さくらインターネットの株は何で動く? GPUの売上を支える大口契約は3件、国の2件は2027年3月で終わる

📌 この記事は公開情報(さくらインターネットの決算説明資料・適時開示・有価証券報告書、市場データ)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年10月21日時点のものです。
🔄 2026年11月6日に更新しました。 10月28日の決算で、会社は通期の予想を上方修正しました(売上高455億円→466億円、営業利益25億円→41億円)。この記事の本命の「予想は据え置き」は外れました。GPUインフラの7〜9月の売上は54.1億円で、GPU1基1時間あたりにすると約452円と、4〜6月の約399円から上がっています。株価は、市場を差し引いて28日に+17.0ポイント、29日に−6.9ポイントで、2日では+8.9ポイント、普段の1.68倍でした。2倍には届いていません。次世代のGPU「Rubin」(260億円)は「今期の投資の予算には含めていない」とだけ書かれ、使い始める時期と、国の2件の契約の後継の話は、今回の資料には見当たりません。
さくらインターネットは、北海道の石狩にあるデータセンターで、AIの計算に使う半導体(GPU)を企業や研究機関に貸している会社です。国の助成を受けて、GPUを5,400基ほどそろえました。
株価は、マイクロソフトとの協業や「国産のAI」の話が出るたびに大きく上下します。この1年では、TOPIXに大きく負けました。
この記事の答えは、さくらの株はAIのニュースで大きく上下しても、業績を決めているのは期限つきの大口契約だ、というものです。GPUの売上を支える大口は3件で、そのうち国の機関との2件は2027年3月で終わります。業績の材料で株価が動いたのは、会社がGPUの売上予想を出し直した日でした。受注を発表した日は、2日で見ると普段の範囲でした。
業績の材料で株価が動くのは、GPUの売上予想を出し直した日
この1年で、さくらの株価が普段の2倍を超えて動いた日は12日あります。そのうち、会社がGPUの売上予想を出し直した日は2日だけでした。
いちばん大きく上げたのは4月3日です。日本マイクロソフトと、AIの計算基盤を使うしくみの共同開発に向けた検討を始めた、と発表した日でした。会社は同じ日に「現時点で具体的に決まっている事項はございません」と開示しています。
8月18日の上げは、会社の発表も、その日の報道も見当たりません。12日のうち5日がそうした日です。10月1日について、株探は「国策銘柄としての期待が改めて高まる格好か」と書いています。
市場はさくらを「国産のAIの株」として、ニュースや雰囲気で売買している、と見ています。
受注の日は動かず、予想を出し直した日は動いた
ニュースの日の上げは、翌日に消えることがあります。そこで、発表の前日から翌日までの2日の動きを、出来事の種類ごとに並べました。
2025年4月以降、会社がGPUの売上予想を出し直した日は5回あります。そのうち4回で、2日の動きが普段の2倍を超えました。決算以外の日も含めると、2日でここまで動くのは1年で5%ほどしかありません。
大口の受注を発表した日は、3回とも普段の範囲でした。4月13日の受注の日は大きく上げましたが、翌日に下げています。2026年の2件のお知らせには、受注額を業績予想に「含めて」開示すると書かれています。株価が動くのは、その予想が出る日です。
2月25日の修正だけは動きませんでした。売上の予想を下げる一方で、同じお知らせで、新しいGPU(B200)約1,100基の大口を2028年3月まで取ったことも開示した日です。決算の日に株価がどう動くかを事業ごとに分けた例は、日油の記事でも取り上げています。
GPU1基1時間の売上は、大口契約しだい
GPU1基が1時間に稼いだ売上を、決算資料から計算しました。2025年に大型案件が終わったあと、1基あたりの売上は半分以下に落ち、戻ったのは2026年4〜6月でした。
さくらは、GPUを専用で貸すサービス(「高火力PHY」や、自社のスーパーコンピューター「さくらONE」など)の売上を、「GPUインフラストラクチャーサービス」として四半期ごとに出しています。この売上を、その時点で設置していたGPUの数と時間で割りました。
GPUは、米NVIDIA(エヌビディア)のH100・H200・B200の3種類です。後ろほど新しく、計算が速い型です。
2025年7月28日、会社は「継続を見込んでいた生成AI向けの大型案件」が終わったとして、GPUの売上予想を大きく下げました。その間もGPUは増え続け、H200とB200が加わっています。GPUを増やしても、借り手が付かなければ1基あたりの売上は下がります。
会社はこの時期について、AIの市場の競争が激しく「販売単価の調整が続く」と説明していました。
戻ったのは、大口が3件そろってから
1基あたりの売上が戻った時期は、大口契約が3件そろって動き始めた時期と重なります。そのうち国の機関との2件は、2027年3月までの契約です。
1件目は、2月に始まった国内の大手企業向けのB200約1,100基です。2028年3月まで続く長い契約で、社名と金額は開示されていません。
2件目と3件目は国の機関です。4月に国立機関からさくらONEの提供を、5月に国立情報学研究所から大規模言語モデルの研究向けのGPUの提供を受けました。
国の2件を合わせると約63億円で、今期のGPUの売上の計画の3分の1に当たる大きさです。国の調達は1年ごとで、国立情報学研究所の大規模言語モデル向けの案件は、2024年度の分もさくらの子会社が落札しています。
1時間100円の差は、営業利益の予想の2倍近く
さくらの利益は、この1時間あたりの売上で大きく変わります。1時間の売上が100円変わるだけで、1年の売上の差は、今期の営業利益の予想の2倍近くになります。
前回は、それが実際に起きました。2025年7月、大型案件が終わって営業利益の予想は10分の1以下になり、株価は翌日にストップ安まで下げています。
2024年からのGPUの投資は、国が投資額の半分を助成しています(経済安全保障推進法の「クラウドプログラム」)。助成の分は買った値段から差し引くので、その分、毎年の減価償却費が軽くなります。
次のGPU「Rubin」は、2027年1月に届く
会社は7月28日、NVIDIAの次の世代のGPU「Rubin(ルービン)」を積んだサーバーなどに260億円を投じると決めました。主に金融機関からの借入で払い、2027年1月に届く予定です。
使い始める時期は、まだ決まっていません。国の第2次の計画(2027年12月末までにGPU約8,000基)に入るのか、助成が付くのかも、7月28日のお知らせには書かれていません。今期の業績への影響は「精査中」としています。
関連企業と日本の接点
GPUを時間で貸す国内の上場企業は、さくらのほかにGMOインターネットがあります。さくらの筆頭株主は双日です。
| 会社 | 上場 | この話での位置 |
|---|---|---|
| さくらインターネット(3778) | 東証プライム | GPU約5,400基(H100 2,840基・H200 1,072基・B200 約1,500基)。今期のGPUインフラの売上の計画は184億円、会社全体の営業利益の予想は25億円 |
| 双日(2768) | 東証プライム | さくらの筆頭株主(14.8%)。2011年から業務提携。2026年3月に持株の一部を売り、持分法の関連会社ではなくなった。業務提携は続ける |
| GMOインターネット(4784) | 東証プライム | GMOインターネットグループ(9449)の子会社で、グループのGPUクラウド(H200・2024年11月開始)を運営する。グループは2024年4月に国の同じ制度の認定を受けた(助成は最大19.25億円) |
| NVIDIA | 米ナスダック | GPUの供給元。日本の取引所には上場していない |
| プラナスソリューションズ | 非上場 | さくらの子会社。国立情報学研究所の案件を落札した。個人は直接買えない |
この1年の株価の差を、GPUの契約だけで説明することはできません。双日は商社で、株価は資源や他の事業で動きます。
それでも、GPUを貸す2社がそろってTOPIXに負けたことは、「AIの計算資源が足りない」という話だけでは株価が支えられなかったことを示している、と見ています。GPUを担保にお金を借りる米国の動きはGPUの担保の記事で取り上げています。
次の山場は、10月28日の決算と2027年4月の本決算
まず10月28日の決算で、GPUの売上が4〜6月の水準を保てたかを見ます。いちばんの山場は、国の2件が終わったあとの予想が出る、2027年4月下旬の本決算です。
第2四半期の決算
見る数字
- GPUインフラの7〜9月の売上(4〜6月は47.2億円)
- 通期の予想(営業利益25億円)を変えるか
- Rubinの費用の見込み
Rubinが届く
使い始める時期と、借り手が決まっているか
国の2件の提供の期限
さくらONE(約38億円)と国立情報学研究所(約25億円)
次の年度の分の調達
国立情報学研究所の案件は、2024年度の分が6月18日、2026年度の分が5月15日に落札
本決算と来期の予想
見る数字
- 来期のGPUインフラの売上の予想
- 国の2件の後継が入っているか
- Rubinの借り手と、使い始める時期
B200の大口の期限
国内の大手企業向けの約1,100基
さくらは、ここ2年続けて7月下旬の第1四半期の決算で予想を出し直しています。2027年の7月下旬も、4月の予想が外れていないかを確かめる日になります。
予想:10月28日は、株価は普段の範囲で動く
10月28日の決算で、会社は通期の予想を据え置き、株価の2日の動きは普段の2倍に届かない、と見ています。
理由は3つです。
- 今期の大口の売上は、もう決まっている:3件とも提供の期間が決まっていて、国の2件は受注額を予想に入れたと開示しています。
- 予想は7月に上げたばかり:7月の修正は、7〜9月を含む上期の予想も上げています。
- 予想を変えなかった決算では、株価は動かなかった:2025年10月と2026年1月の決算の2日は、どちらも普段の0.02倍以下でした。
外れるとすれば、Rubinです。会社は今期への影響を「精査中」としていて、10月28日に費用を入れて利益の予想を下げれば、株価は普段の2倍を超えて下げると見ています。
で、儲かるのか
さくらの株を、マイクロソフトとの協業や「国策」のニュースで買い増すのは、前例に合いません。業績の材料で株価が動いたのは、会社がGPUの売上予想を出し直した日でした。いまのGPUの売上を支える大口のうち、国の2件は2027年3月で終わります
見るのは、2027年4月下旬の本決算で出る来期のGPUの売上予想に、国の2件の後継とRubinの借り手が入っているかです。
2027年4月下旬の来期の予想
→国の2件の後継とRubinの借り手
国の後継とRubinの借り手が入る
↑1時間の売上を保てる
国の2件の後継が入らない
↓2025年7月と同じ予想の引き下げ
情報源
- さくらインターネット 決算説明資料:2026年3月期(2026年4月27日・GPUインフラストラクチャーサービスの売上の実績と計画、生成AI向けサービスの投資状況と投資スケジュール〔GPUの設置の時期と基数〕、サービス区分の変更、サービス別の四半期の売上)、2027年3月期 第1四半期(2026年7月28日・サービス別の四半期の売上、業績予想の修正、主要な原価)
- さくらインターネット 適時開示:業績予想の修正に関するお知らせ(2025年7月28日・2026年2月25日・2026年7月28日)、当社に関する一部報道について(2026年4月3日・日本マイクロソフトとの協業の検討)、生成AI向け大口案件の受注に関するお知らせ(2026年4月13日)、「令和8年度 大規模言語モデル研究開発向けクラウドサービス 一式」の落札に関するお知らせ(2026年5月18日)、生成AI向けサービスへの投資に関するお知らせ(2026年7月28日・Rubin)、GPUクラウドサービス第2次投資計画の経済産業省によるクラウドプログラム供給確保計画の認定に関するお知らせ(2024年4月19日)、特別利益及び特別損失の計上に関するお知らせ(2026年2月24日・助成金の交付決定)、その他の関係会社の異動に関するお知らせ/役員の異動および業務提携契約の一部変更に関するお知らせ(2026年3月19日・双日)、当社システムへの不正アクセスに関するお知らせ(2026年8月17日・19日)
- さくらインターネット 第27期 有価証券報告書(2026年6月15日・圧縮記帳額、国庫補助金等収入、有利子負債)
- プラナスソリューションズ:「令和6年度大規模言語モデル構築向けクラウドサービス 一式」の落札に関するお知らせ(2024年6月18日・約27.9億円)
- GMOインターネットグループ:NVIDIA H200を採用した生成AI向けのGPUクラウドサービス(2024年4月19日・経済産業省の認定と最大19.25億円の助成)。GMOインターネット:H200の追加投資(2025年5月)
- 株探:さくらインターネットのニュース(2026年4月16日・Jストリームとの協業、10月2日「前日に動いた銘柄」)
- 株価:Yahoo Financeの日次終値。市場との差=その会社の騰落率−TOPIX連動ETF(1308)の騰落率。普段の振れ幅=前の250営業日の、市場を差し引いた動き(1日または2日)の標準偏差
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