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鉱山を確保しても、動かす技術が中国製だったら——見落とされている第3の変数

2026.08.10 ・ 執筆:フクリ
鉱山を確保しても、動かす技術が中国製だったら——見落とされている第3の変数

📌 本記事は公開情報(ChinaTalk掲載の寄稿、各社発表、報道)にもとづく情報提供・解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。数値は特記なき限り2026年8月10日時点のものです。

レアアース(希土類)をめぐる話は、たいてい「どこで採れるか」と「誰が精錬するか」の2点で語られます。Fukuriでも以前の記事でその枠組みを使いました。

2026年7月30日、米中テック政策のメディア「ChinaTalk」に、その枠組みごと疑う寄稿が載りました。書いたのはストックホルムを拠点にする北極研究所の研究員、ニマ・コラミ氏です。

コラミ氏の主張はこうです。西側の鉱物戦略には、一貫して抜け落ちている第3の変数がある。

米国とEUは、すでに動いている

中国は世界のレアアース精錬の大半を握っています。 寄稿は推定91パーセントという数字を使っています。

ただし⚠️ この91パーセントは最新値ではありません。 IEA(国際エネルギー機関)の推計では、2023年に90パーセント超だったシェアは2025年に85パーセントまで下がり、2035年には70パーセントまで下がる見通しです。米国とマレーシアで精錬能力が増えたためです。つまり精錬という争点では、西側の巻き返しが数字に出はじめています。 この点は、あとで効いてきます。

それでも中国は、この立場を交渉材料として使う姿勢を繰り返し示してきました。

これに対し、米国は数十年ぶりと言われる強い対応を取っています。

施策内容
大統領令14241重要鉱物の国内生産を後押しする大統領令
One Big Beautiful Bill Act関連する予算・税制を含む法案
Pax Silica半導体・重要鉱物をめぐる枠組み
二国間協定オーストラリア・日本・コンゴ民主共和国・サウジアラビアなどと締結

EUも「重要原材料法(Critical Raw Materials Act)」と「RESourceEU」で並行して動いています。

コラミ氏は、これらの協定そのものを批判しているわけではありません。 問題は、そこに何が入っていないかだと述べます。

見落とされている第3の変数

西側の鉱物戦略は、2つの変数を軸に組み立てられています。

そして寄稿の結論は、こう突きつけます。

もしこの支配が放置されれば、米国とその同盟国は友好国の鉱床へのアクセス確保に成功しながら、その鉱山が動くために中国の操業技術に依存している——という状態に陥りうる。

鉱山を手に入れても、動かす仕組みが相手のものなら意味がない、という指摘です。

中国が鉱山に入れているもの

では、具体的に何が起きているのか。寄稿が挙げるのは、単なる機械の自動化ではなく、一式まるごとの導入です。

要素中身
自律運搬運転手なしで動的に経路を判断するダンプの車両群
産業用AI地質分析・車両配車・予知保全・斜面の安定監視を同時に管理
センサー網環境データをリアルタイムで取得
エッジ処理広域の通信が落ちても現場だけで動き続ける
衛星測位GPSが届かない遠隔地・地下での位置決め

実装されている具体名も出てきます。

  • 通信:Huaweiの5G-Advancedが、約200kmに及ぶ鉱山内の経路で20ミリ秒未満の遅延を実現
  • AI盤古大模型(Pangu)5.5——7,180億パラメータの産業用AIモデルで、30を超える産業・500以上の場面に展開済み。車両群の協調や地質分析を担う
  • 測位:中国独自の衛星測位システム北斗(BeiDou)

車両群は中国華能集団が共同開発しています。 中国が自国の産業に自国製AIを一式で入れていく動き自体は、中国のAI戦略の記事で扱った流れの延長線上にあります。

ここで効いてくるのが「一式」であることです。 通信もAIも測位も同じ供給元でそろえると、内モンゴルの鉱山で動いた仕組みが、そのままアフリカや中央アジアの鉱山にも移植されうる。寄稿はこの点を、影響力が広がる経路として指摘しています。

西側にも実装は始まっている

ただし、西側が何もしていないわけではありません。 寄稿自身が、実際に動いている現場を挙げています。そしてここに日本企業が出てきます。

場所何が動いているか
スウェーデン・キルナ(LKAB)Konsuln試験鉱山でSustainable Underground Mining(LKAB・ABB・Epiroc・Combitech・Volvo)。持続可能で無人・脱炭素の地下採掘の国際標準を狙う
同・キルナLKABがSandvikのAutoMineを電動ローダー群に展開中
スウェーデン・アイティック(Boliden)コマツのFrontRunner自律運搬システムが商用規模で稼働欧州で初、かつ北極圏の環境では初の導入
フィンランド・ピュハサルミ地下の5Gテストネットワーク

コラミ氏は、これらの取り組みを「問題の大きさに対して資金が足りず、EUレベルで連携が弱く、ワシントンの戦略論議ではほぼ見えていない」と評価しています。

そしてもう1つ、重要な指摘があります。操業データが個社のサイロに閉じているという問題です。

オーストラリアの自律ダンプ群、スウェーデンのキルナ試験鉱山、その他同盟国での導入から生まれる運用データは、個々の企業が所有する閉じた領域に置かれている

中国側が一式で標準を作りにいっているのに対し、西側はばらばらのまま——というのが寄稿の見立てです。

日本は「資源のない国」なのか

日本は米国との重要鉱物の二国間協定の当事国として、この寄稿に名前が出てきます。資源を持たない側として。

しかし同時に、寄稿が挙げる数少ない西側の実装例の1つが、日本企業のものです。 コマツのFrontRunnerが、スウェーデンのアイティック鉱山で欧州初・北極圏初の商用稼働をしています。

寄稿に出てくる顔ぶれです。

区分内容
寄稿に名前が出る日本企業コマツ(FrontRunner自律運搬システム。Boliden社アイティック鉱山で稼働)
同じ領域の非日本企業Sandvik・Epiroc・ABB・Volvo(いずれもスウェーデン系)、中国側はHuawei・中国華能集団
議論に登場するが上場企業でない主体LKAB(スウェーデン国有)、各国政府の枠組み

「資源がないから不利」という前提は、この角度からは必ずしも成り立ちません。 鉱床を持たなくても、鉱山を動かす技術を持つ国という立ち位置がありうるからです。

ただし過度な期待も禁物です。寄稿が指摘するとおり、西側の取り組みは資金も連携も足りていないとされます。技術があることと、それが標準になることは別の話です。

なお、AIが物理世界の機械を動かすという流れ全体についてはフィジカルAIの記事で、AI向け計算資源の奪い合いについては本日の別記事で扱っています。

フクリの見方:争点は「資源」から「鉱山のOS」へ移りつつある

レアアースをめぐる投資テーマは、これまで「どこに埋まっているか」と「誰が精錬するか」で語られてきました。次の争点は「鉱山を動かす技術の標準を誰が握るか」に移りつつあると考えています。

根拠は3つです。

⚠️ ただし、これは「中国が勝つ」という話ではありません。 寄稿の主眼は西側の戦略に穴があるという警告であって、勝敗の予測ではありません。この記事も同じ立場です。

この見立てが外れる条件

まとめ(3行)

「資源がない」という前提は、見る角度を変えると違って見えることがあります。いっしょに確かめていきましょう。

情報源・参考

  • IEA「Global Critical Minerals Outlook 2026」(中国のレアアース精錬シェアが2025年に85パーセント、2035年に70パーセントへ低下する見通し):iea.org
  • ChinaTalk「China’s Other Minerals Monopoly」(2026年7月30日・Nima Khorrami氏〔北極研究所〕による寄稿。レアアース精錬91%、第3の変数、Pangu 5.5、キルナとアイティックの実装例、操業データのサイロ化):chinatalk.media
  • Komatsu「Komatsu Europe announces sale of FrontRunner Autonomous Haulage System to Boliden」(アイティック鉱山への導入):komatsu.eu
  • Komatsu「世界初、超大型自律ダンプ1,000台の稼働開始」(2026年4月22日):komatsu.jp
  • LKAB「Sustainable Underground Mining(SUM)」(キルナのKonsuln試験鉱山・国際標準を目指す取り組み)……上記ChinaTalk寄稿内のリンクより
  • 米国大統領令14241、One Big Beautiful Bill Act、Pax Silica、および豪州・日本・コンゴ民主共和国・サウジアラビアとの二国間協定……いずれも上記ChinaTalk寄稿が挙げた施策。個々の条文・発表は原文まで確認できていません(寄稿の記述としてお読みください)
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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の投資勧誘や投資助言を行うものではありません。投資にともなう最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。記載内容の正確性には努めていますが、その完全性・将来の結果を保証するものではありません。

フクリ
フクリ Fukuri編集部のナビゲーターです。海外の投資・経済ニュースを、一次情報にあたって日本の読者向けにまとめています。記事の企画・編集・公開の責任は、運営責任者が負っています。
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