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プライベートクレジットとは?銀行を通さない融資が急拡大している理由

2026.07.21 ・ 執筆:フクリ
プライベートクレジットとは?銀行を通さない融資が急拡大している理由

企業がお金を借りる方法といえば、多くの人が思い浮かべるのは銀行からの融資でしょう。大企業なら債券(社債)を発行して投資家から直接借りる方法もあります。

ところがこの10年ほどで、そのどちらでもない第三のルートが世界の金融の中で急速に存在感を増しています。それがプライベートクレジットです。日本語では「私募クレジット」などと訳されますが、要するに投資ファンドなどが投資家からお金を集め、企業に直接貸し出す仕組みのこと。市場規模はピクテの整理で足元1.8兆ドル(約286兆円)程度とされ、いまやAIデータセンター建設の資金源としても語られるようになりました。

この記事では、①プライベートクレジットとは何か、②銀行融資や社債と何が違うのか、③なぜいま急拡大しているのか、④国際機関が何を心配しているのか、を順に見ていきます。

プライベートクレジットとは?──企業がお金を借りる第三のルート

まず、企業がお金を借りる方法を整理してみましょう。

企業がお金を借りる3つのルート
銀行から借りる預金を原資に銀行が融資する。審査基準や規制が厳しく、条件は比較的画一的になりやすい
社債を発行する市場で多数の投資家から直接借りる。発行にコストがかかるため一定以上の規模の企業向け
ファンドから借りる投資ファンドが投資家の資金を集めて企業に直接貸す。これがプライベートクレジット
資金調達手段のおおまかな分類。実際には企業の規模や信用力、資金使途によって組み合わせて使われる。

プライベートクレジットの主な借り手は、ミドルマーケットと呼ばれる中堅企業です。銀行から十分な融資を受けるには条件が合わず、かといって社債を発行するほどの規模でもない。そんな「中間の層」に、金利・担保・返済計画をオーダーメイドで設計して貸すのがこの仕組みの持ち味だとされています。

企業から見れば、交渉相手が少なく話が早い。貸し手のファンドから見れば、銀行融資よりも高い金利を取れる。この双方の利害が一致したことが、市場拡大の出発点でした。

銀行融資・社債とどう違う?

3つのルートの性格を並べてみます。

銀行融資社債プライベートクレジット
貸し手銀行多数の投資家投資ファンド(背後に機関投資家など)
主な借り手幅広い企業一定以上の規模・信用力のある企業中堅企業(ミドルマーケット)が中心
条件の柔軟さ比較的画一的市場の標準に沿うオーダーメイド型
金利水準相対的に低め信用力に応じて市場が決める相対的に高め
情報の見えやすさ規制当局が監督発行時に開示義務相対的に見えにくい
途中で売れるか市場で売買しやすい売買しにくい(流動性が低い)

出典:ピクテ、丸紅経済研究所、三井住友DSアセットマネジメント等の解説にもとづき編集部整理(2026年7月時点)。実際の条件は案件ごとに大きく異なります。

表の下2行、つまり見えにくさと売りにくさが、この仕組みの最大の論点です。上場している債券や株式と違い、プライベートクレジットの貸出条件や借り手の状況は外部から把握しづらく、価格も市場でついているわけではありません。この点は未上場株の話とよく似た構図です。

なぜいま急拡大しているのか──AI投資という新しい燃料

もともとは、金融危機後の規制強化で銀行が慎重になった隙間を埋める形で広がった市場でした。ところがここ数年、まったく新しい燃料が加わっています。AIインフラ投資です。

国際決済銀行(BIS)が2026年6月に公表した年次経済報告書は、この構図をかなり踏み込んで整理しています。BISによれば、大手ハイパースケーラー5社は2025年から2026年にかけてAI関連の設備投資に1兆ドル超を投じる見通しで、この規模は各社の利益や営業キャッシュフローを上回りつつあります。足りない分は借金で埋めるしかなく、社債の総発行額は2025年に1,000億ドルを超えました。

さらにBISが注目しているのが、データセンターを保有・開発する専用の器(共同出資会社や特別目的会社)を使った調達です。この形をとると、経済的には借金に近い義務でありながら、企業本体の貸借対照表の外側に置かれることになります。そしてこうした器に資金を供給しているのが、まさにプライベートクレジットなのです。

ダイレクトレンディングファンドの融資先に占めるAI・IT分野
ダイレクトレンディングファンドの融資先構成 15% AI・IT分野向け
AI・IT分野向け 約15%  その他の分野 約85%  出典:BIS「Annual Economic Report 2026」(2026年6月)。同報告書は、ダイレクトレンディングファンドのAI・IT分野向け融資が過去5年で4倍になり、ポートフォリオの約15%に達したと指摘している。将来の水準を示すものではない。

BISはあわせて、循環的な資金の流れにも警戒を示しています。チップメーカーやハイパースケーラーがAI企業に出資し、その出資先が今度は出資元からチップや計算資源を買う――という関係です。BISは、こうした取り決めの条件が十分に開示されないことが多く、同じ資産が何重にも担保に差し出される恐れがあると指摘しています。

個人投資家との距離感

ここではっきりさせておきたいのは、日本の個人投資家が、プライベートクレジットに直接投資できる場面はかなり限られているという点です。もともと機関投資家や富裕層向けに設計された領域で、最低投資金額が高く、途中で解約しづらい商品が中心です。

では他人事かというと、そうでもありません。理由は2つあります。

ひとつは、自分が持っている資産の裏側で、間接的につながっている可能性があること。保険会社や年金基金といった機関投資家がプライベートクレジットに資金を振り向けており、その運用結果は巡り巡って多くの人に関係します。

もうひとつは、AI関連の株価を考えるうえでの背景知識になること。AIインフラ投資がどんなお金で支えられているのかを知っておくと、「AI関連株がなぜ金利の動きに敏感なのか」が理解しやすくなります。金利のある世界銀行株と金利の関係ともつながる話です。

指摘されているリスク

急拡大している市場には、必ず懸念もついてきます。両面を並べます。

期待される役割銀行から借りにくい中堅企業に資金を届ける。条件を柔軟に設計でき、成長段階の企業を支えうる。貸し手にとっては相対的に高い利回りが見込まれるとされる
指摘されるリスク借り手の信用力は相対的に低め。売買しにくく価格も見えにくい。景気が悪化した時の実態がつかみにくい。デフォルト(債務不履行)の増加も報じられている
プライベートクレジットをめぐる主な論点の整理。どちらか一方が正しいと決まっているわけではなく、評価は今後の景気や金利環境によって変わりうる。

2026年に入ってからは、一部のファンドで解約の申し込みが集中したことが報じられ、金融市場の関心が高まりました。流動性が低い資産を、比較的解約しやすい商品の形で提供するという組み合わせは、平時には便利でも、みんなが一斉に出口へ向かった時に問題が表面化しやすい――という構造的な指摘です。

一方で、この市場の資金の出し手は解約しにくい長期資金が中心で、銀行のように預金の取り付けが起きる構造ではないため、金融システム全体の危機にはつながりにくいという見方もあります。評価は分かれている、と受け止めておくのが誠実でしょう。

フクリの見方

  • 「見えないところで大きくなっているもの」に注意を向ける価値があります。株価指数や為替のように毎日数字が出るものは意識しやすい一方、こうした市場は静かに規模を増していきます。国際機関のレポートは、その静かな変化を教えてくれる貴重な手がかりです。
  • 利回りが高いのには理由があります。プライベートクレジットの利回りが銀行融資より高いのは、借り手の信用力・売りにくさ・情報の少なさといった負担を引き受けているからです。リスクとリターンの関係は、こうした新しい商品でも変わりません。
  • AIブームを「技術」と「お金」の両面から見ると立体的になりますAIと投資を考えるとき、モデルの性能やチップの話題に目が行きがちですが、その裏側でどんなお金がどう流れているかを知ると、ニュースの読み方が変わってくると思います。

まとめ(3行)

  • プライベートクレジットは、投資ファンドが投資家から集めた資金を企業に直接貸す仕組み。銀行融資でも社債でもない第三のルートで、中堅企業が主な借り手
  • 条件が柔軟で金利は相対的に高い一方、売買しにくく情報も見えにくいという性質があり、日本の個人が直接投資できる場面は限られる
  • BISは、AI設備投資が企業の稼ぐ力を上回るなかで、専用の器を使った調達や循環的な資金の流れに警戒を示している

情報源

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

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