米国株の税金・二重課税とは?外国税額控除をやさしく解説

米国株への投資で「二重課税になる」という話を聞いたことはありますか? 実際、米国株の配当金には日本と米国の両側から税金がかかる仕組みになっています。ただし、うまく申告すれば取り戻せる部分もあります。この記事でわかりやすく整理します。
米国株の税金は「2種類の利益」に分かれる
米国株で発生する利益は大きく2つです。
売却益は日本でのみ課税(約20.315%)されるため、税金と投資の記事で説明した国内株と同様です。問題は配当金です。
配当金の二重課税とは?
米国株の配当金には、米国で10%の源泉徴収税が引かれてから日本に届きます。そのうえ、日本でもさらに約20.315%の税金がかかります。
100ドルの配当を例に、実際に追いかけてみます。
実質的に手元に残るのは約72%で、合計約28.3%の税負担になります。日本株の配当なら20.315%ですから、同じ配当額でも手取りが8ポイントほど少なくなる計算です。
💡 なお米国の源泉税率は本来30%ですが、日米租税条約によって10%に軽減されています。証券会社に提出する書類(W-8BEN)で自動的に適用されるのが一般的です。
外国税額控除で取り戻せる
「二重に払いすぎた」税金は、確定申告で外国税額控除を申請することで、一定額を取り戻せます。
ただし、全額が戻るとは限りません。控除できる上限や、所得によって変わる部分があるため、金額が大きい場合は税理士への相談もご検討ください。
申告方法の選択肢
確定申告で外国税額控除を使うには、総合課税または申告分離課税を選択して確定申告する必要があります。源泉徴収ありの特定口座では自動的に処理されますが、外国税額控除を受けるためには自分で確定申告が必要です。
- 特定口座(源泉徴収あり):手間は少ないが外国税額控除は使えない
- 一般口座または確定申告する:手間はかかるが外国税額控除を使える
どちらが有利かは保有額・配当額・他の所得によって変わります。
NISAなら配当の日本分は非課税
新NISAの成長投資枠で米国株ETFを買った場合、日本側の20.315%は非課税になります。ただし、米国側の10%の源泉徴収はNISAでも引かれます。
つまりNISAでも「二重課税ゼロ」にはならず、米国の10%分は避けられない点に注意が必要です。
さらに、ここが見落とされがちな落とし穴です。NISA口座では、外国税額控除も使えません。 外国税額控除は「日本で払った税金から差し引く」制度なので、そもそも日本で課税されていないNISAでは、差し引く相手がいないためです。
3つの口座で、配当100ドルの手取りを並べてみます。
| 口座 | 米国分 | 日本分 | 手取り |
|---|---|---|---|
| 課税口座(申告なし) | -10.00 | -18.28 | 71.72ドル |
| 課税口座(外国税額控除あり) | -10.00 | -18.28 → 一部還付 | 最大81.72ドル |
| NISA口座 | -10.00 | 0 | 90.00ドル |
NISAがいちばん有利なのは変わりません。 ただし「NISAだから税金ゼロ」ではなく、10%は必ず引かれるという点は知っておいてください。
フクリの見方:まずNISA。外国税額控除は「配当が育ってから」
編集部の立場を書きます。米国株の税金対策で最初にやるべきはNISAを使うことで、外国税額控除は後回しで構いません。
上の表がその理由です。NISAの手取り90ドルは、確定申告をがんばった課税口座(最大81.72ドル)より多いのです。手続きの手間はゼロで、結果は上。順番を迷う理由がありません。
では外国税額控除はいつ考えるか。 目安は、取り戻せる金額が確定申告の手間に見合うかどうかです。配当が年1万円なら米国分は約1,000円。この金額のために申告書を作るかは、人によります。配当が年10万円を超えてくると、話は変わってきます。
注意点も正直に書いておきます。
- 全額が戻るとは限りません。 控除には所得に応じた上限があり、その年の日本の税額が小さいと使い切れません。
- 申告すると、他に影響が出ることがあります。 配当を申告することで合計所得が増え、社会保険料や各種判定に響く場合があります。税金だけを見て決めないほうが安全です。
- 売却益には二重課税がありません。 米国株を売った利益は日本でのみ課税されます。二重課税は配当だけの話です。
そして、いちばん大事なことを。 税率の差は年に数パーセントの話ですが、どの資産をいくら持つかの差は、その何倍も効きます。資産配分や分散を整えるほうが、税の最適化より先に効いてきます。税金は「取れるところだけ取る」くらいの距離感がちょうどよいと考えています。
まとめ(3行)
- 米国株の配当には米国10%と日本20.315%の両方がかかります。100ドルの配当なら、手取りは71.72ドルで、負担は約28.3%です。
- 外国税額控除を確定申告で申請すれば米国分の一部を取り戻せますが、上限があり全額は戻りません。
- NISAなら手取り90ドルで最も有利。ただし米国の10%は引かれ、NISAでは外国税額控除も使えません。
なお、米国株の購入方法の基本については米国株の買い方入門をご覧ください。米国株を対象としたVOO・VTI等のETFでも、配当への二重課税は同様に発生します。
情報源
- 国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」:nta.go.jp
- 財務省「日米租税条約」(配当の限度税率):mof.go.jp
- 手取り額の試算はFukuri編集部(米国10%・日本20.315%で計算)
- 金融庁「NISA制度」:fsa.go.jp
- 米国内国歳入庁(IRS):irs.gov
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。