり毎期払う | 借金まみれの会社と無借金の会社が、同じに見える |
| 税金 | 黒字なら毎期払う | 手元に残るお金を多く見積もってしまう |
この点をもっとも有名なかたちで批判したのが、投資家のウォーレン・バフェット氏です。バークシャー・ハサウェイの2000年の株主への手紙に、こう書かれています。
EBITDAへの言及には身震いさせられる——経営陣は、設備投資の代金を歯の妖精が払ってくれるとでも思っているのだろうか。 (バークシャー・ハサウェイ 2000年 株主への手紙)
「歯の妖精」は、抜けた乳歯を枕の下に置くとコインを置いていってくれる、という欧米の言い伝えです。設備の代金は誰かが魔法で払ってくれるわけではなく、会社が現金で払っている——という皮肉ですね。
実際、先ほどのSpaceXの例では、同じ四半期に184億ドルの設備投資をしています(→設備投資(CAPEX)とは)。減価償却28億ドルを足し戻して「黒字」に見せた一方で、その6倍以上の現金が設備に出ていっているわけです。
💡 だからEBITDAは、フリーキャッシュフローとセットで見ると急に意味が分かります。 EBITDAは「設備投資を引く前」、FCFは「設備投資を引いたあと」。この2つの差が大きい会社ほど、稼いだお金が設備に消えているということです。
「調整後」がつくと、さらに要注意
ニュースでよく見るのは、ただのEBITDAではなく調整後EBITDA(Adjusted EBITDA)のほうです。ここにもう一段の注意点があります。
EBITDAは、日本の会計基準にも国際会計基準(IFRS)にも、米国基準(US-GAAP)にも定義がありません。こうした指標を非GAAP指標と呼びます。
定義がないということは、何を「一時的な費用」とみなして足し戻すかを、会社が自分で決められるということです。リストラ費用、買収にかかった費用、訴訟の和解金——これらを「今回だけの特殊事情」として足し戻せば、EBITDAはいくらでも大きくなります。
もっとも、野放しというわけでもありません。米国ではSECがRegulation G などで規制しており、非GAAP指標を載せるならもっとも近いGAAP指標(営業利益など)を同じくらい目立つ形で示し、両者の差を説明することが求められます。SECが問題視してきたのは、まさに「調整後EBITDAだけを大きく見せて、GAAPの数字を小さく載せる」やり方です。
日本でも、IFRSを任意適用する企業を中心に非GAAP指標の開示が増えており、日本銀行の調査でもその傾向が分析されています。
フクリの見方:EBITDAは「単独では読まない」
編集部の立場を書きます。EBITDAは便利な指標ですが、単独で見るべき数字ではありません。必ず営業利益とセットで、できればフリーキャッシュフローとも並べて見るべきだと考えています。
理由は、EBITDAが良く見える会社ほど、その差の原因を確かめる価値があるからです。差が大きいということは、減価償却が大きい=設備にお金を使い続けている会社だということ。それが将来の成長につながる投資なのか、単に維持のために必要な出費なのかで、意味はまるで違います。
具体的には、こう見ています。
- まず営業利益を見る。 会計基準に定義があり、監査も通っている数字です。話の出発点はこちらにします。
- 次にEBITDAとの差を見る。 差=足し戻したもの。その正体(減価償却か、一時費用か)を確かめます。
- 最後にフリーキャッシュフローを見る。 設備投資を引いたあとに、本当に手元に残ったお金です。EBITDAが黒字でFCFが赤字なら、稼ぎより設備に出ていくお金のほうが多いということになります。
- 「調整後」の中身を確認する。 決算資料には必ずGAAP指標との対応表(reconciliation)が載っています。何を足し戻したのかは、そこに書いてあります(決算資料のどこを見るかは→決算書のやさしい読み方)。
- 同じ業種の会社どうしで比べる。 EBITDAは業種によって水準がまるで違います。ROE・ROAなどと同じで、異業種の数字を並べても意味がありません。
この見方が当てはまりにくい場面も書いておきます。 ソフトウェアのようにそもそも設備をあまり持たない会社では、減価償却が小さいためEBITDAと営業利益の差は小さく、あまり気にする必要がありません。逆に、通信・電力・データセンターのように設備が重い業種では、この差が決定的に重要になります。
そして最後に、いちばん誤解されやすい点を。 EBITDAが黒字であることは、倒産しないことの保証ではありません。利息も税金も設備の買い替えも、EBITDAの外側で現実に払う必要があります。「EBITDA黒字」は、あくまで「そこを引く前なら黒字」という意味です。
まとめ(3行)
- EBITDAは利息・税金・減価償却を足し戻した数字。実例では営業赤字1.43億ドルが、36.8億ドルの足し戻しで35.38億ドルの黒字に見えました。
- 足し戻した費用は消えたのではなく、いずれ現実に払うもの。バフェット氏は「設備投資の代金を歯の妖精が払うとでも思っているのか」と批判しました。
- EBITDAには会計基準の定義がなく(非GAAP)、何を足し戻すかは会社が決められます。営業利益とフリーキャッシュフローをセットで見るのが安全です。
数字の名前ではなく、その数字が何を引いた後なのかを見る癖をつけると、決算はぐっと読みやすくなります。いっしょに慣れていきましょう。
情報源・参考
- Berkshire Hathaway「2000 Chairman’s Letter」(EBITDAに関する記述):berkshirehathaway.com
- SpaceX「Reports Second Quarter 2026 Results」(2026年8月4日・営業損益、減価償却、株式報酬、調整後EBITDA、設備投資の実額):ir.spacex.com
- 米国証券取引委員会(SEC)Regulation G/Regulation S-K Item 10(e)(非GAAP指標の開示規制):sec.gov
- 日本銀行金融研究所「日本企業によるNon-GAAP指標の開示に関する特性分析」:imes.boj.or.jp
- 日本取引所グループ(JPX):jpx.co.jp
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。