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受注残が1年で2.4倍になった日に、株価は下がった——ロケットラボの決算で確定したことと、していないこと

2026.08.11 ・ 執筆:フクリ
受注残が1年で2.4倍になった日に、株価は下がった——ロケットラボの決算で確定したことと、していないこと

📌 本記事は公開情報(ロケットラボの2026年第2四半期決算発表、各社発表、報道)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年8月11日時点のものです。

5日前のロケットラボは「打ち上げ屋」を卒業するという記事で、「変化はもう起きた。いま問うべきは、その転換を完成させられるかだ」と書きました。

その4日後の2026年8月10日、同社の第2四半期決算が出ました。答え合わせができます。

決算に出た数字

項目2026年 第2四半期前年同期比
売上2億3,400万ドル+62%
受注残23億6,000万ドル+137%
粗利率(会計基準)36.1%
純損益(会計基準)-4,926万ドル
調整後EBITDA-883万ドル

表の「会計基準」は米国会計基準(GAAP)にもとづく数字を指します。調整後EBITDAはこれに含まれない独自の指標です。

受注残とは、契約済みでまだ売上として計上していない仕事の残高です。将来の売上の予約分にあたります。これが1年で2.4倍になりました。

なお調整後EBITDAは、営業損益に減価償却費や株式報酬などを足し戻した指標です(→EBITDAとは)。設備の重い事業で「現金を稼ぐ力」を見るために使われますが、足し戻した費用がなくなるわけではない点には注意が必要です。

内訳として発表されたもののうち、大きいのは次の3つです。

契約金額
打ち上げ契約(エレクトロン・HASTE・ニュートロン合計)4億3,700万ドル超
フラットライト衛星の製造(米宇宙軍のSB-AMTI)3億9,700万ドル
静止軌道衛星3機(2件)1億6,000万ドル超

表に出てくる名前を整理しておきます。エレクトロンは同社の主力の小型ロケットで、すでに何十回も飛んでいます。HASTEはそのエレクトロンを弾道飛行用に転用した派生型で、極超音速の実験などに使われます。フラットライトは同社が開発した平たい形の量産型衛星で、5日前の記事で扱った米宇宙軍向けの契約がこれにあたります。

2番目のフラットライト3.97億ドルが、5日前の記事で扱った契約そのものです。 打ち上げ受注は累計で90回分を超え、同社として過去最高になりました。

記録づくめなのに、株価は下げた

決算は8月10日の取引終了後に発表されました。翌11日の株価は3.1%下げました

決算までの動きのほうが、決算そのものより大きく出ています。 7月29日の58.60ドルから8月7日の82.83ドルまで、7営業日で+41.3%。この期間に何があったかというと、決算で発表された契約が、先に個別のニュースとして出ていたのです。

  • 宇宙軍のフラットライト契約(3.97億ドル)
  • ミサイル防衛向けの打ち上げ契約(2.66億ドル)
  • 日本のiQPSからの追加受注(累計18機)

受注の中身は、決算を待たずに市場へ伝わっていたことになります。 決算当日の「受注残+137%」は、その積み上げを合計した数字でした。⚠️ 株価がなぜ動いたかを会社や市場参加者が説明したわけではありません。 ここは値動きと発表の時系列から読み取ったものです。

なお、直近1年の高値143.48ドル(2026年5月25日の週の終値)からは-46.0%の水準です。受注が積み上がる一方で、株価は3か月前の半値近くにあります。

理由は次の四半期の見通しにある

では、何が新しい情報だったのか。次の四半期の見通しです。

項目2026年 第2四半期(実績)第3四半期(会社見通し)
売上2億3,400万ドル2億5,000万〜2億6,500万ドル
粗利率(会計基準)36.1%29〜31%
調整後EBITDA-883万ドル-1,700万〜-2,300万ドル

売上は増えます。それなのに粗利率は下がり、赤字は倍以上に広がる見通しです。

これは業績の悪化というより、投資の局面に入っていることを示す数字です。ニュートロンという新型ロケットの開発と製造が本格化すれば、その費用は先に出て、売上は後から来ます。

⚠️ ただし、粗利率の低下がどこまでニュートロン由来かは、会社は内訳を開示していません。 製品構成の変化(利益率の低い衛星製造の比率が上がる等)による部分もありえます。ここは推測になります。

「Q4 2026」は打ち上げの日付ではない

ここが、この決算でいちばん見落とされやすい部分です。

ニュートロンは、ロケットラボが開発中の中型の再使用ロケットです。エレクトロンより大きく、より重い衛星を運べます。同社が「打ち上げ屋」から先へ進むうえで、事実上すべての前提になっています。

決算資料のニュートロンに関する記述は、次のとおりです。

第1段タンクの生産は、2026年第4四半期にニュートロンを射点へ搬入するという目標に沿って進んでいる。

注意して読む必要があります。「2026年第4四半期に打ち上げる」とは書かれていません。「射点へ運ぶ」と書かれています。

ロケットを射点に立ててから初飛行までには、機体を組み立てた状態での燃焼試験や各種の確認作業があり、そこで日程が動くのは珍しくありません。つまり初飛行の日付は、この決算では確定していないということです。

GHOST——射場を持ち運ぶ

決算と同時に、新しい構想も発表されました。GHOSTです。

世界のどこからでも打ち上げられるようにする、持ち運べる発射設備を指します。ロケット、地上支援設備、射場の管理機能を一式にまとめ、必要な場所へ展開するという考え方です。

項目内容
最初の設置場所アラスカ州コディアックのパシフィック・スペースポート・コンプレックス内「ロケットラボ・ローンチコンプレックス4」
射点の数2つ
運用開始2027年に弾道飛行(宇宙空間まで上がって戻る飛び方)でデビュー予定

射場は本来、動かせない設備です。 用地、安全区域、追跡設備、規制の許可がひとまとまりになっているためです。それを持ち運べるようにするという発想は、打ち上げ場所そのものを商品にするということでもあります。

⚠️ 現時点では構想と最初の設置場所が発表された段階で、運用実績はありません。 2027年の弾道飛行が最初の試験になります。

そして「持ち運べる」ことと「どこでも打てる」ことは、同じではありません。 打ち上げには打ち上げ国の許可、飛行経路の下の海域や空域の安全確保、周辺国との調整が要ります。設備を運べても、許可が付いてこなければ場所は増えません。 GHOSTが本当に効くかどうかは、機材ではなくこの手続きをどれだけ速くこなせるかで決まると見ています。最初の設置場所が、すでに射場として実績のあるアラスカのコディアックである点も、その裏返しと読めます。

関連企業と日本の接点

この決算に出てくる領域と、そこで事業を行っている企業を、関わり方の近さで3段に分けます。

① 決算に固有名詞として登場する企業

企業この決算での位置
ロケットラボ(RKLB・米ナスダック)本記事の対象。日本の証券取引所には上場していません(米国市場での売買になります)
QPSホールディングス(464A・東証グロース)子会社のiQPSがエレクトロンでの打ち上げを累計18機分予約(ロケットラボ発表)。この決算の受注残に含まれる顧客側の日本企業です

② 同じ領域(宇宙インフラ)で過去に記事にした企業

企業記事
ブルーオリジン(未上場・個人は直接買えません創業以来初の外部出資
アストロスケール(186A・東証グロース)軌道上サービス
スペースX(SPCX・米ナスダック。日本の取引所には非上場)売上の12%と設備投資の86%

③ この決算では名前が出ない周辺領域

打ち上げの需要側にあたる衛星通信・地球観測の各社、射場の建設や地上設備を手がける企業などが該当します。ただし今回の決算で個社名が挙がっているわけではありません。

そして、同じ事実が向きを変えて読める点があります。 ニュートロンの初飛行が遅れることは、ロケットラボにとっては受注消化の遅れです。一方で、同社の打ち上げ能力に依存している顧客にとっては、自社の計画が相手の開発日程に左右されるという別の論点になります。同じ一つの日程が、見る位置によって意味を変えます。

フクリの見方:転換は確定した。次に株価を動かすのは受注ではない

「この会社の次の焦点は、受注残の積み上がりではなくニュートロンの初飛行に移った」という見立てです。

理由は1つです。受注残は売上ではなく、それを売上に変える速度が、いま会社の外からは見えないからです。

第3四半期の見通しがそれを示しています。売上は増えるのに、粗利率は36.1%から29〜31%へ下がり、赤字は倍以上に広がる。 受注が増えることと、利益が出ることは、いまのところ別の話になっています。そして受注残の内訳(どれだけがニュートロン頼みか)は開示されていません。

8月7日までの+41%と、決算翌日の-3.1%は、その見方と整合します。 受注の中身はニュースの段階で出そろい、決算で新しかったのは見通しの部分でした。受注の発表そのものは、もう驚きを生みにくくなっていると見ています。⚠️ 株価は他の要因(相場全体、資金調達、競合の動き)でも動くため、これが唯一の説明ではありません。

では、何を見ていればいいのか

見立てが当たっているかは、次の3つで確かめられます。どれも公表される数字なので、個人でも追えます。

見るものどこで分かるか何が言えるか
ニュートロンが射点に立つか会社の発表・打ち上げ実況「第4四半期に搬入」が守られるか。搬入が遅れれば、その後の工程も後ろへずれる可能性が高くなります(ただし会社は搬入と初飛行の間隔を示していません)
会計基準の粗利率四半期決算29〜31%から戻るなら、低下は一時的な構成の問題だったことになります
受注残と売上の比四半期決算23.6億ドル÷四半期売上で規模感がつかめます。⚠️受注残は均等に売上化されるわけではないので、単純な消化期間ではありません。それでもこの比が伸び続けるなら、受注の増加に消化が追いついていない目安にはなります

逆に、ニュートロンが予定どおり飛んで粗利率が戻れば、この見立ては外れます。

この見立てが外れる条件

まとめ(3行)

決算は「何が確定して、何がまだなのか」を分けて読むと、数字の意味が変わります。いっしょに見ていきましょう。

情報源・参考

  • ロケットラボ「Rocket Lab Announces Second Quarter 2026 Financial Results」(2026年8月10日。売上2億3,400万ドル・受注残23億6,000万ドル・粗利率36.1%・純損失4,926万ドル・調整後EBITDA-883万ドル、第3四半期見通し、フラットライト3億9,700万ドル、GHOST、ニュートロンの「第4四半期に射点へ搬入する目標」):investors.rocketlabcorp.com
  • Payload「Rocket Lab Unveils GHOST On A Record Quarter」(2026年8月11日):payloadspace.com
  • ロケットラボ「iQPSとの3機の追加打ち上げ契約で累計18機」(2026年8月2日):stocktitan.net
  • iQPS「米国Rocket Lab社とさらに小型SAR衛星3機分の打上げ契約を締結」(2026年7月30日):i-qps.net
  • QPSホールディングス(464A・東証グロース。2025年12月1日に株式移転で持株会社化):qpshd.com
  • 株価は日次終値(2026年7月23日〜8月11日)をFukuriが集計。1年高値143.48ドルは同期間外の実績値。
免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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