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セールスフォースのデータが、クロードから使えるようになる——下げ止まった業務ソフト株は、全戻しするのか

2026.09.20
セールスフォースのデータが、クロードから使えるようになる——下げ止まった業務ソフト株は、全戻しするのか

📌 この記事は公開情報(各社の発表・決算資料、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年9月19日時点のものです。

会社で使うソフトは、これまでそのソフトを開いてもらってこその商売でした。

セールスフォースは、そこをやめます。お客さんがふだん使っているAIに話しかけるだけで、自社のデータを呼び出せるようにすると発表しました。

何が発表されたのか

セールスフォースのデータを、他社のAIの画面から使えるようになります。

発表は2026年9月15日。同社が毎年サンフランシスコで開くイベント「ドリームフォース」(今年は9月15〜17日)での発表です。新しい仕組みはエーアイフォース(AIforce)という名前です。

1クロードの中から使える
アンソロピックの対話AI「クロード」に話しかけると、セールスフォースに入っている顧客のデータを呼び出せます。まだお試し版です。
2スラックの中からも使える
社内チャットの「スラック」でも同じことができます。会話をしながら顧客の情報を出せるという形です。
3自社のソフトの中でも働く
セールスフォース自身の画面で動くAI(Agentforce Coworker)も用意され、35日で10万人が使い始めたと会社は説明しています。

このほかに、エヌビディアと組んで作った専用のAIモデル「Koa(コア)」も発表されました。アンソロピックのアモデイCEOが舞台に上がり、OpenAIのアルトマンCEOも別の場で話しています。値段は公表されていません。

これまでの売り方は「うちのソフトを開いてください」でした。これからは「ふだん使っているAIから、うちのデータを呼び出してください」に変わります。

「業務ソフトは要らなくなる」はいつ始まったのか

言われ始めたのは2年前で、いまは株価に出ています。

SaaS(サース)とは、ソフトを買い切らずに月々の利用料で借りる売り方のことです。セールスフォース、サービスナウ、ワークデイ、日本ならサイボウズやマネーフォワードがこの形です。

きっかけは2024年12月13日でした。 マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが、投資家2人(ブラッド・ガースナー氏とビル・ガーリー氏)のポッドキャスト「BG2」でこう話しました。

会社で使うソフトは、要するにデータを出し入れする箱に、仕事のルールを乗せただけのものだ

だったら、そのルールの部分をAIにやらせればいい——というのがナデラ氏の見立てでした。そうなるとソフトそのものは要らなくなる、という話です。

その3か月前の2024年9月、セールスフォースは「Agentforce」を発表していました。AIが人の代わりに仕事をするという売り方です。つまり、AIに仕事を取られると言われた会社が、そのAIを自分で売り始めたわけです。

そして2026年に入ると、この話は株価に出てきます。業務ソフトの株がそろって売られ、市場では「SaaSpocalypse(サースの終末)」という言葉まで使われました。

株価は下げて、いま戻っている

1年で見ると4社とも指数に負けていますが、底はすでに打っていて、いまは戻りの途中です。

まず、1年の成績

−58.3%ハブスポットの1年の株価(2025年9月19日→2026年9月18日)
+14.8%同じ期間のS&P500
−3.7%同じ期間のセールスフォース

セールスフォースの下げ幅は、4社の中でいちばん小さいものでした。 それでも指数には約18ポイント負けています。⚠️ この差を「業務ソフトはAIに食われる」の一言では説明できません。 4社は売っているものも、決算の中身も違います。

底はいつで、どこまで戻ったか

下げが止まったのは2026年の春から初夏です。 安値を付けた日は、サービスナウとワークデイが4月10日、セールスフォースが6月22日、ハブスポットが6月25日でした。そこからの戻りは、次のとおりです。

セールスフォースは安値から58.5%戻り、1年の高値まであと11.9%のところにいます。ワークデイはあと27.8%、サービスナウはあと41.9%。ハブスポットだけは戻りが26.9%にとどまり、高値までは142%も残っています。

日本も同じ形です。 底は2月24日から6月12日にかけてで、そこからマネーフォワードは2.1倍、フリーは2.1倍と、どちらも2倍を超えて戻りました。高値まではどちらも14%前後です。

つまり、「AIに食われる」で売られた株は、もう売られ切って買い直されている途中です。残っている問いは1つ——このまま高値まで戻るのか、です。

それでも売上は伸びている

株価は下がりましたが、会社が出している数字はまだ伸びています。

セールスフォースが2026年8月26日に発表した決算(2026年5月〜7月の3か月)です。

項目金額前の年の同じ時期と比べて
売上113億ドル+11%
1年以内に売上になると決まっているお金(cRPO)335億ドル+14%
AIの利用料(1年分に直した額)15億ドル超+240%超
AIとデータ基盤の合計39億ドル+210%超

このうち月々の利用料は108億ドル(+12%)。利益率は会計のルールどおりで20.5%、一時的な費用を除くと34.1%でした。今期の売上見通しは461億〜464億ドル(前の年より+11〜12%)です。

この15億ドルを、会社全体と比べてみます。 今期の売上見通しは461億ドルなので、AIの利用料はその3.3%。データ基盤を足した39億ドルでも8.5%どまりです。240%という伸び率は目を引きますが、会社全体の売上を動かす大きさにはまだなっていません。

ここで注目したいのがcRPOです。すでに契約が済んでいて、1年以内に売上になると決まっているお金のことで、売上より先に動きます。いまのcRPOの伸びは14%で、売上の伸び(11%)より速い。つまり、この先の売上もまだ増える見込みということです。

関連企業と日本の接点(サイボウズ・4776ほか)

日本の業務ソフトも、日経平均に大きく負けています。

会社市場この話での位置
セールスフォース米ニューヨーク証券取引所(日本の取引所には上場していません)9月15日に発表した当事者。自社のソフトの外にデータを出す側
サービスナウ米ニューヨーク証券取引所(同上)社内の手続きを自動化するソフト。1年で30%下げた
ワークデイ米ナスダック(同上)人事と会計のソフト
ハブスポット米ニューヨーク証券取引所(同上)中小企業向けの営業支援。1年で58%下げた
アンソロピック/OpenAIどちらも未上場(個人は直接買えません)データを呼び出してもらう側。両社のCEOがイベントに登壇
サイボウズ東証プライム(4776)kintoneなど、日本の業務ソフト
フリー東証グロース(4478)会計と人事のクラウド
マネーフォワード東証プライム(3994)会計と経費のクラウド
ラクス東証プライム(3923)経費精算など

⚠️ 日本の4社の値動きを、米国の話だけで説明することはできません。 規模も売っているものも違い、日経平均の上げ幅(+43.5%)には半導体や商社など別の理由が大きく効いています。それでも、4社そろって指数に負けている事実は残ります。

フクリの見方

フクリの見立て

売れなくなったから下がったのではありません。
お客さんが「どこから使うか」が変わったから下がっています。

なぜそう言えるか

AIの利用料は15億ドル=売上見通しの3.3%。この大きさでは株価の下げを説明できません。それでも会社は、自社のソフトを開いてもらう形をやめました。

いまの状況

売上は+11%、先の売上を映すcRPOは+14%。決算はまだ壊れていません。

次に見る数字

AIの利用料ではなく、cRPOの伸びが売上の伸びを上回り続けるか。使われ方が変わった影響は、ここに先に出ます。

反対の材料もあります。 ふだん使っているAIから呼び出せるようにすれば、自社のソフトを開いてもらうより早く使ってもらえるとも言えます。実際、自社の画面で動くAIは35日で10万人が使い始めました。ただし値段が公表されていません。いくら取れるのか分からないうちは、この変更が良かったのかどうかも数字になりません。

全戻しするのか——3つのシナリオ

1全戻しする(高値を取り戻す)
条件はcRPOの伸びが売上より速い状態が続くことと、AIforceの値段が示されて1社あたりの支払いが増えること。セールスフォースはあと11.9%、日本のフリーとマネーフォワードも14%前後で届く位置にいます。
2途中で止まる(指数には勝てない)
売上が+11%前後のまま、AIの利用料が売上の1割に届かない場合。数字は悪くないので下げはしないが、指数に勝つ理由も出てこないという形です。サービスナウ(あと41.9%)やワークデイ(あと27.8%)は、この道だと高値が遠いまま残ります。
3もう一度下げる
cRPOの伸びが売上の伸びより遅くなるか、値段が安いと分かる場合。この2つは次の決算(2026年12月ごろ)で見えます。そのときは春から初夏に付けた安値が試されます。

いまの数字だけで選ぶなら、1番目と2番目の間です。 決算は伸びているので3番目は薄い。ただし値段が公表されていない以上、1番目だと言い切る材料もありません。

そのうえで、3つ釘を刺します

1
「業務ソフトが要らなくなる」は、まだ決算に出ていません売上は+11%で、今期の見通しも上向きです。株価と決算が食い違ったままで、どちらが正しいかはこれから分かります。
2
発表されたものの多くは、まだお試し版ですクロードから使う仕組みはお試し版で、誰でも使える時期も値段も公表されていません。発表と提供は別の話です。
3
下げ幅は会社ごとに大きく違います1年でハブスポットは58.3%、セールスフォースは3.7%の下げ。同じ「SaaS」でひとくくりにはできません。

この見立てが外れる条件

1次の決算で、cRPOの伸びが売上の伸びより遅くなる
使われ方が変わった影響は契約残高に先に出ます。ここが崩れれば「売れなくなったわけではない」という読み方は成り立ちません。
2値段が公表され、安かったと分かる
他社のAIから使ってもらう代わりに、データを預かる側として課金するのが筋書きです。値段が出て、それが安ければ筋書きは崩れます。
3日本の業務ソフトが、指数並みに戻る
いま4社とも日経平均に大きく負けています。そろって戻るなら、今回の下げは米国だけの話だったことになります。

この記事で追う数字は4つです。

いつ何を見るか
2026年12月ごろセールスフォースの次の決算。cRPOの伸びが売上の伸びを上回り続けるか
同上AIの利用料(今回15億ドル超)と、値段が公表されるか
随時クロードから使う仕組みが、お試し版から誰でも使える形になるか
各社の決算日本の4社(サイボウズ・フリー・マネーフォワード・ラクス)の売上の伸びと解約の状況

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まとめ(3行)

1自分のソフトを開いてもらう形をやめた
2026年9月15日、セールスフォースはクロードやスラックから自社のデータを呼び出せるようにすると発表しました。値段は公表されていません。
2「要らなくなる」と言われて2年、株価は先に動いた
2024年12月にマイクロソフトのCEOが「会社のソフトは要らなくなる」と語り、2026年に株価が下がりました。1年でハブスポット−58.3%、S&P500は+14.8%です。
3底は打った。残る問いは「全戻しするか」
セールスフォースは安値から+58.5%、高値まであと11.9%。決算は売上+11%・cRPO+14%と伸びています。次の決算でcRPOが売上より速いままかが分かれ目です。

情報源

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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