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減価償却とは?耐用年数の決め方と、AI投資でいま論争になっている理由

2026.07.21 ・ 執筆:フクリ
減価償却とは?耐用年数の決め方と、AI投資でいま論争になっている理由

決算書を読んでいると、必ず出てくるのに何となく読み飛ばしてしまう言葉があります。減価償却です。

ざっくり言えば「高い物を買ったとき、その代金を何年かに分けて費用にしていく会計のルール」。地味な話に聞こえますが、いまこの地味なルールが、世界のAI投資をめぐる最大級の論争の火種になっています。争点は一言でいえば「AI用のサーバーは、何年で価値がなくなるものとして扱うべきか」。ここを3年と見るか6年と見るかで、巨大テック企業の利益の見え方が大きく変わってしまうからです。

この記事では、①そもそも減価償却とは何をしているのか、②耐用年数は誰がどう決めるのか、③定額法と定率法の違いを数字で、④なぜAI投資でこれが論争になっているのか、を順に見ていきます。

減価償却とは?──買った年に全部を費用にしない理由

たとえば会社が600万円の営業車を買ったとします。この600万円を、買った年に全額「費用」として計上してしまうと、その年だけ利益がガクンと減り、翌年からは車の費用がゼロになります。実際には車はその後も何年も働いてくれるのに、これでは各年の利益が実態からかけ離れてしまいます。

そこで、資産の代金を使える年数にわたって少しずつ費用にしていくのが減価償却です。国税庁は減価償却資産を「時の経過等によってその価値が減っていく」資産と説明しています。逆にいえば、時間が経っても価値が減らない土地や骨とう品は減価償却の対象になりません

減価償却の考え方(4ステップ)
資産を買う設備・建物・車・パソコンなど、長く使うものを取得する
使える年数を決める税務上は資産ごとに法定耐用年数が定められている
年ごとに分けて費用にする定額法や定率法のルールで各年の償却費を計算する
利益に反映される償却費は費用なので、その分だけ各年の利益が小さくなる
減価償却のおおまかな流れ。実際の会計処理は資産の種類や企業の会計基準によって異なる。

ここで大事なのは、減価償却費は現金が出ていかない費用だという点です。お金を払ったのは資産を買ったときの一度きりで、その後の各年に計上される償却費は帳簿の上だけの費用。だからこそ「利益は出ているのに手元の現金は増えない」「逆に赤字なのに現金は回っている」といったズレが生まれます。決算書の読み方については決算書の読み方でも触れているので、あわせてどうぞ。

耐用年数は誰が決めるのか

「何年で費用にするか」を決めるのが耐用年数です。日本では税務上、資産の種類ごとに法定耐用年数が定められています。主なものを挙げます。

資産の例法定耐用年数
建物(鉄筋コンクリート造・事務所用)50年
自動車(一般用の普通乗用車)6年
パソコン(サーバー用のものを除く)4年
電子計算機(サーバー用のパソコンなど)5年

出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」および確定申告書等作成コーナーの耐用年数表(2026年7月時点で確認)。実際の適用は資産の細目・用途によって異なります。

パソコンが4年、サーバーが5年というのは、いまのAI論争を理解するうえでの重要な手がかりになります。日本の税務でも「コンピューターは数年で古くなるもの」として扱われているわけです。

ただし注意したいのは、税務上の法定耐用年数と、企業が決算書で使う会計上の耐用年数は必ずしも同じではないという点です。会計上は「その資産を実際にどれくらい使うか」という企業の見積もりにもとづいて決められます。この裁量の幅が、後で見る論争の舞台になります。

定額法と定率法──2つの分け方

分け方には主に2つの方法があります。国税庁の説明にそって見てみましょう。

  • 定額法:償却費の額が原則として毎年同額となる。計算式は「取得価額×定額法の償却率」。
  • 定率法:償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少する。計算式は「期首未償却残高×定率法の償却率」。

実際に数字で見たほうが早いので、500万円の資産を耐用年数5年で償却するケースを並べます。

定額法定率法
1年目100万円200万円
2年目100万円120万円
3年目100万円72万円
4年目100万円54万円
5年目100万円54万円
合計500万円500万円

耐用年数5年の場合、定額法の償却率は0.200、定率法の償却率は0.400として計算(国税庁の償却率表にもとづく)。定率法の4年目以降は、計算した償却額が償却保証額を下回るため改定償却率0.500を使った金額です。実務では最後に備忘価額1円を残しますが、ここでは省いています。

どちらを選んでも、最終的に費用にする合計額は変わりません。違うのは「早めに費用にするか、平らにならすか」というタイミングだけです。定率法は初期に費用が大きくなるぶん、早い段階の利益が小さく見えます。裏を返せば、資金の回収が早いという見方もできます。

この「合計は同じでもタイミングが違う」という性質は、のれんの償却をめぐる日本基準と国際会計基準の違いとも通じる話です。

いま論争になっている「AIの償却年数」

ここからが本題です。AIブームで、マイクロソフトやメタ、アマゾンといった巨大テック企業(ハイパースケーラー)は、AI用のサーバーやGPUに巨額の設備投資をしています。この設備を何年で償却するかが、いま激しく議論されています。

なぜ大事なのか。同じ設備でも、償却年数を延ばせば1年あたりの費用が小さくなり、その分だけ利益が大きく見えるからです。

償却年数によって年間の減価償却費はどう変わるか 400億円 240億円 200億円 3年で償却 5年で償却 6年で償却 単位:年間の減価償却費(1,200億円の設備を定額法で償却した場合の簡易計算)
償却年数が2倍になると、1年あたりの費用は半分になる。費用が小さくなればその分だけ利益は大きく見えるが、資産が実際に生み出す価値が増えるわけではない。実際の企業の会計方針・資産構成は異なるため、あくまで仕組みを示す例。

この点を強く問題視したのが、映画『マネー・ショート』で知られる投資家マイケル・バーリ氏です。同氏は2025年11月、資産の耐用年数を延ばして減価償却を過少に計上することは利益を人為的に押し上げる行為だと指摘し、注目を集めました(CNBC等が報道)。実際の経済的な寿命が2〜3年程度のAI用ハードウェアを5〜6年かけて償却しているとして、2026年から2028年にかけて合計1,760億ドル規模の減価償却費が過少に計上されうる、というのが同氏の試算です。

一方で、これに真っ向から反対する見方もあります。

短くすべきという見方AI用チップの製品サイクルは2〜3年。実態より長い年数で償却すれば費用が過少になり、利益が実力以上に見える。将来まとめて減損が出る恐れがある
長くても妥当という見方古い世代のチップも十分に稼働し続け、動かす追加費用は小さい。実効的な使用期間は7〜8年に及ぶこともあり、5〜6年の償却は無理のない想定だという反論
AI設備の償却年数をめぐる主な論点の整理。どちらが正しいかは現時点で確定しておらず、実際の使用期間は企業や用途によって異なる。

面白いのは、どちらの主張も「事実」ではなく「見積もり」を争っていることです。チップが何年使えるかは、使ってみないと分かりません。会計はその不確かな未来を、いま数字にしなければならない。減価償却とは、そういう性質の作業なのです。

なお、この論争は半導体そのものの需給サイクルとも無関係ではありません。半導体シリコンサイクルの記事もあわせて読むと、AI投資ブームの全体像がつかみやすくなります。

フクリの見方

  • 減価償却は「事実」ではなく「見積もり」を含んでいます。売上や現金残高と違い、耐用年数は誰かが判断した数字です。決算書の数字をすべて同じ確からしさで見ないこと。これはROEやROAのような利益をもとにした指標を読むときにも効いてきます。
  • 利益と現金の差に目を向けると視界が広がります。減価償却費が大きい会社は、利益が小さく見えても現金は回っていることがあります。逆に、償却年数を延ばして利益を大きく見せても、出ていったお金が戻ってくるわけではありません。
  • 論争そのものを楽しむ姿勢も大事だと思います。バーリ氏の指摘が正しいのか、反論する側が正しいのか、答えが出るのは数年先でしょう。ただ「どこで意見が割れているのか」を知っておくと、AI関連のニュースの解像度がぐっと上がります。AIと投資の視点を持つうえでも、会計は思いのほか強い武器になります。

まとめ(3行)

  • 減価償却は、長く使う資産の代金を使用年数にわたって分けて費用にする会計のルール。土地など価値が減らないものは対象外
  • 分け方には毎年同額の定額法と、初期ほど大きい定率法があり、合計額は同じでタイミングだけが違う
  • AI用サーバーの償却年数(3年か6年か)は、巨大テック企業の利益の見え方を左右するとして論争になっており、現時点で結論は出ていない

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
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